ユネスコ近藤大使 「延期」逆転へ最善の努力断言

石見銀山遺跡の世界遺産登録を「最重要課題として取り組む」と決意を述べる近藤誠一大使=大田市大森町、銀山公園
 石見銀山遺跡の世界遺産登録の是非を最終決定する世界遺産委員会に向け、反転攻勢の先頭に立つ国連教育科学文化機関(ユネスコ)日本政府代表部の近藤誠一特命全権大使。「登録延期」勧告を覆すという、日本政府にとっても海図なき航海への挑戦に、力強い姿勢を示した。

 「自分の目で見て、耳で聞き、地下に眠る石見独特の技術や当時の人々の生活、森林を大事にした環境に優しい銀生産を学んだ。世界的にも珍しい普遍的な価値を確信した」。初めて同遺跡に足を踏み入れた近藤大使は報道陣に視察成果を熱く語った。

 六月二十三日からニュージーランドで開かれる同委員会は日本を含め二十一カ国で構成される。まずは、議論のベースとなる国際記念物遺跡会議(イコモス)勧告を覆すことが最重要課題だが、「ニュージーランドに行くまでの時間の九割を使い、石見の価値のアピールと外交努力に専念したい」と全力を傾ける決意を表明した。

 大使自ら現地視察を断行した最大の理由は、実体験を背景に各国大使を説き、納得させる理論武装。「石見ならではの技術で採掘から精錬まで一連の生産を行った点に、イコモスの専門家は疑問を持ったようだが、代表的な遺跡しか見えないのは、考古学的に保存を最優先させた結果。目に見えにくいから遺跡が存在しないというのは明らかな判断の誤りだ、と強調したい」と力を込めた。

 評価書の提出直後から、二十カ国の大使に直接連絡をとり、協力要請した近藤大使だが、最終審査まで残された時間は三週間あまり。「政治的外交努力より、分かりやすく価値を説明する努力が大切。委員会メンバーの大使らに、あらゆるルートを使ってアプローチし、最善を尽くす」と断言した。



 巻き返しに期待感 地元住民大使に希望託す
 石見銀山遺跡の世界遺産登録に向け、ユネスコ日本代表部の近藤誠一特命全権大使が二十八日、現地視察をしたことで、地元大田市大森町の住民に巻き返しへの期待感が広がった。長年、町並み保存に取り組んできた住民は「あきらめず協力していく」と表情を引き締め大使に希望を託した。

 同町で義肢装具メーカーを経営する中村俊郎さん(59)は同日、近藤大使が町並み交流センターを訪れた際、石見銀で造られた「萩葉古丁銀」(はぎばこちょうぎん)を披露。銀山の歴史を守ってきた住民の熱い思いを少しでも感じてほしいと、大使に丁銀に触れてもらい「大きな力を発揮してもらえる気がした」と期待した。

 今年で結成五十周年を迎える大森町文化財保存会の吉岡寛会長(77)は、大使の来訪を「前進」と歓迎。「ぜひ登録にこぎ着けてほしい。審査が厳しさを増す中、石見銀山の評価を上げてほしい」と切望した。

 家族連れで三度目の来訪になる東広島市の中学教諭、植田昌広さん(43)は「古い町並みや坑道など本物が伝わる良さをきちんと残してほしい。それが石見銀山の価値を高める」と、遺産登録に向けて、熱いエールを送った。

2007年5月29日 無断転載禁止