2017年山陰中央新報社地域開発賞 表彰式

地域貢献6人たたえる  (2017/10/28)

松尾倫男社長(右)から表彰状を受け取る渡部紀美さん=松江市千鳥町、ホテル一畑(日高敏彦撮影)

  島根県内の各分野で長年にわたり、地域社会のために尽力、貢献している人を顕彰する「山陰中央新報社地域開発賞」の表彰式が27日、松江市内であり、5賞6部門の受賞者6人がこれまでの活動を振り返り、決意を新たにした。

 受賞者は、渡部紀美さん(79)=スポーツ賞、松江市西生馬町=、室﨑淳子さん(84)=文化賞、隠岐の島町港町=、和上豊子さん(75)=教育賞、大田市仁摩町=、浦田昭一さん(87)=産業賞第1部門・農林水産、浜田市朝日町=、松本年正さん(69)=同第2部門・商工、出雲市地合町=、杉本悦子さん(79)=社会賞、川本町川本。

 表彰式で山陰中央新報社の松尾倫男社長は「国が掲げる『地方創生』の言葉に先んじてふるさと振興に取り組んでこられた。今後もさらに尽力してほしい」と活動をたたえた。

 続く祝賀会で、スキーをはじめスポーツ振興に努めた渡部さんは「仲間と共にスポーツを続け、魅力を伝えたい」と強調。石見銀山遺跡で観光ガイド養成などを手掛けた和上さんは「さらなる魅力発信に向け、みんなで頑張りたい」と決意表明した。

 いち早く機械の導入を進めて、循環型林業の礎を築いた浦田さんは「多くの皆さんの協力と支えがあっての受賞だ」と謝辞を述べ、県内杜氏(とうじ)のリーダーとして島根の地酒のブランド化に尽くした松本さんは「今後も島根の酒造界に貢献したい」と語った。

 食生活改善や郷土食の継承に取り組んだ杉本さんは、活動で繰り返し伝えた「食への感謝」の気持ちをあらためて強調。隠岐民踊と日本舞踊の継承普及に励む室﨑さんは、隠岐しげさ節に合わせて小皿を打ち鳴らす踊りを披露し「生涯現役で頑張ります」と会場を盛り上げた。

2017年山陰中央新報社地域開発賞 受賞者の横顔

 山陰中央新報社が、島根県内の各分野で、地域社会の発展に貢献している人を表彰する「2017年山陰中央新報社地域開発賞」の表彰式が27日、松江市千鳥町のホテル一畑である。表彰に合わせて▽スポーツ▽文化▽教育▽産業(第1部門・農林水産、第2部門・商工)▽社会-の各賞を受賞する6人の功績と横顔を紹介する。

第62回スポーツ賞

県のスキー振興に情熱を注いだ半世紀近くの歩みを振り返る渡部紀美さん=松江市殿町

島根県スキー連盟会長
  渡部 紀美さん(79)

     =松江市西生馬町=

先頭に立ち育成や普及

 1970年の全日本スキー連盟準指導員の資格取得から47年。後進育成や競技普及など先頭に立って島根県内のスキー振興に当たってきた。よわい80を前にしてなお「スキーに、雪に、多くの人に親しんでほしい」と願い、指導者としてゲレンデに立つ。

 雲南市大東町生まれ。スキーは子どものころから冬の楽しみだった。関わりが本格的になったのは高校卒業後、県庁に入ってから。同僚に誘われ、よく隣県の大山まで出掛けた。夜行列車で東北まで足を延ばしたこともあった。

 同僚と入ったスキー同好会「松江スベロー会」で事務局長となり、準指導員となったのは32歳の時。持ち前のユーモアを交え、後輩たちにスキーの技術とともに楽しさを伝えた。79年からは県連盟でも事務局長を務め、組織強化に尽力。同僚を巻き込み、競技部、教育部の新設、ジュニア指導部の拡充などで、現在の基盤を築いた。

 82年の島根国体「くにびき国体」を機に、家族連れで雪に親しんでもらおうと始めた「歩くスキーフェスティバル」はこの冬で36回目。子どもたちの励みとなるよう全国に先駆けて全日本連盟の「ジュニア等級別テスト」も取り入れた。

 また、地元スキー場の盛り上がりが不可欠と、県境をまたいで大山で開かれることが多かった競技会や指導者講習会は宿泊受け入れなどの課題を乗り越え、県内でも開催。小中学生を対象としたジュニアスキー教室は県内2会場で定着した。「諦めずに皆に協力してもらった」と感謝の気持ちがあふれる。

 スキーの魅力は「スリルとサスペンス」と語る。雪上で「怖い怖い」と思っていても、風を切り滑りきった時の満足感。より多くの人にその喜びを味わってもらいたいという一念で取り組みを続けてきた。

 県連盟では副会長などを経て、2007年から会長。ゴルフの県協会事務局長としても手腕を発揮しながら、冬場はゲレンデに立つ。「スキーを通じて厳しい山陰の冬を楽しく。力の続く限り盛り上げたい」。思いは熱くたぎる。

第56回文化賞

自宅で舞踊の稽古をする室﨑淳子さん=島根県隠岐の島町港町

隠岐民踊・日本舞踊伝承者
  室﨑 淳子さん(84)

     =隠岐の島町港町=

舞、ふるさと、人を愛す

 日本舞踊・若柳流の師範、若柳吉世元として地域で邦舞愛好者を育て、隠岐人として隠岐を代表する民謡「隠岐しげさ節」などに合わせた踊り「隠岐民踊」の伝承普及にも長年取り組んできた。「舞を愛し、ふるさと隠岐を愛し、人を愛して一生懸命、ふれあいの輪(和)を広げてきた」と実感を込めて語る。

 1933年に島根県隠岐の島町で生まれ、3歳から日舞を学んだ。「本格的に学び、極めたい」との一心で48年、京都家元・若柳吉世師の内弟子として「厳しい修業の道」に入門した。「3年間は師匠の身の回りの世話などが中心で、4年目からようやく踊りが中心になった。舞は手取り足取りではなく、見て覚えた」と修業時代を振り返る。

 独り立ちし、52年に京都市、54年に大阪市に稽古場を開設した。

 67年に帰郷後は普及のため、島内各地に出向いて婦人らに手ほどきする一方、小さな子どもも積極的に受け入れてきた。50年間で2歳から80歳代まで数えきれないほど多くの人が舞を習い、「親子3代にわたる家族もいる」ほど。舞を通して行儀や作法、人格形成など子育てを支えている。

 日舞師範として愛好者を育成し、地元神社の祭礼では巫女(みこ)舞も指導するなど伝統行事の継承に貢献する。一方、全国の民踊指導者が集まる講習会に講師として出向くなど、隠岐民踊の普及に情熱を注いできた。

 特に力を入れたのが、隠岐の島町で5月にある島開きイベントで「隠岐しげさ節」に合わせて島内外の人が皿踊りなどを繰り広げる「しげさ踊りパレード」の振り付け。イベントの創生期に同じ日本舞踊の藤間流関係者らと共に「誰でも踊れ、簡単に前に進めるように」と原形をアレンジした。

 帰郷して半世紀、日本舞踊、隠岐民踊を通して島内外の絆づくりに取り組んできた。「この道一筋に歩んできた。根をつくってくれた母親ら多くの人の支えがあって今日がある。伝統を大切に、新しいものにも挑戦し、和やかで笑顔あふれる島づくりに貢献できたら」と願う。

第51回教育賞

石見銀山遺跡の歴史や魅力を解説する和上豊子さん=大田市大森町

元石見銀山ガイドの会会長
  和上 豊子さん(75)

     =大田市仁摩町=

海外にも渡り知識蓄積

 世界遺産・石見銀山遺跡(大田市)を訪れた人たちに遺跡の歴史や価値、魅力を伝える「石見銀山ガイドの会」の活動に情熱を注ぐ。会のメンバーのためのマニュアルを自ら作成し、改訂するなど、遺跡の「案内人」となるガイドの力量アップにも努める。

 島根県津和野町出身。島根大教育学部卒業後、小中学校の教員となった。石見銀山は遠足や校外学習、さらには休日にも何度となく訪れた地。「日本はもとより、世界に影響を与えた奥深さが魅力」と説く。

 2000年、石見銀山ガイドの会の発足と同時に、現職の大田市立久屋小学校校長として入会した。ガイド講座で遺跡の全体像を学んだ後、学校退職後の02年から現場に出た。

 心を砕くのは、遺跡の価値や魅力を「教える」のではなく「気付かせる」こと。巨大なモニュメントなどはなく、ともすれば「分かりにくい」とされる石見銀山。何げない坑道にも壮大な歴史が秘められていることを具体的に、想像を巡らして眺めてもらえるよう、「目に見えない物にも思いをはせて」解説する。

 03年には、自ら「ガイドマニュアル」を作成した。第3版まで改訂し、内容を充実させるとともに、測定器で実測した史跡間の距離も明記。「明るく笑顔で」「ふれあい、もてなしの心を大切に」など10カ条の心得も記す。

 07年には自費でニュージーランドに渡り、国連教育科学文化機関(ユネスコ)世界遺産委員会で、石見銀山の世界遺産登録が決定する瞬間を見届けた。この他にも、銀貿易にゆかりの深いポルトガル、スペインなどを相次いで来訪。「世界史における石見銀山の位置付けも十分知っておく必要がある」と言い切る。

 08年からの4年間はガイドの会会長も務めた。意識したのは、銀山の産出銀を瀬戸内海側に運んだ「石見銀山街道」を介した、広島県内を含む他自治体の団体・ガイドとの交流だ。「街道が残る石見銀山ゆかりの地の人々と連携し、遺跡の歴史を広く、次世代へと語り継ぎたい」と決意を新たにしている。

第51回産業賞 第1部門(農林水産)

現在も毎日出勤して陣頭指揮を執る浦田昭一さん=浜田市黒川町、浦田木材村

元島根県木材協会浜田支部長
  浦田 昭一さん(87)

     =浜田市朝日町=

「安全」に一貫して注力

 昭和から平成期にかけて約20年間にわたって、島根県木材協会浜田支部長など業界団体の要職を務めた。

 一貫して注力した3本柱は「増産」「安全」「健康管理」。特に、パトロールで事業所や現場に出向き、労災事故防止の指導を繰り返した。1961年の創業以来、一度も死亡労災事故が発生していない自社で養った安全意識は、県内の林業界全体に波及していった。危険を伴う仕事という林業・製材業のイメージを払拭(ふっしょく)し、後継者の確保にも貢献している。

 長崎県松浦市の出身。周辺は炭坑が多く、坑木需要で製材業を営んでいた実家は潤っていた。だが、九州で松くい虫被害が広がったため、兄と共に松の木を追って53年に江津市敬川町の現場に住み込んだ。坑木の需要がひと息つくと、浜田周辺の木材生産者と協同組合を設立し、江津市の山陽パルプ(現日本製紙)へ木材チップの供給を始めた。

 50年代後半の林業は、まだ人力が中心の古い手法で木材を切り出していたが、「出しづらい場所は手が付けられない状態だった」という。搬出が困難な資源を有効に活用するため、ワイヤを使った集材機を県内で初めて導入し、作業の効率を上げた。また、会社の備品として、当時は珍しかったチェーンソーを伐採作業を担う従業員に支給した。

 他の業者に先駆けて機械化を進めた理由は「効率を良くするのはもちろんだが、従業員の安全のためだった」と強調する。機械化で作業の安全性が向上したほか、肉体的な負担も軽くなり、健康管理の面からもメリットは大きかったと振り返る。91年には、ワイヤを支柱に結んでさらにスピードを上げて木材を運び出すことが可能なスウェーデン製のタワーヤーダーを、中国地方で初めて導入している。

 今も会長職として毎日出勤して陣頭指揮に当たるが、県内の林業・製材業は少子化で木造建築が減り、高級材の単価が上がらない問題に直面しているという。「厳しい時代だが、業界で協力して乗り越えてほしい」と、後輩らの頑張りに期待している。

第51回産業賞 第2部門(商工)

米の状態を確認する松本年正さん=島根県奥出雲町横田、簸上清酒

出雲杜氏組合長
  松本 年正さん(69)

     =出雲市地合町=

卓越技術惜しまず伝承

 1963年から50年以上にわたって酒造業に従事してきた。簸上清酒(島根県奥出雲町横田)の杜氏(とうじ)として、上質な酒造りに取り組む。出雲杜氏組合長として、若手向けの研修会を開くなど技術向上と後進育成にも力を入れている。

 生まれ育った出雲市地合町は、冬になると町外に出稼ぎで酒造りをする人が多かった。中学校を卒業後、鳥取県岩美町の会社で酒造りを学んだ。80年に簸上清酒に入り、96年から杜氏を務めている。

 酒造りは、秋に仕込みが始まる。精米や洗米、蒸米を経て、麹(こうじ)や酒のもとになる酒母を造り、麹や蒸米、水を入れて発酵させる。全ての工程が終わる翌年の春までは、蔵に寝泊まりして管理する。

 とりわけ大切にしているのは、酒の味を決める麹造りだ。「まろやかで後切れの良い味」を求め、作業には神経を使う。培った技術で造られる酒は、国内の新酒鑑評会や国際大会で金賞を獲得するなど高く評価されている。

 その一つ、看板商品の大吟醸「玉鋼」は好評で年々生産も増えている。「自分は味があってスッキリしたものが好き。それがお客さんの趣向に合っているだけですよ」と謙遜する。

 2013年から組合長を務める出雲杜氏組合は、08年に約80人いた組合員が現在、半数の40人に減った。後進を育成するため、毎年夏に講習会を開き、酒造りの経験を伝えている。

 14年には蔵元の視察を復活させた。「機械も進化している。最新の酒の貯蔵技術や現場の杜氏の技術などに触れてほしい」と16年まで若手を連れ、広島、岡山、山口の3県の蔵元を訪ねた。今後も続ける考えだ。

 「若い人たちは熱意があり、酒造りについて聞いてくる」と感心するとともに「自分が先輩たちから教わったことをできる限り伝えたい」と、これからも力を注ぐつもりだ。

 冬が近づくと、自身の酒造りも本格化する。「消費者に品質の良い、おいしいお酒を届けたい」。変わらぬ思いで、今日もひたむきに作業に打ち込む。

第51回社会賞

食改推進員の研修会で調理実習する杉本悦子さん=島根県川本町川本、すこやかセンターかわもと

元島根県食生活改善推進協議会副会長
  杉本 悦子さん(79)

     =川本町川本=

食で支える町民の健康

 「食改さん」と呼ばれて親しまれている食生活改善推進員。約20年間の活動で川本町食生活改善推進協議会会長を10年間務め、県食生活改善推進協議会の副会長や常任理事も歴任した。「実践が一番」をモットーに、ピンクの三角巾とエプロン姿で会員の仲間たちと調理実習したり、子どもたちへの食育指導を行ったりしている。「命の根源である『食』を大切にしてほしい」と願い、活動する。

 もともとは印刷会社の社員。定年前に勧誘され、40時間(現20時間)の養成講座を1年がかりで受講し、推進員になった。所属する同町食生活改善推進協議会の会員は現在77人。7代目会長(2007~16年度)として食を通した健康づくりの普及に力を尽くした。

 その一つが2009年度に始めた朝ご飯レシピ集作成。大学や社会人生活に役立ててもらおうと、地元の島根中央高校3年生に毎年贈っている。「会員の皆さんにレシピを提案してもらっている。掲載しているのは手軽に料理できるメニューばかり」と話す表情に温かい心遣いがのぞく。

 同協議会では行政と連携し、園児を対象とした保育所クッキングを実施しているほか、小中学校で行う生活習慣病予防教室などを通し、バランスのよい食事の大切さを伝えている。

 地域での健康づくり活動も熱心に行っている。16年度は日本食生活協議会の委託事業として、高齢で筋肉や骨が衰え、運動機能に支障が出る「ロコモティブ症候群」を防ぐための料理実習を12地区で開催した。この他、会員による家庭訪問でみそ汁の塩分チェックを実施し、薄味を習慣づけてもらうよう呼び掛けた。

 協議会では年5回、「再教育」と銘打った会員の研修会を実施している。社会問題の生活習慣病について学んだり、健康的な献立を作ったりする。さらに会員たちが町内14地区に分かれて研修会を行い、健康づくりの輪を広げている。

 「食改さん」は12年度から、男性の加入が認められるようになった。「男性も大歓迎。私たちに続く、食育推進の担い手が育ってほしい」と願っている。

2017年山陰中央新報社地域開発賞 選考委員(順不同、敬称略)

[第62回スポーツ賞]
島根大学名誉教授 久保田康毅
島根県教育委員会保健体育課長 佐藤 正範
島根県体育協会専務理事 下岡 博司
島根県スポーツ推進委員協議会会長      森本 敏雄
島根県高校体育連盟会長 高橋 泰幸
島根県中学校体育連盟会長 岩田  靖
[第56回文化賞]
島根大学法文学部長 田坂 郁夫
島根県教育委員会教育長 鴨木  朗
島根県市町村教育委員会連合会会長 清水 伸夫
島根県環境生活部長 犬丸  淳
NHK松江放送局長 木村  靖
山陰中央テレビジョン放送会長 有澤  寛
[第51回教育賞]
島根大学教育学部長 小川  巌
島根県教育委員会教育長 鴨木  朗
島根県市町村教育委員会連合会会長 清水 伸夫
島根県高校PTA連合会会長 大屋 光宏
島根県PTA連合会会長 佐々木 功
島根県高校文化連盟会長 吉田 彰二
[第51回産業賞]
島根大学生物資源科学部長 井藤 和人
島根県農林水産部長 松浦 芳彦
島根県商工労働部長 安井 克久
島根県商工会議所連合会会頭 古瀬  誠
島根県商工会連合会会長 石飛 善和
島根県農業協同組合中央会会長 竹下 正幸
漁業協同組合JFしまね会長 岸   宏
[第51回社会賞]
島根大学名誉教授 猪野 郁子
島根県教育委員会教育長 鴨木  朗
島根県環境生活部長 犬丸  淳
島根県健康福祉部長 吉川 敏彦
島根県警察本部長 立﨑 正夫
島根県社会福祉協議会会長 江口 博晴
島根県連合婦人会会長 田儀セツ子