世界遺産イコモス報告書 石見銀山「登録延期」

 大田市の石見銀山遺跡の世界遺産登録を目指す文化庁と島根県は12日夜、国際記念物遺跡会議(イコモス)が国連教育科学文化機関(ユネスコ)に提出した同遺跡の評価報告書の内容が「登録延期」だった、と発表した。学術審査の段階ながら、価値基準について大幅な見直しを迫る厳しい勧告となった。

石見銀山で栄えた大田市大森町。後方左が仙の山(資料)
 登録の可否を最終判断するのは、6月23日からのユネスコ世界遺産委員会。石見銀山遺跡は勧告で登録がずれ込む恐れが出たが、日本の世界文化遺産候補はこれまですべて登録されており、文化庁は「世界遺産にふさわしい物件が認められなかったことになりかねない。登録を目指して努力する」とした。

 イコモスは、ユネスコの諮問を受け世界文化遺産を学術的に審査する機関。ユネスコに評価報告書を通知し、世界遺産委員会を構成する国と、文化遺産を推薦した関係国に報告書が伝達されたのを受けて、文化庁と島根県教委が発表した。

 「登録延期」は、4種類の評価のうち、登録が適当とする「登録」、今年の遺産登録には足らない面がある「情報照会」に次ぐ3番目の勧告。世界遺産として価値証明が不十分とし、推薦書の枠組みの作り直しが求められ、作業に数年程度かかる場合もあるという。

 報告書でイコモスは5つの問題点を指摘。東西の文明交流の歴史に影響を与えた鉱山遺跡を証明する詳細な物証が示されていないとし、採掘活動がどのように顕著な景観を形成したのかを明らかにする調査研究も求めた。

 さらに、銀鉱山と関連した街道、鉱山町や港町などの国の文化財としての指定・選定に対しても、「範囲が不十分」と問題視。他の鉱山遺跡との比較研究については、アジア地域にある鉱山遺跡との比較研究が不十分とした。

 昨年10月のイコモスの現地調査では、担当者が遺跡の保存管理や景観で100項目を超す異例の質問や指摘を実施。さらに、石見銀山遺跡と佐渡金銀山、アジア地域の鉱山遺跡との比較資料の提出を求めるなど、かつてない厳密な審査を行った。

 石見銀山遺跡について、文化庁と島根県、大田市は、1996年からの共同発掘を含む総合調査の成果に基づき、世界遺産としての普遍的な価値を構築。「石見銀山遺跡とその文化的景観」の候補名称で、政府が昨年1月にユネスコへ推薦書を提出していた。


 溝口善兵衛・島根県知事の話 イコモスには可能な限りの説明をしてきたが、今回の評価は意外で、残念。遺跡の学術的価値について委員国の理解が得られるよう、文化庁、外務省に最大限の努力をお願いし、本県もできる限り努力したい。

 竹腰創一・大田市長の話 イコモスの評価は「登録延期」だったが、6月の世界遺産委員会まで、委員国に理解と協力を求めるよう、外務省や文化庁と可能な限り連携したい。評価報告の諸課題に対応し、少しでも早い登録に万全を期す。

 澄田信義・前島根県知事の話 報告を聞き、大変驚くとともに残念だ。県と国で、石見銀山の良さが審査員に十分理解していただけるよう、最善の努力をしていただきたい。今回、日本の申請は石見銀山のみ。最後まで全力を尽くしてほしい。

2007年5月13日 無断転載禁止