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住宅 - 現場取材

 国内の住宅市場が冷え込んでいる。景気てこ入れの追加経済対策として住宅ローン減税や長期優良住宅などの支援策が相次いで打ち出されたものの、山陰の市場ではその効果は限 定的で業界活性化にはほど遠い現状だ。山陰両県の現場を取材した。

積水ハウスが4年前に売り出した分譲住宅地「サンディスク陽南台」(松江市国屋町)。高台にあるワンランク上のニュータウンとして、130区画のうち90区画を販売済み で、住宅不況と言われる中「今年に入り、特に5月の連休以降、来場者数、契約数ともに増えている」と、山陰支店陽南台オフィスの小川清志店長は手応えを口にする。

追い風要因となっているのは、国が今年から始めた過去最大規模の住宅ローン減税を柱とした住宅取得優遇策だ。

最大控除額は500万円
 昨年末までの住宅ローン減税は借入限度額が2千万円で、最大控除額は160万円。これが新制度では借入限度額が5千万円、最大控除額が一般住宅で最大500万円に、それぞれ引き上げられた。さらに、住民税からの控除や住宅資金贈与の非課税、住宅金融支援機構の長期固定住宅ローンの要件緩和など、優遇策がめじろ押し。

 また、住宅ローン減税は入居年が遅くなるほど控除額は下がるため、購入者にとって「今がチャンス」との買い時感は高まる。小川店長は「営業のとっかかりにもなり、購入の後押しになっている。後は、いかにしっかりとメリットを説明できるかだ」と意気込む。

 ただ、そのローン減税も市場全体を活性化させるまでには至っていない。

 松江市内の工務店の営業担当者は「期待は大きいが、減税が直接の理由で購入を決めた人はいない。景気悪化で所得がこれだけ落ち込むと将来への不安が先立つ。実感できるほど の効果は出ていない」とこぼす。最大控除が受けられる借入額5千万円の高額ローンを組める人は、よほどの高所得者に限られているのも一因という。

雇用不安でマイホーム断念
 景気低迷による住宅市場の冷え込みは数字にはっきり表れている。島根県の2008年度の新設住宅着工件数は、前年度比9・8%減となる3232戸となり、過去30年間で最少。鳥取県も同16%減の2643戸で44年ぶりに3千戸を割り込んだ。

 「今回は見送ろうと思いまして」。出雲市内の建築会社の営業担当者は、一戸建て住宅の購入を検討していた30代男性の言葉に思わず全身の力が抜けたという。

 昨年から商談を重ね、契約確実と見込んでいたが、勤務先の電機部品メーカーが業績悪化に伴い人員整理に着手し、雇用不安から購入をあきらめたという。

 この建築会社では不況色が濃くなった昨秋から、商談に至るケースさえ激減した。展示会の来場者などにアプローチしても、収入面の先行き不安で切り返され、空振りが続いた。

 実際に、夏のボーナス減額などで住宅ローンの返済に行き詰まり、金融機関への相談が増加。担保の住宅物件が競売に出されるケースも増えている。貸し出す側の金融機関の住宅ローン審査も勢い厳しくなり、市場をさらに冷え込ませる一因になっているとの見方もある。同建築会社の社長は「正社員でさえ住宅ローンが組めない世の中でいいのか」と嘆く。

 大規模なローン減税がスタートした今年に入っても回復の兆しは見えていない。6月の住宅着工戸数は島根が前年同月比21・1%減の258戸、鳥取が同17・9%減の206戸と低迷。島根県建築住宅課の宮崎敏一・建築指導監は「(09年度は)3千戸割れも十分あり得る」と厳しい見方を示す。

200年住宅
 「200年住宅」の普及を目指す長期優良住宅制度が6月4日、スタートした。住宅寿命30年といわれる日本の住宅の流通性を高めるのが狙いで、一定基準を満たした住宅を「長期優良住宅」と認定。取得者には、住宅ローン減税の最大控除額が一般住宅よりも高い600万円となるなど各種優遇策が講じられている。

 同法が施行されて1カ月後の7月初旬。出雲市内で開かれた長期優良住宅の概要や認定基準、申請方法についてのセミナーに、島根県東部の地場工務店などから約90人が集まった。主催したのは、長期優良住宅の建築確認や技術審査を行うハウスプラス中国住宅保証(株)(広島市)。講師を務めた漆谷智之営業部長は「(長期優良住宅への)関心を持ちながら、地場工務店はどう対応すればいいかわからないというのが実態」と話す。

 長期優良住宅の認定基準は▽劣化対策▽耐震性▽維持管理・更新の容易性▽可変性▽バリアフリー性▽省エネルギー性▽居住環境▽住戸面積▽維持保全計画─の9項目。このベースとなっているのが、2000年に施行された「住宅性能表示制度」で、これを積極的に対応してきた大手住宅メーカーは、新たな長期優良住宅の基準も比較的容易にクリアできるとされ、今後販売する全件での認定を目指す。

 これに対し、地場工務店では性能表示制度の活用が進んでいなかったため、長期優良住宅への対応は難しいとの見方が少なくない。

 現に、島根県がまとめた7月末現在の申請戸数は13戸で、すべて住宅メーカーだ。

今なぜ高性能住宅か
 ただ、長期優良住宅が市場のスタンダードとして、どこまで浸透するかは不透明だ。

 長期優良住宅の基準を満たすためには、一般的に建設工事費が1~2割増しになると言われ、その分、購入価格にもはね返る。木造在来工法の注文住宅を手掛ける(株)藤栄工業(松江市北田町)の古藤定治社長は「要望があった時に備え、講習会などに参加して対応準備は進めている」としながら、「この時代にあえて割高な住宅を購入しようと考える人がどれだけいるのか」と否定的。

 出雲市、大田市に営業所を持つ(株)ひらぎの(松江市学園1丁目)がFC経営するセルコホームは、最大200万円の補助が受けられる長期優良住宅の先導モデル事業に採択され、適用物件を募集中。平儀野好美常務取締役は「高性能をアピールし、差別化できるチャンスだが、認知度はまだ低く、複雑な制度を消費者に理解してもらうのは簡単ではない」と話す。

 また、住宅を長持ちさせ資産価値を維持した上で、中古住宅の流通を促進する狙いに対しても、島根県の宮崎建築指導監は「都会地と違い、地方のさらに田舎の一軒家にどれだけ 流通性があるのか疑問」と話す。

戸建ての魅力もっと追求
 国としても地場業者にも長期優良住宅を普及させようと、住宅の新築戸数が年間50戸程度未満の建築業者を対象に、基準を満たした木造住宅1戸当たり100万円を上限に補助する制度を設けた。全国で5千戸程度をめどに8月7日まで受け付け、同普及促進事業実施支援室によると7月末現在、山陰両県では島根10、鳥取20の事業者からエントリーがあったという。

 いまだ様子見が多い地場業者が今後、どのような動きを見せるのか。NPO法人・しまね住まいづくり研究会の理事長で、島根県立大学短期大学部の塩田洋三教授は「充実した設備や構造の保証は、建築後のトラブルが絶えない住宅市場での『信用』につながる」と指摘する一方、「設備や構造の前に、戸建てに住むことの魅力をまず訴求しなければ」と強調。大手住宅メーカーのブランド力に対抗するためには、家族形態や山陰特有の気候条件に見合った提案も欠かせないという。

 日本の住宅市場は06年度に新設着工件数が128万あったが、改正建築基準法などの影響で翌年度以降は100万件すれすれに低迷している。一方で生産能力は全社合計160万戸を前提に各社が激しい販売競争を展開している。世界不況から日本経済が抜け出したとしても、少子化で市場は縮小。110万─100万戸ラインへの回復がせいぜいと見られ、業界再編の動きも出始めている。

 その中で山陰の地場工務店は地域の特性をつかみ、比較的健闘してきた。しかし、今後は圧倒的な営業力を持つ大手の攻勢に加え、少子化、長期不況のトリプルパンチを食う格好だ。生き残りをかけた市場競争はさらに激しさを増すことになりそうだ。

新たな住宅ローン減税の概要
◇一般住宅の場合

居住年 控除期間 住宅借入金等の
年末残高の限度額
控除率 最大控除額
2009年 10年間 5000万円 1.0% 500万円
2010年
2011年 4000万円 400万円
2012年 3000万円 300万円
2013年 2000万円 200万円

◇長期優良住宅の場合

居住年 控除期間 住宅借入金等の
年末残高の限度額
控除率 最大控除額
2009年 10年間 5000万円 1.2% 600万円
2010年
2011年
2012年 4000万円 1.0% 400万円
2013年 3000万円 300万円

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