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 明窓 :  恩師の言葉
 心の支えになる思い出や言葉がある。一昨年、95歳で亡くなった浜田市出身の日本画家・石本正さんにとっては小学校2年生の時の担任・小山一重(ひとえ)先生との出会いだった▼新任間もない19歳の女先生。1年という短い期間だったが、先生は絵の好きな石本少年を自宅に招き、画家の父親に会わせている。石本さんは、父親の絵の印象より一重先生の自分への温かなまなざしが強く心に残ったようで著書『青春時代を語る』に「先生が僕に絵を教えてくれた」と書いている▼出会いと別れの季節である。浜田市の島根県立大ではきょう卒業式。多くの若者が巣立つ。希望も不安もあろう。長時間の過重労働、人格をも否定するパワハラは論外だが、学校生活にはない厳しさが待ち受ける▼「働く」とは何か。政治学者の姜尚中(カンサンジュン)さんは著書『悩む力』で「社会の中で、自分の存在を認められること」と書く。金を稼ぐことだけではない。拘束時間の代償だけでもない。あなたの仕事は人の役に立っている、という肯定のまなざしが人を支える▼私事で恐縮だが20年以上前、高校の同窓会の帰り道、知的ではめを外しそうにない恩師が突然歌い出し言った。「新聞社に入ったなら論説委員」。目標は人によってさまざまだろうが、期待の言葉が単純にうれしかった▼縁あって論説委員として小欄執筆陣に4年半加わった。筆が止まり腕組みをする度に背を押してくれたのは亡き恩師の言葉だ。新社会人の心の中に、支えとなる言葉があることを祈る春である。(守)

('17/03/17 無断転載禁止)

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