ふるさとの明日を考える 〜道路問題と島根の未来
基調講演
高速道路と地方の将来 〜未来を開く国土経営とは
     東京大学大学院情報学環教授 大石久和氏
基調講演
 日本人が道路を使い、自動車で物を運ぶようになった1955年ごろ、道路整備とは、「舗装」と「拡幅」だった。しかし生活レベルが上がるにつれて、国民は、より高レベルの道路サービスとして、雨風などがあっても使える「信頼性」、時間距離を大幅に短縮する「高速性」、通行所要時間が一定した「定時性」を求めるようになった。現在の道路はそういう意味で、まだ不十分だ。

東京大学大学院情報学環教授 大石久和氏   ◇   ◇

 車の保有台数は、1945年ごろは、全国で15万台にも達していなかったが、今は7500万台にも増えた。GDP(国内総生産)も、高度経済成長時代を経て、非常に高い伸びを示しており、両者には非常に大きな相関がある。

 急激なモータリゼーションの進展に伴って道路整備の費用が急増し、その予算確保のために所得税など既存の税に大きな負担を掛けない方法が考えられた。整備した道路を走る自動車のオーナーに、新たな受益者負担をかける考え方と、利用効果が顕著な道路では建設費を利用者に負担してもらう有料道路の考え方だ。この二つの考え方を柱に日本の道路整備が始まった。

 そのおかげで、一般会計予算総額は1955年度に1兆130億円だったものが、2004年度には86兆8780億円と86倍に増えたのに対し、道路総投資額は623億円から10兆5000億円と168倍にも増えている。

 第一次道路整備五カ年計画は、1949年に復活させた揮発油税を1954年に道路特定財源としてスタートした。それ以降は、軽油引取税や自動車重量税などの道路特定財源すべてが、道路整備に充てるという目的を国民に説明した上で創税された。ほかの公共事業が一般財源に依存しているのと大きく違う点だ。

 それは、受益者が負担して道路整備に充てるという「合理性」、利用の度合いに応じて負担する「公平性」、計画的な道路整備に必要な財源を安定的に確保する「安定性」を併せ持っている。

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 例えば、京阪神−福岡間のアクセスパターンを考えると、現況では中国縦貫道や中国横断道広島浜田線などを使って16パターンある。山陰道の宍道−江津間が開通すると、それだけで24パターンに増える。さらに、中国横断道尾道松江線など高規格道路の計画路線すべてが完成すれば324パターンにもなり、代替性豊かなネットワークができる。

 高速道路はネットワークで機能する。だから、交通量が少なく効率の悪い道路の建設は後回しでよい、という考え方は、高度経済成長時代の、ただ当面の需要を満たすための、対症療法的な考え方ではないか。わが国のネットワークを見ると、日本海側、山陰側の整備の遅れは顕著だ。

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 道路特定財源について、中央各紙はそろって一般財源化に賛成しており、地方各紙は道路特定財源の一般財源化について賛否両論がある。山陰中央新報は「地域の自立にとって道路は不可欠なインフラであり、まだまだ道路整備が必要で、財源の手当もしなければならない」との主張だ。

 一般財源化賛成論にある「既に道路は全国津々浦々まで整備された」との認識は「舗装と拡幅を終えた」という意味でしかなく、余りにも実態を知らない。


近畿・九州間のアクセスパターンの増加
 世界各国では、道路大国の米国でさえ道路関連予算を大幅に増やす計画で、欧州でも、EU(欧州連合)が大型プロジェクトを活発化させ、中国も2030年までに総延長8万5000キロもの高速道路網を完成させる計画だ。

 わたしたち日本人は、こういう世界の情勢をよく知った上で、日本の道路について論議する必要がある。
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