取材班・島根大教育学部臨時新聞部 「理想の教師」とは?

 いじめや不登校、学力低下など、毎日のように教育にかかわる問題が報道される中、教師を目指す大学生にとって「教師はどうあるべきか」は重要な問題だ。そこで「理想の教師」をテーマに県内の小学生(99人)、保護者(31人)、小学校の現役教師(36人)、そして小学校の教師を志望する島根大学教育学部の2、3年生(44人)の4者にアンケートを実施。これからの教師の在り方を探った。

 考え方に大きな違い 「思い」の伝え合いが大切

▼問題対応に関心
 「あなたが理想とする教師は」について、選択肢から3つ選んでもらった。現役教師の1位はダントツで「優しさ・温かさを持った先生」。「授業が分かりやすく、基礎や基本をきちんと指導してくれる先生」、「教育に情熱と愛情を持った先生」が続いた。保護者の1位は「厳しくしかってくれる先生」と「授業が分かりやすく、基礎や基本をきちんと指導してくれる先生」が同数で、「子どもの目線で考えてくれる先生」が続いた。

 教育実習で、褒めることで子どもは伸びると学んだ私たちにとって、教師の回答は納得できた。一方、保護者の回答からは、悪いことは悪いと学校できちんと指導してほしいと考えていることが分かる。家庭の教育力低下の裏返しか、「昔は先生からもっとしかられていた」というイメージがあるのかもしれない。

 教師と保護者で差があったのは「いじめや不登校への対応」の項目。教師は2・8%、保護者は25・8%が選んだ。保護者は何か問題が起きたときにきちんと対応してくれる先生を望み、教師はそうした問題が起きないような安心感のある学級づくりに力を入れているのではないか。いじめや不登校が増加し、保護者の関心がそこに向けられることは当然だ。これからの教師には、このような保護者の願いに対応できることが必要だろう。

▼しかる難しさ
 小学生の1位は「面白い先生」。しかし、子どもたちは先生のキャラクターだけを見ているわけではない。2位は「授業が分かりやすい先生」で、授業力や専門性をシビアに見ている。教師を目指す者として気が抜けない結果だ。また、子どもの32%が「一緒に遊んでくれる先生」を選んだのに対し、教師は1人しか選択していない点が気になった。

 教育学部生のトップは「厳しくしかってくれる先生」と「子どもの目線で考えてくれる先生」が並び、「優しさ・温かさを持った先生」が続いた。全体的に「授業」よりも子どもとのかかわりに興味や関心が高かった。「しかってくれる先生」が1位なのは、しかることの難しさを「1000時間体験学修」でのボランティア体験や実習で感じているからだろう。

▼揺るがぬ教育観
 子どもの変化についても聞いた。保護者、教師の8割が「自分の小学生のころと比べて変わった」と回答。変化の内容は「最近の子どもは家の中ばかりで遊んでいる」、「親に甘やかされている」という答えが多く、その原因を「社会の影響が大きい」と考える人が多かった。

教育実習で授業をする島根大学教育学部生=松江市大輪町、同大付属小学校
 家庭や地域の教育力の低下やIT社会への対応など、社会の変化への対応が学校に求められるようになった。しかし、わたしたちは、教育には「不易(変わらないこと)」と「流行(変わること)」があると学んだ。こんな時代だからこそ、教師は自分の中に揺るがない教育観を持たねばならない。その上で子どもの変化を見抜き、対応できる力が今後さらに必要となる。

 今回の調査では、保護者と教師の考え方の違いが思っていたよりも明らかだった。大変だが、教師が教育に対する思いを保護者に伝えること、そして保護者の思いを聞き受け入れることが、これからの教育に最も大切なことになると思った。
 (教育学部4年生・佐堂典子、藤原朱夏、矢内均、1年生・多久和広達、浜本晃久)


 1000時間体験学修 学外での教育ボランティアや教育実習、カウンセリング体験を4年間で合計1000時間体験するカリキュラム。人とのかかわりを重視し、実体験と大学での学習を関連させ、より質の高い教師の養成を目的としている。


学部紹介
 島根大学教育学部について、4年生の佐堂典子さんに4年間を振り返る形で紹介してもらった。

 この学部で学び、夢だった小学校の教員に大きく近づくことができました。教育学や教科に関する講義はもちろん、島大の目玉「1000時間体験学修」は、自分自身を大きく成長させてくれました。毎年の教育実習をはじめ、学童保育や学習支援などの活動を通し、子どもとかかわることの喜び、指導の難しさ、責任の重さを感じ、教員に必要な子どもを見る目や指導力を培うことができました。同じ夢に向かって一緒に頑張ることのできる多くの仲間と出会えたことも私の宝物です。


取材後記
 「理想の教師」という漠然としたイメージを考察することができるのか、初めはとても不安でした。先輩方の助けもあってアンケート、インタビューとなんとかまとめることができました。

 アンケートでは、予想した回答と結果のギャップに驚きました。中でも、小学生の回答で「優しい・褒めてくれる先生」の順位が低かったことは意外でした。優しさや褒められることが子どもにとって当たり前のものになったのでしょうか。教師としての優しさと厳しさのバランスについて考えさせられました。

 藤原教育長へのインタビューでは、教育長の教育に対する熱意が強く伝わってきました。「教師はものを教わることが楽しいと子どもたちが思えるようにすべきだ」と強調されていたことは非常に感慨深いものでした。「心の豊かさも必要だ」と聞き、自分自身の今後の課題になりました。
 (1年・多久和広達、浜本晃久)

2007年10月1日 無断転載禁止

こども新聞