修学旅行で取材体験学習 出雲・浜山中2年生

 NIE実践校である出雲市立浜山中学校(出雲市松寄下町)2年生の生徒たちは昨年10月に行った京阪神修学旅行で、「命」「福祉」「平和・異文化」「食と農」の4つのコースに分かれ、現地で取材体験学習を行った。神戸では阪神淡路大震災の被災者を訪ねたり、京都では日本の伝統食を守る人たちと交流したりするなど、テーマに沿った取材活動を試みた。学習を通じ、生徒たちは何を考え、何を学んだか。自ら執筆した記事と写真で紹介する。


「命」コース 震災被災地の「真実」知る

神戸市内で「1・17希望の灯り」の白木利周さん(右から2人目)から被災跡の説明を聴く生徒たち
 「命」コースは、6つの班に分かれて、1・17希望の灯り、FMわぃわぃ、よろず相談室、元瓦木中学校教諭の小川嘉憲さん、拓人こうべ、舞子高校環境防災科の6カ所を訪ね、阪神淡路大震災にかかわった人々を取材した。

 「1・17希望の灯り」取材班は、震災で息子さんを亡くした白木利周さんの案内で被災地跡やモニュメント巡りをし、FMわぃわぃ取材班は社長の比々野純一さんやベトナム人ツェットさんから「倒壊した家屋から外国人が物を盗み出しているというデマが流れた」「避難所でベトナムに帰れと言われた」など、被災当時8万人いた外国人の状況とその支援活動について話を聞いた。

 よろず相談室取材班は、被災者が住む復興住宅を訪ね、独居老人の孤独死が年間70人近いという悲惨な現実を知った。

 小川さんを取材した班は、避難所となった学校で生徒がトイレ掃除などボランティア活動に懸命に取り組んだ様子を聞いた。

 拓人こうべ取材班は、車いす生活をしている福永年久さんや障害者支援に入った稲本須磨子さんから、障害者が出合った困難や障害者自らが仲間を救う活動を行った話を聞いた。日本で唯一の環境防災科がある舞子高校を取材した班は、OBや生徒の被災体験や環境防災科の活動について話を聞いた。

 このように、各班の生徒一人一人が、震災からさまざまな真実を学んだ。この取材をもとに、震災に触れた「自分」にしかない視点で生徒一人一人が新聞を作り、それぞれの思いをつづった。

 取材を終えた生徒たちは、13年前の事実を語り継いで意味のあるものにしようと、震災から13年目を迎えた今月、作った新聞を地域のショッピングセンターで配布したり、実際に避難所で起きたジレンマをもとに、自分たちが企画・運営をした避難所体験や、1年生教室に出向いた「命の出前授業」を行った。


「平和・異文化」コース 安全、平和の尊さ実感

京都エコロジーセンターで鬼丸昌也さんから地雷の話を聞く生徒たち
 「平和・異文化」コースは、京都エコロジーセンターで、昨年、浜山中で講演した少年兵支援や地雷撤去活動を行う「テラ・ルネッサンス」理事長の鬼丸昌也さんへのインタビューや、“バーチャルスタディーツアー”と題した、地雷原の恐ろしさを自ら体験する企画に参加した。生徒は鬼丸さんの話や、バーチャルツアーを通して“安心して生きることができる喜び”をかみしめ、何よりも“世界平和”を強く望むようになった。

 積極的に質問や意見を投げ掛ける生徒に対し、鬼丸さんは「身近なことに関心を持つと、周りの人や世界のことが違って見え、自らの力で助けたくなる」と話した。そんな鬼丸さんの力強い意志を受け、生徒は自分にとって平和とは何かを考え、今、自分たちに何ができるかを考えた。

 ある生徒は、鬼丸さんから聞いた“平和と現実”について、「ただ何となくしている当たり前のことが、いつも安心してできることに、もっと感謝しなければならないと思った」と述べた。

 “バーチャルスタディーツアー”では、今現在でも地雷を作ったり所有している国があるという現実をかみしめ、ある生徒は「今の私には、地雷がある国に直接行き、地雷撤去をすることはできないが、地雷を所有している国に、地雷撤去を訴えることはできる。一刻も早く世界中の地雷がなくなるように、まずは多くの人に関心を持ってもらいたい」と語った。

 生徒らは対人地雷禁止条約に参加していない国に向けて参加を求めるメッセージを送った。


「食と農」コース 長年の知恵と工夫で伝統食守る姿に感心

京都テルサで「日本の伝統食を考える会」のおばちゃんたちと京風ちらしずしを作る生徒たち
 「食と農」コースは京都テルサで午前中、生徒たちが漬けた梅干しと出雲の伝統食であるぜんざいを持参し「日本の伝統食を考える会」のおばちゃんたちと日本の伝統食について交流を深めた。

 「考える会」のおばちゃんたちは、生徒たちに「日本の農・漁業をなくしてはいけない」などと、自分たちの体験談や今後の目標を熱く語った。

 その後、京都のおばちゃんと一緒に京都の伝統食「京風ちらしずし」と「水菜のからしあえ」「ゆばのすまし汁」を作った。調理に手間取る生徒たちに、おばちゃんたちは厳しくも優しくアドバイス。おばちゃんたちの長年の知恵に感心させられながら、生徒たちは料理を楽しんだ。

 午後は、キュウリとトマトを作る専業農家奥山さん宅や宇治茶を栽培する中井さん宅を訪ねた。奥山さん宅では「キュウリが甘い!」と声をあげる生徒に、50年にわたって研究を続けてきた奥山さんが野菜づくりにかける情熱と工夫を語った。

 今月、食と農コースでは自分たちが漬けた梅干しを使った料理メニューを考案し、調理を試みた。考案されたメニューのうち、「梅干しとジャコ入りおにぎり」と「梅干し入りサラダ」は、阪神淡路大震災を記念する1月17日の「おにぎりの日」に地元のショッピングセンターで販売され、またたく間に売り切れた。


「福祉」コース 障害者に優しいバリアフリー学ぶ

障害者スポーツセンターで水谷裕さん(右から2人目)から卓球バレーを教わる生徒たち
 「福祉」コースの生徒は、午前中、京都市にある障害者スポーツセンターで、職員と一緒に誰でも楽しめるスポーツを体験した後、午後、京都市内にあるバリアフリーを探した。

 体験したスポーツは「卓球バレーボール」。ルールは通常のバレーボールを卓球台の上でピンポン球を使って行う。このようなスポーツを通して、センターに通う障害者は新たな自分を発見し明るく前向きに生きるようになった、という。

 次に、職員とセンター内のバリアフリーを見て回った。図書室には点字の本や文字を大きくする機械があった。また、床には目が見えなくても足の感触で部屋の入り口が分かるようにマットが敷かれているものもあった。

 これらのバリアフリーを紹介しながら職員の水谷裕さんは「自由に動けない社会の現状を変えていきたい」と述べ、また、これからの未来を作っていく若者に約束してほしいことは「目に見えない障害をなくすこと」だと話した。目に見えない障害とは、差別やいじめなど「心のバリアー」のことだ。自分より弱い立場の人に優しく接することが、これからの未来を明るくするキーワードとなっていくはずだ。

 午後、生徒らは6班に分かれて、京都市内にあるバリアフリーを探し、国際文化観光都市・京都市はバリアフリーが充実しており、障害者にとても優しい街だということを発見した。

2008年1月28日 無断転載禁止

こども新聞