食味の良さ、 高温耐性に注目

島根県産 「つや姫」 作付け拡大

島根県の水稲奨励品種「つや姫」は山形県が発祥地のお米で全国では島根を含め6県で栽培される。つや姫は高温障害や倒伏への耐性に優れ、収量も多く炊き上がりの米に光沢がある。食味に優れている点も特長の 一 つで、日本穀物検定協会が行った2015年産米の食味ランキングで島根県産のつや姫は最上級の「特A」にランクされている。県ではコシヒカリに並ぶおいしい島根米として県の代表的な銘柄米に、と増産に力を入れていて、県内の16年産つや姫の作付面積は1006㌶(前年比41%増)。つや姫栽培に取り組む松江市玉湯町内の農事組合法人を紹介する。

温泉地として知られる玉造温泉街を抜け、山手に入った松江市玉湯町林の別所地区では、2011年に従来の集落営農組織を法人化した「農事組合法人ビスケット」が誕生。同法人の代表理事組合長を務めているのが同町林の勝田達雄さん(64)で、県が認定するつや姫マイスターの一人。昨秋の新嘗祭の献穀者にも選ばれている。元々は兼業農家でサラリーマンだった勝田さん。07年から営農組織の代表を務め、地域の農業振興に努めてきた。「住民の高齢化が進む中で、地域農業の担い手が不足し、耕作放棄地が増えてきた。そうした農地を守るための方策が営農の組織化だった」と話す。

つや姫は前年の3倍

同法人は別所地区の農家24戸などが所有する農地16㌶と、布志名地区の3㌶の農地を借り受け、水稲を中心にそば、大豆、飼料用米やキャベツ、ショウガの栽培、ハウスでのミニトマトの水養栽培などを行い、多角経営を進めている。同地区は玉湯町の平坦地に比べるとやや標高が高い海抜80㍍~150㍍の地域。2、3㌃ほどの小さな棚田から1区画80㌃の水田まで約100カ所の圃場がある。「立地的に日照時間が少ない関係で取れる収量は少ないが、寒暖差があるのでおいしい米が取れる。平地のものとは食味が違う」と勝田さん。今年はコシヒカリ、きぬむすめ、つや姫の三品種を作付け。全体の割合はきぬむすめが40%、コシヒカリが35%、つや姫が25%だった。つや姫は前年の作付け面積の3倍となる約3㌶に拡大した。
つや姫の栽培を増やした理由は、品質重視の観点から。「やはり食味が良く、1等米比率が高いというのが魅力」と話す。農家の保有米としてはこれまでコシヒカリが主流だったが、同地区でも最近は高温障害による品質低下が見受けられ、倒伏被害もあった。特に昨年は倒伏が影響して収穫作業に手間どったことから、本年度産米では暑さに強く、丈が短く倒伏しにくいつや姫の作付けを増やした。
4月下旬に播種、5月20日頃に田植えをした後、化学肥料や農薬の使用量を制限する「特別栽培米」の栽培要件に沿って病害虫予防や除草、水管理に努めてきた。勝田さんによると、鉄分を入れての土壌改良や粒を大きくして1等米比率を高める努力を重ねているという。今年夏は約1カ月間、雨の降らない時期があって苦労も多かった。農業用水をため池と山水に頼っている地域なので、川からポンプで水をくみ上げて水田に引くなどした。本年産つや姫については「昨年より少し良さそう」という。周囲を山に囲まれる地域でイノシシによる農作物被害も多く、電気柵のほか、松江市の支援を受け圃場の周囲にワイヤーメッシュ柵の設置も検討している。
勝田さんは「自然豊かな環境を守りながら品質、食味を追求し、おいしい米づくりに挑戦していく。この別所地区を荒らさないで次世代に引継ぐシステムを築いていきたい」と地域の未来を見据える。