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【山陰経済最前線】日本の林業見直しの動き/外材高騰で国産材需要高まる/山陰でも再生探る取り組み/待たれる住宅需要の本格回復/環境問題なども追い風に

 世界的な木材需要の拡大に伴い、外材の高騰や国の支援策により、国産材見直しの機運が高まっている。山陰両県でも地元産材を積極的に活用し、林業再生につなげようという取り 組みが出始めた。ただ、肝心の住宅着工戸数が減少しているため、経営は依然厳しい実態を強いられたままだ。林業をめぐる島根、鳥取の最近の動きを探った。

「林業は先が見えない。これ以上仕事が減るとどうなるのか…」
 鳥取県南部町の山林。樋口林業(有)(鳥取県伯耆町溝口)の樋口茂社長が杉の伐採作業の手を休め、言葉を絞り出した。

 同社は伐採、搬出のほか製材も手掛けるが、木材価格が10年前に比べて半減。12人いた従業員も5、6年前から徐々に減らし、現在は6人に。荷上げ装置を付けた大型の8トントラックも売った。「心苦しかったが、生き残るためだった」。樋口社長の苦悩は林業の現況を物語る。

 日本は国土に占める森林の割合が高いが、木材の価格や需要は右肩下がりだ。森林・林業白書によると、原木(丸太)価格は杉中丸太(直径14~22センチ)が1980年に1 立方メートル当たり約4万円だったのが、08年12月には1万1700円に減少。島根県は80年に杉(直径14~18センチ、3メートル)の1立方メートル当たりの価格が4 万1700円だったが、08年は9200円に。鳥取県も杉(同14~16センチ、同)が3万3600円から9600円になった。

 このため林業の売上高を示す林業産出額のうち、木材産出額も島根、鳥取とも大幅に減った。

 それと比例して市場の原木取扱量も減少。島根でも有数の原木取扱量を誇る(株)出雲木材市場(出雲市上塩冶町)では、81年の約3万8千立方メートルから、08年は約 9300立方メートルに激減した。

採算割れが悪循環生む
 すそ野にも打撃を与え、島根は85年に2270人だった林業従事者が05年には681人に、鳥取は1605人から479人に落ち込んだ。

 木材需要や価格が下落している最大の要因は、住宅着工戸数の減少だ。島根は08年度に前年度比9・8%減の3232戸と過去30年間で最少。鳥取も16%減の2643戸で 44年ぶりに3千戸を割り込んだ。一方、全国の08年度は0・3%の微増だったが、09年度上半期(4~9月)は前年同期比33・9%減の38万4千戸で、比較できる65年 以降、上半期最低を記録した。

 さらに一戸建て住宅で木材利用が減ったとの見方も関係者の間から聞かれる。樋口社長も「かつては大きな戸建て住宅1棟で木材が5、600万円売れていたが、今は200万円 あればいい方だ」と説明。価値観や住宅の多様化で木材ニーズが変化していることに加え、景気の悪化で需要そのものが縮小しているのが要因とみている。

 事態の深刻さは林業経営の構造的な問題にも起因する。

 林業は伐採、搬出や作業道整備、市場への運搬などに多くの労力と経費がかかるが、伐期に達した杉中丸太1立方メートルの伐採にかかる経費は1980年から1万円前後のまま で推移。林野庁の担当者は「木材売価が大きく減っているのに経費は安くなっていない」と、機械化など生産性をあげる取り組みまで手が回らない厳しい経営環境を指摘する。

 昔は伐採跡に再植林して良質材の安定供給を図ってきたが、中部林産(株)(鳥取県日野町黒坂)の中西康夫社長は「現在の木材価格では、立木が売れても山の所有者は再植林に 回せるお金が残らず、採算に合わない」と説明。日本では小規模所有者が多いため、山の整備をやめれば良質の木が育たない悪循環を生み出している。

 また大和森林(株)(松江市東朝日町)の松原正記社長は「供給力が一定せず、切ったら売り場に運ぶというようなことで、需要と供給のバランスが取れていない」と業界の課題 を指摘する。

ロシアの輸出関税引き上げ
 林業の混迷は川下の業態にも深刻な影響を及ぼしている。出雲木材市場は、手数料収入が全体の売り上げの約8割を占めるが、取扱量の激減で収入も減少した。昨秋には松江木材 市場(松江市富士見町)が経営悪化から閉鎖。建築業の倒産や廃業も目立つ。

 一方でここに来て、国産材見直しの動きが出始めた。その背景の一つは外材の高騰だ。外材は電信柱のように真っすぐに伸び、品質が安定。歩留まりも高く、構造材向きだ。だが 10年ほど前から中国や中東といった木材需要国が台頭、価格が国産材を上回るようになった。最近では原油高騰による輸送コストの上昇から輸入を手控える動きが高騰に拍車を掛 けている。

 合板メーカー、(株)日新(境港市西工業団地)も昨春以降、国産材の利用が急び、現在は2~3割を占める。主力だったロシア産カラマツは2割まで減った。木村弘二専務は「ロシアの輸出関税が07年から20%、08年から25%に上がった。今後は80%になる見込みで、国産材のウエートを高めている」と説明する。

 

 外材高騰に加えて、国産材や間伐材の利用を促す法整備も国産材の需要を高める要因となっている。

 今年6月に「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」が施行。国産材も使い、長く住める住宅建築を勧め、認定されれば所得税や固定資産税減税などを受けられる。10月には 「住宅瑕疵(かし)担保履行法」もスタート。建物に欠陥があった時に適切な補修が行われるよう、新築住宅を供給する建築会社に保険加入や供託を義務づける内容で、安心して新 築住宅を購入できるのがメリットという。

 中部林産の中西社長は「長期優良住宅の推進などで木材を使う環境を支援してもらえるのはありがたい」と前向きに受け止める。

間伐材のJパネル好調
 環境問題も国産材には追い風となりそう。20年までに温室効果ガスの排出量を90年比で25%減らすという鳩山首相の方針を受け、CO2を吸収する森林の整備と、間伐材を 積極的に活用させる期待もある。出雲木材市場の三吉庸善社長も「25%削減はピンとこないが、山への関心が高まり、木を使う意識の高まりに期待したい」と話す。

 こうした動きをビジネスチャンスととらえ、山陰でも独自の取り組みや改革で活路を見いだす企業も現れた。  鳥取県西部の林業や製材関係者などでつくる協同組合レングス(鳥取県南部町法勝寺)は、近隣の日南町や日野町にある杉やヒノキの間伐材を3層に組み合わせた集成材「Jパネ ル」を生産してきたが、最近は注文に供給が追いつかない状況だ。

 全国を視野に営業してきた成果があらわれ、同組合理事長を務める中部林産の中西社長は「手ごろな値段なら国産材の家作りで差別化を目指す工務店や施主が増えているのでは」 と手応えを感じている。

 また、建築業の(有)音田工務店(米子市米原8丁目)と樋口林業は今年3月、経済産業省の農商工等連携事業計画の認定を受けた。樋口林業や施主が地域の山から良質な木材を 選び、音田工務店が直接仕入れて流通コストを下げ、他社と同程度の単価で高品質な住宅を提供する仕組みだ。

 音田猛社長は「材木の品質管理が一番の目的」と説明。計画的に木材を乾燥させるだけでなく、原木一本の歩留まりを高め、コストダウンを図る。音田社長は「近場の木を使った こだわりの家作りで、地場を活性化させたい」と話し、新たな木材流通の仕組みづくりの戦略を描く。

 島根、鳥取両県も県産材の流通活発化や林業振興に向け、各種の支援策を充実させるほか、担い手や新規就業の支援対策を取る。

 島根県は本年度から3年間の予定で、独自の県産木材住宅助成制度(最大40万円)をスタート。新築、購入、増改築を合わせ190件の申請を見込んだが、すでにオーバーする ほど好評だ。林業への就職相談や研修費助成、就業前、就業後の県単独の資金貸し付けなどを行っている。

 鳥取県も県産材を使った住宅建築への最大100万円の助成や低コスト林業の推進を目指し、作業道開設や林業機械整備、リースへの助成や、新規就業者を雇用する林業者への助 成制度を設けた。

 これまで輸入外材に押されて、顧みられることのなかった日本の林業。世界的な木材需要の変化や環境意識の高まりで、日本の森林の価値を見直す動きがようやく芽生えつつあ る。これをビジネスチャンスとしてどう生かすか、山陰両県の関連産業の動向が注目される。

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