連歌甲子園への招待

下房桃菴
(島根大学名誉教授、島根大学「やみつくば会」代表)

<切りたくもあり切りたくもなし> という句に、たとえば、
<盗人(ぬすびと)をとらえてみれば我が子なり> と続ける、こういう遊びは聞いたことがあるでしょう。それが「連歌(れんが)」です。
「切りたくも…」の句を、前にある句という意味で「前句(まえく)」といいます。その前句から連想して続けた句を、前句に付けた句という意味で「付句(つけく)」といいます。
この例のように、前句が七七の場合は、五七五の付句を付けます。
逆に、前句が五七五の場合もあります。そのときは付句は七七にする、というのが約束ごとです。

連歌は十一世紀ころから盛んになり、江戸時代末までは、和歌と並んで日本の代表的な詩歌として多くの人から愛好されてきました。明治以降は急速に廃れ、ほとんど顧みられることもなかったのですが、近年、そのおもしろさを見直そうという動きが出てきました。

現代の高校生が作った作品をご紹介しましょう。
<あしたから来なくてよいときょう言われ> という五七五の前句に、
<歯医者さんへの恋に目覚める>
これは、歯の治療が終わったので「あしたから来なくてよい」というわけですが、そう言われて、先生に恋心を抱いていたことに気付いたのですね。嬉しいはずの言葉が、ちょっぴりさびしい、といったところです。
別の高校生は、同じ句に、
<バイトで割った皿は十枚>
この場合、「来なくてよい」の意味は、要するに、クビだ、ということです。皿を十枚も割れば、当然の結果です。
同じく叱られたにしろ、
<ワタシニホンゴワカリマセーン> という付句もありました。

また、
<キャンプファイアー囲むひととき> という七七の前句に付けた、
<先生とペアの私はアンラッキー> は、フォークダンスを詠んだものですね。先生とペアではがっかりです。
同じ前句に、
<肝試し怖くて残る五六人>
<数学のテストまるめて放り込み> などという付句もありました。

上の例でお分かりのように、同じ前句にさまざまな付句を付けることができます。前句から連想することなら、どんな世界を持ってきてもよいのです。
ただ、だれでも思いつくようなありふれたことがらよりも、ちょっと意外な世界を持ってきたほうがおもしろいですね。
それから、大事なことですが、自分の実際に体験したことを詠む必要はぜんぜんありません。バイトで皿を割ったとか、数学のテストを燃やしたとか、これらはみんな作り話です。ウソの世界で楽しく遊ぼうというのが連歌です。
さあ、皆さんも挑戦してください。

2017年5月13日 無断転載禁止

こども新聞