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 論説 :  韓国大統領罷免/社会の亀裂修復が課題だ
 韓国の朴槿恵大統領に対する弾劾訴追を審理していた憲法裁判所は弾劾理由を妥当と認定、朴大統領は罷免された。韓国憲政史上、初めてとなる異例の事態だ。

 韓国政治は民主化30年を迎えたが、成熟したとは言えない。今回の混乱は日本や米国、中国などにとっても不安要素だ。核とミサイルの開発を進める北朝鮮への対応など、地域秩序の迷走を加速させる恐れもある。協調的なリーダーシップが韓国に登場することを望みたい。

 今後は、60日以内に繰り上げ実施される次期大統領選を通じ、保守と革新の間で深まった韓国社会の亀裂を誰がどう修復するのかという課題に直面する。

 朴氏は国家システムを長年の友人、崔順実被告を中心とする個人的な人脈を重用することで私物化した。韓国憲法の目指す政治秩序とはおよそかけ離れたこうした朴氏の振る舞いは、何回かの謝罪会見では免罪されなかった。

 また、朴氏は昨年11月から週末ごとにソウルで開催されている退陣を求める数万人規模の市民集会を、北朝鮮が背後で操っていると受け止めていた。民意をくみ取る努力を怠っていたのではないか。

 罷免決定から数時間後、朴氏は大統領府の秘書官らに「特に申し上げることはない」と話したという。側近に射殺された父、朴正熙大統領に続き、任期を全うできなかった無念さは相当なものだろう。しかし、朴氏を「悲運の大統領」とはできないところに、問題の深刻さがある。

 朴氏が与党国会議員として政界入りし、大統領まで登り詰めた政治環境は、朴正熙大統領の時代に展開された民主化闘争を基盤に生み出されたものだ。

 しかし、民主化された環境で政界入りした朴氏の今回のスキャンダルで明らかになった権力を私物化するような統治スタイルは、朴正熙大統領の時代に酷似している。30年の民主化の蓄積が、かつての強権政治にノーを突き付けたといえる。

 今後、5月初めにも繰り上げ実施される次期大統領選は、韓国の政治風土をあらためて問い直す契機となるだろう。何よりも、朴氏に対する罷免の是非を巡り、対立が先鋭化した保守勢力と革新勢力の対立をいかに緩和するかという課題が、大統領選に出馬しようとする候補予定者に重くのしかかる。

 さらに、朴氏に退陣を求める国民の多くが抱えている格差社会への不満を、どのように是正するかという政治的資質が候補予定者には問われることにもなるだろう。

 韓国民の選択は、今後の地域情勢を左右する重みを持つ。朴氏は任期中、首脳として日本の地を踏むことはなかったが、罷免された初の大統領であると同時に、民主化以降の韓国大統領で、来日しなかった初めての大統領となってしまった。

 日本側は韓国の次期政権とは、首脳間の意思疎通を回復し、歴史問題など摩擦の火種が外交問題に拡大しないようコントロールする必要がある。従軍慰安婦の合意履行を巡り、長嶺安政駐韓大使が一時帰国して2カ月以上が経過した。韓国の次期政権とのパイプづくりのためにも、帰任に向けての条件整備を検討する時期に来ている。

('17/03/11 無断転載禁止)

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