
最近のわが国社会、経済システムはグローバル化、IT化の下で、地域間の格差と国際競争が激化している。一方、少子・高齢化が進み、成熟経済特有の低成長経済に移行している。この間、高度成長期の東京一極集中と国家財政の地方配分システムが壁にぶつかり、地方分権と地域の自立再生が求められている。まさに生き残りをかけた地域間競争の時代に突入している。
このような潮流の変化の下で、昨今の道州制論議が高まり、政府では「国土形成計画」に関連して「広域地方計画」の在り方が検討されている。
中海・宍道湖・大山圏域は鳥取、島根両県のほぼ中央部に位置し、人口約66万人を有している。古くから物流、人的交流ならびに水、陸交通の要衝であり、農産物、海産物、生活物資の販売拠点が集中している。特殊鋼、紙・パルプ、情報通信機器、電気機械、農業機械など大手主力工場が立地し、独自の技術力をもつユニークな中小企業も拠点展開。鳥取、島根両県の工業品生産、出荷活動の約6割をこの圏域が占めている。さらに、歴史、文化、自然環境に恵まれ神社、仏閣、温泉地、美術館、博物館のほか、新たな魅力スポットも加えて、観光資源は極めて豊富で、観光入り込み客数も約2700万人で鳥取、島根両県の6割に及んでいる。
米子、出雲の空港や、島根大学、鳥取大学医学部をはじめとする高等教育機関も集中。民間の医療、福祉施設も充実し産学官連携を進めやすい独特のエリアである。
しかしながら、この圏域が鳥取県、島根県の境界にまたがり、この圏域の地方自治体がそれぞれ個性的、独立的であるため、過去においては行政上のバリアが存在し、民間の経済活動の面でも圏域の「求心力」に欠けるところがあったことは否定できない。
そこで、地域間連携と広域観光振興の観点から、2006年6月に民間経済界が音頭を取って鳥取、島根両県当局、関係市町村、ならびに各種住民団体などの全面的な協力を得て、中海・宍道湖・大山圏域観光連携事業推進協議会(略称・広域連携協)を発足させた。
「広域連携協」の活動としては
(1)観光ポータルサイトの開設など広域で一体的な情報発信戦略
(2)水上遊覧船の実験運航など水面活用戦略
(3)温泉地、医療施設、美術館巡りなど滞在型の余暇活用戦略
(4)体験型観光など産業観光ネットワーク戦略
―を推進している。観光振興に限って言えば圏域内の「求心力」は高まりつつある。ただ国際競争力と、地域間競争力を持った真に魅力的な地域として圏域外、つまり山陽圏、関西圏、首都圏さらに海外への「遠心力」をどのように高めていくかが重要課題である。
このテーマを考えるに当たっては、道州制の議論の進展とも絡んで、中国経済連合会が昨年秋発表した中国地方新生ビジョンを、チェックする必要がある。同ビジョンは、
(1)活力みなぎる経済圏の形成
(2)魅力あふれる生活文化圏の形成
(3)地域の個性が輝く交流圏の形成
―を掲げている。
これを踏まえて中海・宍道湖・大山圏域を位置づけてみると、中枢拠点都市圏として圧倒的けん引力のある広島圏域、岡山・倉敷圏域に次ぐ、第3の有力な中枢拠点都市圏として、相当高いポテンシャルを持って浮上するのではないか。
ただ、これを単なるポテンシャルでとどめず、確実に具現化するためには、
(1)山陰自動車道と中国横断道、尾道松江線、同姫路鳥取線の早期完成
(2)環境、医療、福祉の面で先進的な安全、安心な生活充実都市圏の形成
(3)中山間地域の振興により、中国ブロックの一体的活性化を実現する
(4)境港の港湾機能の全面的グレードアップ
(5)独自の歴史、文化に天然温泉、美術館などを結び“くつろぎ”と“やすらぎ”の充実感を持って触れうる、国際文化観光都市圏を形成する
(6)担い手となる人材の育成と確保
―が必要になる。
また行政当局間の緩やかな連携推進と民間経済界、市民団体を挙げての一体的地域活動のプロセスにおいて、各主体における人材の育成と鍛錬が可能となる。
以上のような問題意識を踏まえて、本日のシンポジウムがこの圏域の将来像を探り、地域の夢と希望をはぐくむ有意義なものとなるよう、強く期待している。