TSK記者のインド視察取材記

     山陰中央テレビ報道部 土江基行   

 11月のインド経済視察団派遣に同行取材した山陰中央テレビ報道部の土江基行記者が、取材を通じて感じた現地での印象や今後の課題などをまとめリポートしてくれましたのでご紹介します。
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低所得者向けの住宅
 
 
デリー市内の高級住宅街
 
寺院で祈りを捧げる人々
 
シーク教の寺院
 
活気に満ちたデリー市内の市場@
 
活気に満ちたデリー市内の市場A
 
デリー市内の市場でリポートをする筆者

 「何から撮ればいいのだろう」−ニューデリー市内でビデオカメラを構えた時に、まず感じたことだった。

 聞こえてくるのはクラクションとなじみのない言葉、景色は独特の空気にかすみ、多様な顔つきの人々が様々な服装でせわしなく歩いている…。何もかもが「画になる」と思う一方で、五感すべてが経験したことのない「違和感」を覚えていた。

 日本の外務省も参考にしている統計によると、インドの人口の3分の1は1日1.25米ドル以下で暮らしているという。国連が「貧困層」と定義している人々だ。デリーでは道路脇などにつくられた簡素なバラック小屋を多く目にした。車が止まれば、窓を拭いてお金を得ようと近づいてくる子どもたちがいる。

 その一方で、海外の有名ブランドが入るショッピングセンターでは、高級ブランドのバッグを持った女性の姿があり、高級住宅街には、総大理石の家が並んでいる。裸足の少年を振り切り、未舗装の道路を土ぼこりを上げて走り去るヨーロッパメーカーの高級車。「富」と「貧」のコントラストは今のインドの特色ともいえそうだ。

 取材では、視察団に同行し、中央政府の要人との面会にも同席することができた。行く先々で多忙な公務の間をぬい政府幹部自ら視察団の話を聞こうとする姿は、山陰の企業や自治体への関心の高さを感じさせた。

 また、参加した企業の個別商談に密着することもできた。鳥取県大山町の工場で製造したマッサージチェアを世界40ヶ国に出荷しているファミリーイナダ。多様性に満ちたインドマーケットの中でも、富裕層をターゲットに販売を検討している。インドの代理店との交渉では、仕入価格のやり取りにまで踏み込んだ商談となった。初対面ながら、原価や生産体制など経営の核心部分に遠慮なく踏み込んでくる様子が印象的だった。

 いくつかの商談に同席したが、「値段が高い」「必要ない」と、インド人ビジネスマンは要求や結果をはっきりと伝えてくる。明確な自己主張はインドビジネスの基本のようだ。

 ここまでは欧米や中国でのビジネスに近い感覚だったが、インドの奥深さを感じたのは寺院を取材した時だった。

 取材の許可が得られたのは、シーク教の寺院。ひげを伸ばしターバンを巻くのが特徴で、マンモハン・シン首相もシーク教徒だ。金色を基調とした豪華な寺院の中で、日本でいう祭壇に向かい膝をつき、祈りをささげる人々の姿があった。

 インドの人々にとって「宗教」がどのような存在なのか、日本人の私が正確に理解することは難しいところだが、祈りをささげる人々の表情からは、生活や文化、価値観、思想などあらゆる面で大きな影響力を持っていて、インドの人々のアイデンティティを形成する重要な要素なのだろうと感じた。実生活でも、食べ物や服装の決まり、毎日のお祈りなど「宗教」が根付いている。

 商談では欧米諸国のような資本主義国家らしさをみせながら、合理性以外の何かが支配している姿は、欧米とも他のアジア諸国とも一線を画しているように思った。とにかくインドは「不思議」な国だ。

 今後、インド市場を狙う日本企業にとって、ハード・ソフト面でクリアすべきハードルも多いと思う。一方で、12億人が醸し出す熱気は無限の可能性を感じさせ、世界中の企業、政府、あらゆる人の腰を上げさせる大きな力を持っているようだ。

 最後になりましたが、同行取材において格別のご配慮をいただきました経済視察団の皆様、山陰インド協会の皆様に心からお礼申し上げます。