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 自立への道標 〜岐路に立つ山陰経済〜 :  第6章「拓く・先駆者たち」(4)益田ドライビングスクール
 「雇用の場創出が経営者の仕事だ」

 合宿制教習所の草分け
MDSの敷地を見渡せる丘で「雇用の場を創出し維持するのが経営者の責務」と話す小河二郎会長=益田市安富町
 益田市の市街地から国道9号を車で西へ15分余り走り、坂を上ると山小屋風の建物が並んでいた。敷地内には木々が生い茂り、ゴルフ練習場やギャラリー、おしゃれなカフェ…。合宿制自動車教習所の草分け、益田ドライビングスクール(MDS、益田市安富町)はリゾート地のペンション村を思わせる。

 ▽経営哲学
 「私は、経営者というものは人を雇う、つまり雇用の場を創出するのが仕事だと考えているんですよ。それが地域の発展につながる。そう思って事業を始めたのに人員整理なんてとんでもない」

 小河二郎会長(82)は同社敷地を見渡せる丘に立ち、淡々と経営哲学を語り始めた。

 同社は1963年に益田自動車学校として創設され、73年から教習生の合宿制度を導入。島根県内12教習所を合わせた卒業生の、40%にもなる年間6000人が卒業する。その85%が東京や大阪など、都会地からの合宿生だ。今では全国各地に広がっているこの制度の先駆けが、同社であることはあまり知られていない。

 教習所を開設する3年前、道路交通法の施行に伴い指定自動車教習所制度が発足。全国で多くの指定自動車教習所が開設された。教習指導員が運転技術を指導し、卒業すると技能試験が免除される仕組みが人気を集め、各地の教習所は活況を呈した。MDSにも20歳代から50歳代の社会人がこぞって入校。経営は順調だった。

 ところが10年ほどすると、地方では免許取得希望者が減った。免許の取得需要が一巡したのと、豪雪災害などで若年層を中心に人口の流出、減少が顕著となった。県内の教習所は一斉に人員整理を始めた。

 MDSも教習生が急減。が、自らの経営哲学を否定する雇用の縮小はどうしても避けたかった。

 躍起になって全国の教習所の入所状況を調べた。都会地では免許取得希望者数が入所定員を大きく上回っていた。ひらめいた。

 「合宿制だ。寮をつくり都会であふれた教習生を受け入れ、15日から20日間で取得してもらおう」

 人員整理する必要がないどころか、逆に新たな雇用が生まれ、物品納入などで取引先も潤う。「一石二鳥、三鳥」にもなる合宿制の導入に踏み切った。

 ▽新規顧客
 全国に向け、多額の宣伝費を投じているわけではないが、卒業生は15万人を超える。全国から教習生が集まり、業界のトップランナーであり続けている。リゾート施設を思わせるハード整備が若者を引きつけるのか。

 小河会長は静かに首を振った。

 「運転技術、安全運転をするための知識とともに礼節を教えていることが、教習生が集まる大きな理由だ」

 共同生活で、あいさつや清掃の大切さを教えている。卒業生たちは帰郷してそのことを友達や後輩に伝える。評判は口コミで広がっていった。

 「心の荒廃が叫ばれて久しく、心の大切さを訴えかけることが必要な時代となった。礼節の大切さを伝えることが実は、いつの時代の若者にも評価されているのではないか。卒業して去る際に涙を流す子も多い」

 教習生の心をつかみ、熱烈なファンにしてしまう。そのファンが口コミでさらに新規顧客を増やしてくれる。地道な歩みながら、サービス業のビジネスモデルがそこにはある。

('06/01/27 無断転載禁止)

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