銀山から鞆ケ浦 自然がつくる景観に圧倒

クルージング  奇岩、絶景が連なるクルージングは新たな観光資源として脚光を浴びる。往復40分。見どころは洞門くぐりと洞窟探検=大田市仁摩町馬路の鞆ケ浦
鵜島から見た鞆ケ浦  銀山まで約7キロ。入港してきた小さな漁船は銀の積み出し港だった当時の風景をほうふつさせる
鞆ケ浦  湾の奥行きは140メートル。幅は約30メートル。16世紀前半、当時日本最大の貿易港だった博多に向けて大量の銀が積み出されていった。入り口には防波堤の役目を果たした島があり天然の良港だったが、より大きな港を求めて沖泊(温泉津)に移っていった
鵜島厳島神社  銀を発見した博多の豪商、神屋寿禎が1535年に勧請(かんじょう)した。コンクリート製になってしまった社の中には弁財天が祭られている
ボベ飯と琴ケ浜  鞆の銀蔵の窓からは「日本の渚百選」「日本の音風景百選」に選ばれた鳴り砂の浜、琴ケ浜が一望できる。店主で石見銀山ガイドの会のメンバーでもある山根俊隆さん(68)の話を聞きながら食べるボベ飯は至福の時間
 銀山から鞆ケ浦(ともがうら)、博多、そして世界へ-。石見銀の最初の積み出し港で、石見銀山遺跡として世界遺産に登録された大田市仁摩町馬路の鞆ケ浦を訪れた。


 港は、大森町や温泉津町が世界遺産登録で脚光を浴びているのとは対照的に、静かなたたずまいを見せ、観光とは無縁のような雰囲気を漂わせている。しかし隣接地域には鳴り砂の浜で知られる琴ケ浜海岸、世界一の砂時計があるサンドミュージアムがある。


 そして今春、そんな観光資源と世界遺産効果を生かそうと鞆ケ浦の港から徒歩数分の場所に、食堂を併設した民泊施設・鞆の銀蔵(とものかなぐら)がオープンした。新鮮な魚介類とリアス式海岸のダイナミックな景観を満喫できるクルージングを目当てに訪れる観光客も多く、鞆ケ浦も再びスポットライトを浴びるようになってきた。


 9月下旬に訪れた鞆ケ浦で、大森の町並みや間歩を観光してきたという山口県から訪れた5人連れの女子大生たちに出会った。これからクルージングに出掛けるというので同乗させてもらった。


 定員が3、4人程度の小舟2隻に分乗。港にはわれわれ以外に人影がなく、世界遺産登録でにぎわう大森の町並みとは程遠い寂しい光景に、ちょっぴり期待外れの雰囲気が漂う。


 しかし、出航して5分もたつと景色は一変した。


 日本海の荒波によるリアス式海岸には大自然がつくりだした洞門や洞窟(どうくつ)、絶壁がパノラマのように展開する。波に揺られる舟で、いくつもの洞門を潜り抜けながら洞窟の中を探検する。


 天を仰ぐように女子大生たちは「わー、すごい」と連発しながらカメラのシャッターを切り続ける。その傍らで船長の横田弘次さんが「ダルマ形の岩は古竜明神のご神体」などと解説を続ける。2日間の日程で石見銀山遺跡を楽しんだ上田元美さん(21)は「夏休みのよい思い出になりました」と話した。


 鞆ケ浦から銀山まで直線距離で約7キロ。海上から眺めると、銀坑跡がある仙の山は連なる山々の先にあるという。その中にソーマ銀を運ぶ人たちや牛馬の姿を見たような気がした。



2007年10月12日 無断転載禁止