鹿児島で第10回全国大会 節目迎え成果と課題探る

 理論化や体系化が必要
 教育の現場で新聞を活用するNIEの第10回全国大会(日本新聞教育文化財団主催、南日本新聞社など主管)が「広げよう 深めようNIE(教育に新聞を)~豊かな学びを求めて」をスローガンに7月28、29の両日、鹿児島市で開かれた。九州では初の全国大会に、島根から教師6人など全国44都道府県から教育、新聞関係者ら804人が参加、記念講演やパネルディスカッションに耳を傾けた。節目の第10回大会を地元参加教諭の報告も含めて紹介する。

保護者を交えてのNIE活動が発表された中学校分科会1=鹿児島市山下町、かごしま県民交流センター
 ▽地域教育の大切さ
 「薩摩藩の情報収集と倒幕、維新」と題して講演した原口泉・鹿児島大教授は、西郷隆盛や大久保利通らを育てた鹿児島の独特の地域教育などに触れながら、情緒が形成される小学校高学年での地域教育の大切さを指摘。
 「新聞教育を通して、各地域独特の文化や伝統、資産を再建する。日本再生の道はこれしかないのでは」と述べた。
 パネルディスカッションではNIE実践経験のある教師、研究者、新聞記者らが「熱討・NIE これまでの10年、これからの10年」というタイトルで過去10年の成果と課題を話し合った。

 ▽説得力ある文章
 第一回大会の実践報告者である大阪市立野中小学校の安田陽子教頭は「10年前は学校に新聞記者が入ってくるのが、とても嫌がられたが、今はすごく風通しがよくなった」と振り返り、同財団認定のNIEアドバイザーでもある札幌市立月寒中学校の三上久代教諭は、NIEに取り組んでいない先生に「なぜ新聞なの」と聞かれたときに「こういう成果があるから」と答えられる理論化や体系化の必要性を指摘した。
 続いて発言した鹿児島県立鹿児島中央高の小川泰典教諭は、今春まで与論島の高校に勤務。そこで起きた市町村合併問題をNIEに取り上げた体験を報告した。
 合併問題は国、県、町、個人の各立場で、多様な意見がある。そこで新聞記事を生徒に読ませ、話し合いながら自分の主張を書かせた。「その授業の前と後では、同じ生徒が書いたとは思えないほど、論理的で説得力のある文章が書けるようになった」と紹介した。

 ▽希望ある記者派遣
 今春設立の日本NIE学会理事も務める寺尾慎一・福岡教育大教授は「(学会は)NIEが広がっていくような理論化に努めていく」ことを話した。
 また新聞側から出席した中島裕二郎・南日本新聞編集委員は、記者が学校に出向く記者派遣の体験について、「自分たちはこんな思いで記事を書いているということを直接子どもたちに話せる。そこに一つの希望を見いだしている」と語った。

 パネルディスカッション 「事例集めた冊子を」 活発で率直な議論展開
 「10年たっても、NIEが点から線や面に広がっていない状況があるのでは」。パネルディスカッションで総合司会を務めた南田和博・鹿児島実業高教諭のそんな率直な発言で、今後NIEをより広めていくにはどんなことが必要かをめぐり、会場からの発言も相次ぎ、活発な議論が展開された全国大会となった。

 「学校経営に主導権を持つ校長や教頭がどれだけ意識を持ってNIEに取り組むかが重要。校長たちの会合のときにNIEの効果をアピールしていくことが大切だ」との声も会場の参加者から出た。

 NIEも授業で行われるのだから、当該教科の目標を実現するための教育活動。だが、それを実現する理論化、体系化の具体的イメージが見えていないのも事実。そのような状況を克服するために「うまくいった例を集めてハンドブックなどを作れないか」(寺尾慎一教授)や「各地のNIE推進協議会が毎年出している報告書から、これはいいなというものを冊子にしてほしい」(小川泰典教諭)などの発言が相次いだ。

 また学校へ新聞記者が出向いて直接、子どもに話したり、NIEの授業で書いた自分たちの文章などが新聞に載ったりすると子どもたちが、がぜん新聞に興味を持ちだすことも数多く報告された。

 これに対して、今春から数えても総計20人もの記者を学校に派遣しているという南日本新聞の有川賢司編集局長は、2日目の分科会で「記者派遣を積極的にやりたい。記者がどれだけ人権に配慮して記事を書いているかを語ることで、いかに人権が大切かということを子どもたちに伝えることができる」と語った。

 島根から参加して
 学校で利便性高い新聞 大原隆治・大田一中教諭
 授業の中で新聞記事を活用することは、私も社会科担当として今まで行ってきましたが、それはあくまでも学習内容を検証する範囲のものであったように思います。

 本年度、担当する選択社会科の授業ではNIEの実践を取り入れ、設定したテーマにかかわる新聞の切り抜きを始めています。実りある学習活動にすべく、さまざまな実践を学ぼうと本大会に参加しました。

 私は、新聞に「親しみ」、新聞から「学び」、新聞を「つくる」ことを通して、楽しく豊かに、学力や社会性、メディアリテラシー(情報を見極める力)を伸ばしていくことを目的とする中学部会の実践を中心に研修しました。

 生徒と家族がコミュニケーションを高め、相互理解を深める保護者参加型の総合学習での実践。学級朝礼や教科、進路学習などで確かな学力の定着を目指す実践等々、幅広い分野で新聞の活用が図られていました。

 中でも私が再認識したことは、時間と場所が保障されていれば、生徒は新聞としっかり向き合うことができるということ。また、身近であり、利便性と公平性が高い新聞は、学校教育の場でたいへん利用価値の高いものだということです。

 新聞はさらに読みやすくなり、また、情報の配信方法も変化してきています。学校教育において新聞を今後いかに有効活用していくか、私自身が大きな課題を与えられた大会でした。

 実践者の意気に触れる 作野裕司・比田小教諭
 NIE全国大会に初めて参加しました。新聞を教育に生かすという趣旨で始まったNIEの活動が、10年の節目を迎え、ますます発展していく勢いがあることを肌で感じることができました。

 鹿児島大会はこの10年の総括と、これからの10年を見通そうと意図されたことが随所に見てとれました。私が参加したのもこの10年のNIE実践の積み重ねを少しでも得ようと思ったからです。

 しかし、実際に参加して得られたものは、それだけではありません。実践者の方々の意気込みにじかに触れることができました。実際に新聞を作っている記者の方々と話し、新聞の魅力を実感できたこと。NIE活動は使い方次第で子どもの考える力、表現する力を伸ばすことができると確信するようになりました。

 新聞には、現実の社会で起こった出来事がタイムリーに掲載されます。さらに、読者に分かりやすく伝えようと厳選された言葉や写真で表現されています。これらの特徴を利用すれば、学校で、家庭で、新聞はもっと身近になり、子どもたちの思考力や判断力、表現力を伸ばすことができるに違いありません。

 新聞の特徴を知ることは、他のメディアの特徴もよく理解するということでもあります。「新聞が使えそうなときに気軽に新聞を使ってみる」そんな気楽さもNIEには必要ではないか、と思いました。

2005年8月30日 無断転載禁止

こども新聞