石見銀山、世界遺産へのヤマ場 5月に報告書提出

 今夏の世界遺産登録を目指す大田市の石見銀山遺跡について、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の諮問機関である国際記念物遺跡会議(イコモス)が、5月に出す評価報告書が注目される。世界文化遺産の審査が近年、厳しさを増した上、イコモスの審査状況が一切分からず、文化庁や島根県が気をもむ。


石見銀山遺跡で現地調査を行うイコモスのダンカン・マーシャル氏(中央)=2006年10月19日、大田市大森町
 イコモスは昨年10月、石見銀山遺跡で現地調査を実施。担当者が、遺跡の保存管理や景観などで100項目を超す異例の質問や指摘をして、日本側から文書で回答を引き出させた。

 さらに、石見銀山遺跡と佐渡金銀山、アジア地域の鉱山遺跡との比較資料を提出させてから、1月19日から5日間、パリで執行委員会を開催。石見銀山を含む24の世界文化遺産候補の評価をめぐり討論した。

 討論内容は情報管理が厳しく不明。今後は、イコモスがユネスコへ5月に提出する評価報告書が最初のヤマ場。登録の可否は、6月23日から10日間、ニュージーランドで開かれるユネスコ世界遺産委員会で決まる。

 石見銀山遺跡の審議について、文化庁は追加情報の提出を求めたり登録延期もあるとし「新たな国内候補として4件を選んだばかり。ここでつまずけば、今後への影響は避けられない」と登録実現に全力を挙げる。

 文化庁の慎重な姿勢の背景には、世界文化遺産の審査をめぐるハードルの高まりがある。合格率が2004年の81%から06年は65%と急落し、今年は5割台との見方も。644件に膨らんだ文化遺産を抑制したいユネスコの事情がある。

 世界遺産登録の可否をめぐる採択は、登録と情報照会、登録延期、不登録決議の4種類。情報照会なら情報不足で登録が1、2年ずれ込む。登録延期なら根本的な出直しが迫られ、手続きに5-10年かかる。

 島根県教委世界遺産登録推進室の野村純一参事は「もろ手を上げて合格は難しいだろう。保存管理で何らかの条件が付くと考えている」と推測。現に登録された「紀伊山地の霊場と参詣道」では、和歌山、三重、奈良3県を統括した保護管理体制の構築が求められた。

 野村参事は「世界遺産委員会では登録が可決され、条件が提示される事態を望みたい」と願望。当面は、イコモスの評価報告書での表現が最大のポイントと強調して「情報収集に努めたい」とする。

 島根県の石見銀山遺跡調査整備委員会の田中琢委員長(元奈良文化財研究所長)の話 大量の産出銀が大航海時代到来の一つのきっかけになるなど、世界史的に見て大きな意味がある遺跡だ。当時最先端の鉱山技術を生み出すなど、現代に続く技術立国・日本の原点ともいえる。寺社や城など華々しい世界遺産だけでなく、こうした産業遺跡もきちんと評価することが重要だ。石見銀山がだめなら、国内のほかの世界遺産候補が後に続けなくなる。

2007年4月16日 無断転載禁止