厳しい勧告に気引き締め 大田市関係者、価値信じ巻き返しへ

「登録延期」という勧告の一報を受け、関係機関への連絡など、対応に追われる大田市の石見銀山課職員=12日午後10時、大田市大田町、同市役所
 「残念」「まだ、道は断たれていない。あきらめない」-。大田市の石見銀山遺跡が12日、世界遺産登録のハードルとなる国際記念物遺跡会議(イコモス)の評価報告書で、「登録延期」の厳しい勧告を突きつけられた。足かけ十数年。思わぬ一報に、これまで登録を信じ、官民協働の活動を続けてきた地元・大田市の関係者には、「落胆」と巻き返しに望みをかける「願い」が交錯した。

 世界遺産登録を産業振興の起爆剤にしようと、銀山関連の商品開発など、準備を進めてきた経済界。大田商工会議所の寺戸隆文会頭(61)は「想像外の勧告。地域の盛り上がりに水をさされた感じだ」と肩を落とした。

 しかし、気を取り直すように「これで、道が閉ざされたわけではない」。大田市や島根県と連携し、本番である今夏のユネスコ世界遺産委員会での登録という、「起死回生」の逆転劇に向けて活動を強化するよう、政府に働きかける考えを示した。

 「重いなあ…。涙が出るよ」-。大田市観光協会の石田弘行会長(69)も、沈痛な表情を浮かべながら、「これからが正念場。大田市民はあきらめんよ。やるよ」と口元を引き締めた。

 おひざ元・大田市大森町では、来訪者に遺産の価値を伝え続ける「石見銀山ガイドの会」の西本俊司会長(73)と、住民でつくる大森観光開発協会の河村政経会長(73)が「せっかく、ここまでこぎつけた」「最後まで協力していく」と活動の蓄積を強調。今後の可能性にかけた。

 さらに、石見銀山資料館の仲野義文館長(42)は「遺跡自体の歴史性は、揺るぎない」と断言。その価値を実証、結実するためにも、官民で、登録への戦略を再構築する必要性を説いた。

 歴史的建造物の修復など、「銀山再興」に情熱を注ぐ義肢装具メーカー、中村ブレイスの中村俊郎社長(59)も「もう一度原点に帰り、希望を捨てず、頑張りたい」。

 一方、ガイダンス施設整備の遅れなど、受け入れ態勢の不備を指摘したのは、登録をにらみ、同市温泉津町でまちづくりを進める「温泉津ものづくりネットワーク」の小川知興会長(31)。

 その上で「登録が延期されても、その時間を態勢づくりや、知名度アップに使える」と前向きな取り組みを訴えた。

2007年5月13日 無断転載禁止