石見銀山「登録延期」評価 戦略練り直し不可欠

 世界文化遺産として日本がこれまで推薦した10カ所はいずれも、イコモスから「登録」の評価を得て、ユネスコ世界遺産委員会で1度の審査で合格してきた。それだけに今回は政府が経験したことがない事態となる。

 過去の世界遺産委員会での審議をみると、イコモスが「登録延期」とした遺産で、委員会が「登録」に2段階引き上げた例は極めてまれ。

 「情報照会」への繰り上げを経て翌年に「登録」となるケースは複数あり、戦略の練り直しが必要だ。

 政府は、石見銀山遺跡が世界文化遺産にふさわしい価値を持つと判断して推薦した以上、登録を実現させる責務を負う。6月下旬の世界遺産委員会まで1カ月余り。委員会を構成する各国に、引き続き理解を得る努力が求められる。

 今回の事態の背景には、世界文化遺産の審査をめぐるハードルの高まりがある。合格率が2004年の81%から06年は65%と急落。644件に膨らんだ文化遺産を抑制したいユネスコの事情がある。

 石見銀山遺跡は、登録が実現すればアジア初の鉱山遺跡。ただ、鉱山遺跡は、ボリビアのポトシ銀山など10カ所に加え、昨年に英国とチリの遺産が登録された。推薦ラッシュを見越してイコモスが審査を強化したとも考えられる。

 同遺跡の遺産登録を目指し、島根県と大田市は11年の歳月と33億円をかけ、住民も受け入れ態勢を築いてきた。国が登録への道筋を歩まなければ批判と不信の高まりは不可避。他の文化遺産候補が後に続かなくなる事態も生じかねない。


 昨年、イコモス勧告後8件格上げ 決定権はユネスコ委

 世界遺産登録候補地のうち、イコモスが「登録延期」と勧告しながら、ユネスコの世界遺産委員会がこれを上回る判断を下し、「登録」や登録を前提とした「情報照会」とした事例は近年もいくつかある。

 昨年、イコモスから「登録延期」と勧告されたモーリシャスの「アアプラヴァシ・ガット」は、数カ月後に開かれた世界遺産委員会で、決議区分としては、登録延期より2段階も上の「登録」と決議された。背景にはアフリカ諸国の強い要望があったとみられている。

 この年は、イコモスが「情報照会」としたものの、同委員会が「登録」と判断した事例も3つあった。

 また、2005年に登録延期とされたタンザニアの「コンドア岩絵遺跡」と、エチオピアの「ハラル・ジュゴル要塞歴史都市」は、ともに情報照会に修正され、補充調査などが行われた結果、翌年の06年に登録されている。

 このほか、イコモスが「登録延期」と勧告した後に、同委員会が「情報照会」とした事例だけをみても過去2年間でも6つある。

 これらの点から、今年の登録の可否も、あくまで6月末からニュージーランドで開かれる同委員会の結論が最終判断であることは間違いない。

2007年5月13日 無断転載禁止