(1)ホンシュウジカ  森を駈ける優雅な姿

 ホンシュウジカがよく出没する島根県大社町鷺浦地区。

 二月上旬の午前一時。シカはにおいに敏感なので風下からライトを片手に進んだ。気配を感じライトを当てると子ジカの姿が。カメラを向けると、ゆっくり振り向き、澄んだ目でレンズをのぞき込んだ。しばらくして森を駆け抜けていった。その姿は、優雅な雰囲気を漂わせていた。

 山中を足音を忍ばせながら歩いた。約一時間ほど過ぎただろうか。斜面に雌ジカの群れがいた。

 シカに気付かれないように近付き、シャッターを切り続けた。スラリと伸びた足は魅力的だ。

 ホンシュウジカは偶蹄(ぐうてい)目シカ科。本州、四国、九州、五島列島の森林や草原に生息。島根県内では大社町、平田、出雲市にまたがる北山山系に個体群が唯一生息している。その数は約五百頭と推定されている。おとなしい動物だが、一方では農作物を荒らす有害獣でもある。

 地区内の古老は「農作物や森林を荒らすシカは地区民にとって死活問題だ」と嘆く。だが、愛護の観点から保護を訴える声もある。人とシカの共存共栄はあり得ないのだろうか。(文と写真、写真部小滝達也)
ゆっくり振り向きカメラのレンズを見つめるホンシュウジカ。澄んだ目が印象的だ=島根県大社町鷺浦
山の斜面に身を潜めるホンシュウジカの群れ=島根県大社町鷺浦

2003年3月4日 無断転載禁止