新潟大会から 「家庭、地域、社会結ぶ展開を」

ふるさとについて親子で新聞を通して学ぶ公開授業にも注目が集まる
 「活字文化を大切に 発展させようNIE」をスローガンに、第9回NIE全国大会(日本新聞教育文化財団主催、新潟日報社など主管)が7月29日、30日の両日、新潟市で開かれた。島根9人、鳥取5人など全国44都道府県から集まった教育、新聞関係者らこれまでで最高の約1100人が記念講演やシンポジウムに耳を傾け、学校教育の現場で新聞を活用する展開策を考えた。島根から大会に参加した先生のリポートを含め紹介する。

 NIEの役割評価

 「考える力 新聞が育(はぐく)む-小説『山本五十六』を執筆して」という題で作家の工藤美代子さんが最初に講演。工藤さんは山本五十六が米国滞在時代に新聞を数十紙も読んでいたことを紹介。少女が焼死した記事を小学校時代に読んだのが最初の新聞との出合いという工藤さん。「子どもにとって新聞はどろどろした社会の縮図。すべてを失ってしまう火事の記事から、逆に家庭の大切さを学んだ。人間の情緒や事実の裏にあるものへの想像力をはぐくむのが新聞」と強調した。

 「子供が高まるNIE」をテーマに行われたパネルディスカッションでは、新潟県内の学校、家庭、新聞社の人々が、NIEの可能性を議論した。

 飯原清仁・新潟市立桃山小学校教諭は総合学習で学ぶ環境や福祉などの「情報収集の資料として新聞は有効」と述べた。

 だが小学生では言葉の壁、読めない漢字の壁をどう乗り切るかという問題点も指摘。調べた辞書のページにカラフルな付せんを張らせてみると、誰かが3つ4つと張っていくと、他の子どもも負けじと調べ、張っていく実践例を紹介した。

 新潟県立豊栄高校の蟻塚宰子教諭(商業科)は「新聞を仲立ちに教師と生徒が会話できるようになった」と学習だけではないNIEの力について発言。保護者代表の近昭子さんも「子どもが読むページは親がもう一度読むので親子の会話が増える」と述べた。

 地元、新潟日報社の渡辺英美子編集委員は、NIEが子どもと地域の媒介になるという観点で発言。「親と先生以外に、子どもが地域の人々と接することができるのがNIEのよい点」と指摘。

 さらに新潟大学の宮薗衛教授が「新聞は社会の窓口。学校の学びと社会とをつないでいく役割を果たしている」と述べるなど、学校だけでなく、家庭に、地域に、社会に開かれていくNIEへの発言が目立った。昨年夏の松江大会で島根から提言された生涯学習型のNIEの実践も目立った。

 実践成果 検証望む声も/学会設立準備など進む
 日本新聞教育文化財団が新聞購読料を補助するNIE実践校が、目標としてきた全国400校を今年ついに突破(島根5校、鳥取3校)した。7月に発表されたNIE実践校の保護者への同財団調査で、保護者の90%が「新聞を使った授業はよいことだと思う」と答えるまでになった。

 そのような広がりの中で開催された今大会は、NIEの発展を見つめ直して、次のステップにつなげる上で転換点に立つような動きや考え方が示された大会だった。

 「日本のNIEは実践先行型で進んできたが、今、実践の成果を研究し、検証する段階に転換するところにきているのではないか」と宮薗衛・新潟大学教授が指摘した。

 大会終了翌日には影山清四郎・横浜国大教授と枝元一三・夙川学院短大教授らの呼び掛けで理論検証を目指す「日本NIE学会」の設立準備会が新潟市で開かれ、来年3月の学会設立へ動いていくことが確認された。

 「NIEは地域の重要な問題から逃げないでほしい」と注文した渡辺英美子・新潟日報社編集委員の発言も印象的。新潟県で言えば「原発や拉致の問題をNIEで取り上げるのは難しいという声もあるが、これからの地域づくりを考えていく上では避けて通れない」と述べた。単にNIEを広めるだけでなく、内容を本質的に高めていく視点が感じられた。

 さらに同財団ではNIEの各地での、けん引役としてベテランNIE実践教師の中から選ぶ「NIEアドバイザー」制度を今春創設した。島根から松浦和之・桧山小教諭、山尾一郎・大田一中教諭、野津孝明・松江南高教諭の3人も参加、2年ぶりに行われた公開授業や分科会討議にNIEアドバイザーの姿が目立った。

 大きな節目となる第10回大会は来年7月末、鹿児島市で開催される。
(2004年9月1日掲載)

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