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 なるほど!石見銀山 :  創作能「石見銀山」(上)原作者は代官所地役人
謡曲「石見銀」の写本
 仲野 義文(石見銀山資料館館長)

 石見銀山遺跡の世界遺産登録を記念して、来る十一月十一日、大田市民会館で創作能「石見銀山」が催される。

 今回の創作能は、江戸時代に作られた謡曲「石見銀(いわみがね)」を、同遺跡の遺産登録に尽力された中世史の研究者の脇田晴子・城西国際大学客員教授によって改作されたもので、昨年の松江公演に続き、地元大田市での上演となったものである。

 ところで、創作能のもとになった「石見銀」とはいかなる謡曲であろうか。まずは一節を紹介することにしよう。

 「そもそもこれは筑紫かたより出でたる者にて候、われいまだ石見国銀山を見ず候程に、この度思い立ち一見せばやと存じ候」

 筑紫の者が、ふと思い立ち石見銀山へと旅に出かけるとのシチュエーションで、銀山では尉(じょう)という老人と出会い、彼との問答を通じて銀山の歴史や情景を叙述するという内容である。

 この作者は「雲の下人」なる人物。石見銀山の研究で著名な故石村勝郎氏によると、この人物は野沢左源太晟正(あきまさ)という大森代官所に仕えた銀山の地役人であるという。

 左源太は、野沢家の六代目の当主で、一七六八(明和五)年六月、父源兵衛の跡職を相続し、銀山の役人となっている。一七八五(天明五)年には、灰吹銀を増産した功績によって老中水野出羽守から褒美金三百疋(ひき)を頂き、一七九一(寛政三)年には地役人のトップ組頭役に昇進している。大森代官所では、いわゆるエリート官僚的な存在であった。

 これとは別に、文化的な素養も高かったようで先の「石見銀」のほかに、「銀山通用字録」や「銀山砂子」などの著作も残している。また「白川堂」なる家塾を開設するなど、学者や教育者としての一面ものぞかせる。

 代官所の役人といえば、すぐさま農民から年貢を収奪するイメージが想起されるが、実際には文化人としての顔を持つものも少なくなかったのである。

 石見銀山には間歩や建物のように目に見える遺産以外に、このような目で見ることのできない無形の文化遺産もある。創作能「石見銀山」は、まさに銀山の無形文化財に焦点を当てたもので、それ自体に大変重要な意義をもつ上演といえるであろう。ぜひとも、鑑賞していただきたい。

('07/10/24 無断転載禁止)

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