石見銀山遺跡で反論書作成へ

 世界遺産登録を目指す大田市の石見銀山遺跡の学術評価で、国際記念物遺跡会議(イコモス)が「登録延期」の報告書を提出したことについて、文化庁と島根県は13日、反論書を作成し、国連教育科学文化機関(ユネスコ)などに提出する方針を決めた。同遺跡が世界遺産にふさわしい価値を持つことを再度説明し、登録の可否を最終判断する6月末の世界遺産委員会で理解を求める。

「世界遺産登録」への機運を盛り上げるための看板。地元には、厳しい勧告を機に、さらなる魅力の創出、受け入れ態勢の充実が求められる=大田市大森町
 登録延期は、世界遺産として価値証明が不十分とし、推薦書の枠組みの作り直しを迫る厳しい勧告。理由としてイコモスは、東西の文明交流の歴史に影響を与えた鉱山遺跡と証明する詳細な物証が示されていないなど5つの問題点を指摘した。

 島根県教委の藤原義光教育長は12日夜の会見で、指摘事項について「従来の審査なら要求水準を十分満たしたはず。今回は厳しい」と印象を述べ、文化庁と内容を分析し、反論書を作成。今年の登録をあきらめない考えを示した。

 反論書では、指摘内容の誤りを逆に指摘し、新たな視点で補足。遺跡の保存管理体制が確立されていることを強調する。6月23日からの世界遺産委員会を前に、月内にユネスコと委員会を構成する日本を含む21カ国への提出を目指す。

 また、島根県教委は13日、担当職員らが反転攻勢に向け対応を協議。これまで石見銀山の研究やシンポジウムに参加した国内外の鉱山遺跡の専門家ら三十数人に評価結果を伝え、石見銀山の価値を高めるための支援を要請することを決めた。

 イコモスの指摘内容(要旨)
 日本側の推薦書に対するイコモスの指摘は次の通り。
 (1)推薦書「東アジアの地域のみならず欧州社会を含めた東西の文明交流の歴史に多大な影響を与えた鉱山遺跡」
 指摘「この点を証明する詳細な物証が示されていない」

 (2)推薦書「16世紀に独特の精錬技術を応用して銀生産を軌道に乗せ、採掘から精錬に至る小規模な労働集約型経営を集積させることによって優れた運営形態を進化させ、大量で良質の銀生産に成功したことを示す極めて重要な考古学的遺跡」
 指摘「さらなる調査研究が必要」

 (3)推薦書「銀山と鉱山町、街道、港と港町など、往時の鉱山運営にかかわる土地利用の総体を明りょうに示し、山林に覆われて当時のまま保存されているところに価値がある」
 指摘「採掘活動がどのように顕著な景観を形成したのか明らかにする調査研究が必要」

 (4)推薦書「構成資産として銀鉱山と関連した街道、鉱山町や港町を国の文化財として指定・選定している」
 指摘「これらの指定・選定の範囲が不十分」

 (5)推薦書「他の鉱山遺跡との比較研究の成果を示した」
 指摘「アジア地域にある日本国外の他の鉱山遺跡との比較研究に関する情報が不十分」

2007年5月14日 無断転載禁止