島根県立川本高校、河井俊彦教諭実践報告

 新聞を読むことで、難しい政治経済や国際情勢に目を向け、韓国の高校生とアンケートで交流。自分の進路探しに活用する生徒が増えた-島根県川本町の県立川本高校(伊藤進二校長)がNIE実践活動に取り組んで4年。指導に当たる河井俊彦教諭の実践リポートを紹介する。

 生徒の意識 社会に広がる

 ◇4年間の実践を通して
 昨年12月に開催された知事公聴会「みんなで語ろう島根の未来」に川本高校の生徒2人が参加しました。

 「活力ある地域・自立する地域を目指して」という県央地域テーマに対し、実家が造り酒屋の生徒は「地酒の発展は地域のPRが大切であり、地域ブランドを確立させるためにも情報高速通信網のさらなる整備が必要では?」と澄田信義知事に問い掛けました。

 また、生徒会役員として地元の江川太鼓や地芝居を学園祭に取り入れるなど地域交流に努めた生徒は「若い世代が伝統芸能にさらに取り組めるような支援が必要」と訴えました。

 高校生が一般社会人の中に交じって自分の意見を述べる成長した姿が、そこでは見受けられました。さらに、その生徒たちは新聞の投書にも取り組み、場を変えて自分の考えを自分の言葉で表現してきました。

 川本高校は2000年度から実践指定校として3年間、03年度は県独自枠の実践協力校としてNIEに取り組んできました。その間に進路指導部の協力も得て、3年生の教室すべてに新聞が配置されるようになりました。

 新聞がすぐに活用できる環境は、知事公聴会に参加したような生徒だけでなく、新聞を広げているうちに難しい政治経済や国際情勢の記事にも目を向けるようになった生徒や、自分の志望する進路に絡めて関心のある記事を見つけ出そうとする生徒が増えたことからも、有益だったと思います。

 公民科の授業の中でも、タイムリーな話題を授業内容に合わせて積極的に活用するよう努めてきました。例えば本年度は、イラク戦争から国際連合の意義やパレスチナ問題さらには自衛隊や国際貢献の在り方を学んだり、身近な市町村合併の話題から地方自治の課題を見直し、理解を深めました。

 先日も新聞の記事をきっかけに、脳死と臓器移植について議論の分かれるようなテーマを取り上げ、生徒に考えさせる授業を行いました。

 このような時事問題を取り入れた授業の中で、「米同時中枢テロ(9.11事件)」の際には、日本の貢献はどうあるべきか、と生徒が考える授業の様子を新聞記事で紹介していただきました。

 新聞を通じて広く社会に自分の意見が発信される機会を持つことができ、生徒も自分の意見や主張に責任感を持つ必要があることを実感したようです。加えてNIE活動の様子が新聞で紹介されることで、学校が地域社会により開かれた状態に置かれることとなり、生徒のみならず教員自身も多いに刺激を受けました。さらに新聞社との連携も密になって、記者派遣授業を行うなどNIE実践校のメリットを生かすこともできました。

 こうした取り組みは、生徒会執行部の生徒が時事問題を取り上げて特集記事を生徒会誌に掲載するようになったことにも波及したように思います。米同時テロが発生した年には発生後の国際情勢の流れを新聞などからまとめ、報復攻撃を支持するかなどのアンケートを実施しました。

 またW杯日韓同時開催の年には、両国間の過去の歴史を踏まえながら韓国の高校生にもアンケートを実施し、本校生徒の意識との比較調査も行っています。生徒の意識が教室内にとどまらず、地域社会から国際社会へと幅広く広がっていくように感じました。

 ただし新聞を見る習慣は身に付いたものの、じっくり読み込める生徒の育成には、まだ課題が多く残っています。

 昨年夏、松江市で第8回NIE全国大会が開かれ、子どもから大人までつながる「生涯学習型」のNIEが島根県の先生方から提案されました。県NIE推進協議会を中心にNIEを学ぶ機会が数多く提供されています。今後も教師間などのネットワークを大切にしながら、NIEに取り組んでいきたいと思います。
(2004年3月31日掲載)
進路指導部の協力も得て、3年教室に新聞コーナーを設置。時事問題など友達と読み込む川本高生
現代社会の授業で、新聞に目を通してニュースをチェックする生徒

2004年3月31日 無断転載禁止

こども新聞