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 命を守る 高速道路へ :  暫定2車線の弊害 第6部 提言(4)分離帯設置へ構造令変更
交通事故鑑定人 中島 博史氏
交通事故鑑定人 中島 博史氏

 −暫定2車線(片側1車線)の高速道路で対向車線にはみ出した事故の衝撃はどのくらいか。

 「物理的に言うと、正面衝突はコンクリートの壁にぶつかったのと同じだ。相手の車が重ければ押し戻される力が加わり、衝撃は大きくなる。5月に福島県大熊町の常磐自動車道で乗用車がはみ出してバスと衝突した事故では、乗用車が最も大きなタイプだったにもかかわらず、運転席がなくなるほどつぶれて2人が死亡した。また、運動エネルギーは速度の2乗に比例する。エアバッグで助かる命は高速道では少ない」


 −最近の乗用車は衝撃に強い構造になっているのではないか。

 「1990年代後半からは、衝突時にフロントがあえて潰れてエネルギーを吸収し、人が乗っている空間を確保するボディーの開発が進んだ。安全性は高まっているが、結局は衝突時のエネルギーが問題となる。メーカーは時速最大65キロまでしか安全性評価を行っていない。高速道のように時速100キロでぶつかり、運転者が生存できる車を造っていない」


 −暫定2車線で起きた事故の過失割合は。

 「当然、暫定2車線ではみ出した場合の過失は全てはみ出した側にある。仮に1人が亡くなれば、賠償額は1人4千万〜5千万円になる。後遺障害で長引くと1億円近くになる。任意保険に入ってないと、賠償だけで人生は終わる」


 −はみ出し事故の最大の原因は何か。

 「やはり運転者が、自らの運転能力と車の性能を過信しているからではないか。暫定2車線の道路を毎日走っていれば、自分は大丈夫だと思い込んでしまう。スポーツ選手が行うイメージトレーニングと同じで、対向車が飛び出してきた時に、どうするかを想像しておくだけで万一の時に対応できる。とっさにブレーキを踏めば、運動エネルギーは抑えられる」


 −ヒューマンエラーを抑止すれば、悲惨な事故は防げるのか。

 「人間が注意して運転するのには限界がある。開発が進んでいる自動運転車が一般ユーザーに普及するまでには相当、時間がかかるだろう。ほんのわずかな油断で生じた運転者の誤操作が、大事故につながる道路設計は直ちに改善しないといけない」


 −暫定2車線区間の安全対策の在り方は。

 「進行方向が異なる車が混在するのは安全設計の観点から言えば論外で、現実的には中央分離帯の設置が最重要だ。道路整備の指針となる道路構造令で路肩の幅が狭く、分離帯を設置できないとすれば、構造令を変えればいい。時限立法を成立させるか、解釈を変更するか、官僚が速やかに対策を考えるべきだ」


 なかじま・ひろし 交通事故鑑定「ラプター」(群馬県みなかみ町)所長。ソフトウエア開発会社を経て、2007年にラプターを設立し、交通事故鑑定や防犯カメラ画像の解析を行う。鑑定した事故は100件以上。事故のメカニズムを研究し、テレビのコメンテーターとしても活動する。群馬県出身。49歳。

('16/06/09 無断転載禁止)

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