2014年山陰中央新報社地域開発賞 表彰式

長年の社会貢献たたえる 受賞者6人決意新た  (2014/10/23)

山陰中央新報社の森脇徹男社長から表彰状を受け取る松井小夜子さん(左)=松江市千鳥町、ホテル白鳥

 各分野で地域社会に貢献した人々をたたえる2014年山陰中央新報社地域開発賞の表彰式が22日、松江市千鳥町のホテル白鳥であり、5賞6部門の受賞者6人が長年の取り組みを振り返りながら、地域への決意を新たにした。

 受賞者は作野茂さん(86)=スポーツ賞、松江市東本町2丁目▽池橋達雄さん(83)=文化賞、出雲市斐川町荘原▽松井小夜子さん(72)=教育賞、松江市比津が丘1丁目▽古藤定治さん(65)=産業賞1部農林水産、松江市上東川津町▽藤原善夫さん(80)=同2部商工、松江市横浜町▽村松憲さん(67)=社会賞、雲南市木次町里方。

 表彰式では山陰中央新報社の山根常正会長が「長年にわたり一筋に打ち込んできた功績に心より敬意を表します」と受賞者をたたえ、森脇徹男社長が表彰状などを贈った。

 祝賀会では受賞者があいさつ。島根県弓道の発展に功績のあった作野さんは「今後も一層気を引き締めて指導に努める」と語った。郷土史家として多くの学校史や町史の編集に携わった池橋さんは「ともに編集にかかわった人々や支えてくれた妻のおかげ」と謝意を示した。

 百人一首の普及と読み手の育成に力を注ぐ松井さんは「(百人一首には)日本語の美しさ、日本人の心が込められている」と説き、県産木材利用促進に貢献した古藤さんは「県産木材を守り地域活性化に努めるのが使命」と述べた。

 橋梁(きょうりょう)メーカー経営の傍ら、業界のかじ取り役も担う藤原さんは「ものづくりを支えるのは技術」と、次代の人材育成に意欲を示し、養護施設や被災地へショートケーキを贈る活動を続ける村松さんは「訪問先で喜んでもらえるのが何よりうれしい」と話した。

2014年山陰中央新報社地域開発賞 受賞者の横顔

 山陰中央新報社が、島根県内の各分野で地域社会の発展に貢献している人を表彰する「2014年山陰中央新報社地域開発賞」の表彰式が22日、松江市千鳥町のホテル白鳥で開かれた。表彰に合わせ、スポーツ賞、文化賞、教育賞、産業賞(第1部門、第2部門)、社会賞を受賞する6人の功績と横顔を紹介する。

第59回スポーツ賞

美しい射形で的を狙う作野茂さん=松江市学園1丁目、島根県立武道館弓道場

島根県弓道連盟名誉会長
  作野 茂さん(86)

     =松江市東本町2丁目=

「正射必中」貫き半世紀

 半世紀以上弓道に打ち込み、競技者、指導者として島根県弓道の発展に尽力する。県内でただ1人の教士8段の保有者で、理想としている「正射必中」の射を追い求め、弓を引く。

 弓道と出合ったのは36歳のころ。警察に勤める傍ら、知人の薦めで松江市内の道場に通い始め、奥深い魅力に夢中になり松江弓道会に入会した。

 「仕事後は毎日のように道場で弓を引いた。他の入門生からも良い刺激をもらった」と振り返る。

 射の技能と、美しさを競う審査を積極的に受け、50歳のとき、「錬士」を取得。錬士になって初めて出場できる全日本弓道選手権大会が新たな目標となった。

 同大会の予選を勝ち抜き、1979年から96年までの間に、島根県代表として8回出場。惜しくも上位進出は果たせなかったが、弓道教本の教えにのっとった丁寧な射形から「島根に作野あり」とうたわれ、全国に存在感を示した。

 競技者として活躍する一方で、77年の青森国体と85年の鳥取国体では成年男子弓道の監督を務め、翌86年には島根県弓道連盟(県弓連)の副会長兼事務局長に就任した。

 任期12年の間、国体ブロック大会や中国地域弓道選手権大会などの運営に携わり、95年のねんりんピックの弓道交流大会では競技運営の事務責任者として重責を果たした。

 98年に県弓連の会長に就任。2009年に退任するまでの間、「島根の弓道を強くする」と県内の高校、大学など約20校を訪れて指導し、技術向上と競技の普及に貢献した。

 数多くの功績を認められ、県弓連の推薦で10年には、県内唯一の教士8段を取得した。

 指導の際は「何よりも基本を大切に。的中だけでなく、射に美しさを」と強く訴え、基本に忠実な「正射必中」の考えを貫いてきた。「今でも目標は正射を極めること」と話す。

 「趣味で始めた弓道が、いつの間にか生活の一つになった。弓道を続けることは生きること」。確固とした決意を抱き、「射即人生」の日々を過ごす。

第53回文化賞

編集に携わった調査報告書に目を通す池橋達雄さん=出雲市斐川町荘原の自宅

出雲市文化財保護審議会委員
  池橋 達雄さん(83)

     =出雲市斐川町荘原=

真実求め研さん重ねる

 郷土史家として地元の歴史研究や学校史、町史などの編集に長年携わり、地元の人々が生まれ育った場所への誇りや愛着を再認識させる機会をつくってきた。

 「教員時代の同僚や地域の人々とのチームワークで取り組んだ事柄が評価されて、大変うれしい」と、多くの人と一緒に歩んだ道のりをしみじみと振り返る。

 旧大社中学校の生徒だった14歳のときに終戦を迎え、それまで教えられてきた日本の歴史が本当に正しいものだったのかと疑問に思ったことが、史学に興味を持つきっかけとなった。

 島根大を卒業後、島根県立高校の教員として勤務する傍ら、学校史のまとめに尽力した。1972年から当時勤務していた松江北高校の「百年史」の編さんに取り組んだ。

 授業の合間や休日を使っての作業では、資料を集めるために東京の国会図書館などへ出張することもあったという。約5年を掛け、1700ページを超える労作が完成した。この後に「出雲高等学校史」や「湖陵町誌」の編集も手掛けた。

 「忍耐力を要したが、真実を積み重ね後世の人が読んでもおかしくないものを作りたかった」。史実に向き合う姿勢は変わらない。

 机上の研究だけでなく、実地調査にも定評がある。退職後の93年には、文化庁と島根県教委が合同で、江戸時代の幹線道路である山陰道などを調査する「歴史の道」調査委員に就任。各地の担当者らとともに、5年をかけて当時の県内59町村を駆け回り、往時の交通網を調べた。

 山陰から広島に通じる神事尾道街道や浜田広島街道、銀や銅を運んだ銀山街道など旧道沿いには多くの文化遺産が残されており、そこで暮らした人々の暮らしぶりを物語る新たな発見がある度に心を躍らせた。

 98年から2002年まで島根史学会の会長を務め、県内の歴史の研究振興に尽力。現在は出雲市の文化財保護審議会委員を務め、県内各地で講演活動などを行っている。「出雲国風土記の官道に関心を持っている。まだまだ調べたいことはたくさんある」。飽くなき探求心はやむことがない。

第48回教育賞

一定のリズムを保ちながら、大きな声で和歌を読み上げる松井小夜子さん=松江市比津町、法吉公民館

島根県かるた協会副会長
  松井小夜子さん(72)

     =松江市比津が丘1丁目=

日本語の美声に込める

 松江市内の公民館や高校を中心に百人一首の普及と、読み手の育成に力を注ぐ。全国高校総合文化祭では、小倉百人一首かるたの読み手コンクールの部で、1997年から2014年までの間に計9人を最優秀賞、優秀賞に導いた。

 百人一首に最初に接したのは37年前。長男が小学校から持ち帰った学校通信に和歌が載っていたのを見て興味がわき、松江市の川津公民館のかるた教室に取り手として参加した。

 転居先の同市比津が丘で、百人一首が好きだった当時の法吉公民館長に「ぜひ子どもに教えて」と依頼され、読み手を務めることになった。

 県外の指導者に自分の読んでいる声を録音したカセットテープを送るなどして上達。毎日手に取っては読み続けた札は、角と横の中心部分がすり切れた。

 指導者に「教えていい」と言われ、97年に益田市であった全国かるた大会で「読んでみたい」と言った益田高校の男子生徒を教えた。益田市から自宅に送られたカセットテープを聞いては電話で注意点を伝えるのを繰り返し、生徒は同年、全国高校総合文化祭で見事、最優秀賞に導いた。

 現在は、松江北高で週2回、外部講師として通い、読み手を育てている。昔から指導方法は変わらない。上の句は4秒、下の句の最後の余韻は3秒など、一定のリズムを保つのがルール。ストップウオッチを片手に誤差は0・1秒以内に収めるように言い聞かせる。生徒が読み手の大会に出るときは、全国どこでも聞きに駆け付ける。

 法吉公民館では週1回、百人一首教室を開き、札を取る楽しさを広めている。知人を通じてロシアのウラジオストクや、アメリカのサンフランシスコを訪ね、大学生や子どもに百人一首を紹介したこともある。

 大会で読み手を務めるときは、はかま姿で背筋を伸ばす。足を肩幅に開いて踏ん張り、右手で札の束から1枚めくっては目の上に上げ、大きな声で和歌を響かせる。「長い間受け継がれてきた日本語の美しさを感じてほしい」。読み上げる声に思いを込める。

第48回産業賞 第1部門(農林水産)

木造住宅の魅力を語る古藤定治さん=松江市春日町、木のふれあい遊館

島根県住まいづくり協会会長
  古藤 定治さん(65)

     =松江市上東川津町=

「生」の木材住まい提供

 2013年5月まで約14年間、木造住宅の建築を手掛ける藤栄工業(松江市北田町)の社長を務める一方で、島根県住まいづくり協会会長などを務め、住宅業界の発展と県産木材の利用促進に尽力してきた。

 「森が荒れ、どうにもならんようになる」-。02年6月、松江市内で地元の工務店や製材会社の代表らと集まり、島根大の研究者や県職員から県内の林業の厳しい現状、見通しを聞き、危機感を抱いたという。

 このため、03年12月に関係者と協同組合「環境にやさしい家づくりの会」を設立。代表理事に就き、県産木材の普及に向けて考案したのが、松江市春日町に建設した住宅展示場「木のふれあい遊館」だった。

 床や壁、天井にスギやマツ、ヒノキなどをふんだんに使用し、木に直接触れ、香りを体感できる同館には多くの県民が訪れ、好評。「見て、体験してこそ、購買意欲がわく」との信念に基づいた。

 思いは、09年10月に就いた県住まいづくり協会会長時代の事業にも通じる。住宅祭推進部会を設置し、県東部に比べて業者数が少ない県西部でも積極的に開催を働き掛けるなど、県民が「生」の住宅に接する機会の提供を心掛けた。

 12年度の県内の新設住宅着工件数のうち、木造の率は83・1%。全国平均の55・2%を大きく上回る。「人に優しく、毎日が森林浴」と語る木造住宅の魅力が浸透している証しだ。

 ただ、人口減に伴って今後、住宅需要の落ち込みが予想される。安価な輸入材との競争に加え、住宅のリフォームなど、時代のニーズに合った取り組みが不可欠となる。

 さらに、木造住宅産業は製材業や瓦メーカー、工務店など裾野が広い分、地域経済の活性化を左右するとの自負もあるだけに、「お客さまに喜ばれる県産木材の住宅を建てていかないといけない」と説く。

 藤栄工業の社長を退き、別会社で営業に当たる今も「常に正直」のモットーを貫く。「住宅業界で培った経験を生かし、『人の幸せづくり』ができる仕事を続けたい」。思いは熱い。

第48回産業賞 第2部門(商工)

工場内で社員と打ち合わせする藤原善夫さん=松江市富士見町、藤原鐵工所

松江商工会議所常議員
  藤原 善夫さん(80)

     =松江市横浜町=

島根のものづくり尽力

 工場内にずらりと並ぶ、高速道路や歩道橋に使われる鋼橋などの鋼構造物の数々。島根県内唯一の橋梁(きょうりょう)メーカー、藤原鐵工所(松江市富士見町)の社長として、「安心安全な社会の実現」に貢献してきた。

 外資系商社の勤務を経て、1961年に家業に就いたが、面白さは鋳物の溶解や溶接を手伝った中学時代から感じていた。手のあちこちにやけどしながら、気温や湿度といった気象条件を踏まえ、鉄と鉄をつなぐ楽しさを覚えた。

 その後、船舶エンジンの部品などの鋳物製造から、橋梁や水門、クレーンなどの製造へとかじを切り、事業規模を拡大。優れた技術力に裏付けられた品質の高さは、松江市内の歩道橋の大半が同社製であることが物語る。

 培った信頼と温和な人柄から、86年に就いた日本溶接協会県支部長を皮切りに、松江商工会議所工業部会長、県産業教育振興会長、県鐵工会理事長、県中小企業団体中央会長など、これまでに多くの団体のトップを任せられてきた。

 いずれも「島根のものづくりを下支えできれば」と快諾し、93年に開館した県立産業交流会館(松江市学園南1丁目)の建設促進や、2005年にスタートした「中海圏域産業技術展」の開催などに力を尽くした。

 県が10年に松江市矢田町に整備した「島根ものづくり技術支援センター」も、熱心な要望活動が結実した一つ。個社では難しい高額な加工機などが導入され、県内企業の技術力向上につながった。

 会長を務める県溶接協会の設立50周年にあたっては、記念式典の開催を見送り、費用を溶接機の購入費に充当。卒業生が地元企業に勤め、溶接の全国大会で活躍するよう期待を込めて、県内の工業系7校に計21台を贈った。

 傘寿を迎えてなお、地域産業の振興にかける情熱は変わらない。鋳物の生産量が全国4位を誇るなど、国内有数と位置付ける島根のものづくり産業の発展に向け、「次代を担う人材の育成に、引き続き心血を注ぐ」と言葉に力を込める。

第48回社会賞

空き缶積み上げ大会に使う空き缶を洗いながら「体が元気な限り続けたい」と話す村松憲さん=雲南市木次町里方の自宅

地域安全推進員
  村松 憲さん(67)

     =雲南市木次町里方=

被災経験恩返しで貢献

 自宅で飲食店を営む傍ら、1977年から毎年12月、サンタクロースに扮(ふん)して自家用車で島根県内外の幼稚園や保育所、養護施設、被災地を訪れ、子どもやお年寄りたちにショートケーキを贈っている。99年からは雲南署の地域安全推進員として青少年の健全育成に取り組む。美化の啓発を兼ねた空き缶積み上げ大会も毎年開き、安全で住みよい地域づくりに貢献している。

 プレゼントのケーキは、積み立てた自分の小遣いで購入。総数は昨年までの36年間で7万個を超す。

 動機は、高校時代に被災した64年7月の山陰北陸豪雨。旧加茂町(現・雲南市加茂町)の自宅が土砂崩れに遭い、避難所や6畳一間の仮設住宅で生活した。この時の救援物資や義援金が支えになったといい「ケーキのプレゼントは自分の被災経験の恩返し」と語る。

 当初は自宅近くの保育所や幼稚園に贈っていたが、活動範囲を広げ、神戸市や宮城県東松島市、福島県会津若松市など県外の被災地も訪問。昨年は台風で被害を受けた伊豆大島にも足を運んだ。今年は広島市安佐南区、安佐北区に出掛ける予定という。

 空き缶積み上げ大会は、3、4人編成のチームが350ミリリットル缶240本と500ミリリットル缶120本を使い、直径80センチの円の上に10分間でどれだけ高く積めるかを競うゲーム。大会創設のきっかけは、99年当時多かった空き缶のポイ捨てだった。「美観だけでなく、空き缶一個一個に目を向け、環境保護の大切さを知ってもらおう」と考え、空き缶の数や円の直径を研究し、ルールを考案した。

 脚立に乗っても手で積めない高所は、火挟みで積む。「使う機会が少なくなった道具の使い方の勉強になると思った」と説明する。

 体力に関係なく、誰もが参加できるゲーム性が評価され、2011年から笹川スポーツ財団が開催する「チャレンジデー」の種目にもなっている。

 健康維持のため、日々、ランニングとウオーキングを欠かさない。「体が元気な限り社会貢献活動を続けたい」と話す。

2014年山陰中央新報社地域開発賞 選考委員(順不同、敬称略)

[スポーツ賞]
島根大学名誉教授 久保田康毅
島根県教育庁保健体育課長 堀江 隆典
島根県体育協会専務理事 下岡 博司
島根県スポーツ推進委員協議会会長      藤村 一男
島根県高校体育連盟会長 片寄  進
島根県中学校体育連盟会長 野津 一雄
[文 化 賞]
島根大学法文学部長 吹野  卓
島根県教育委員会教育長 藤原 孝行
島根県市町村教育長会会長 清水 伸夫
島根県環境生活部長 鴨木  朗
NHK松江放送局長 国友 充範
山陰中央テレビジョン放送社長 有澤  寛
[教 育 賞]
島根大学教育学部長 小川  巌
島根県教育委員会教育長 藤原 孝行
島根県市町村教育長会会長 清水 伸夫
島根県高校PTA連合会会長 幸増浩一郎
島根県PTA連合会会長 津森 良治
島根県高校文化連盟会長 舟木  健
[産 業 賞]
島根大学生物資源科学部長 荒瀬  榮
島根県農林水産部長 石黒 裕規
島根県商工労働部長 中村 光男
島根県商工会議所連合会会頭 古瀬  誠
島根県商工会連合会会長 石飛 善和
島根県農業協同組合中央会会長 萬代 宣雄
漁業協同組合JFしまね会長 岸   宏
[社 会 賞]
島根大学名誉教授 猪野 郁子
島根県教育委員会教育長 藤原 孝行
島根県環境生活部長 鴨木  朗
島根県健康福祉部長 原  仁史
島根県警察本部長 福田 正信
島根県社会福祉協議会会長 江口 博晴
島根県連合婦人会会長 小林 洋子