(2)板井原集落・鳥取県智頭町 生活や風土山村の原風景

降り出した雪にすっぽりと包まれた板井原集落。山村の原風景を今に伝えている=鳥取県智頭町
 「板井原集落」 鳥取県八頭郡智頭町の中心地から北東約3キロの山間部に位置する。現存するかやぶき住宅などの建造物群や集落を囲む山林、点在する田畑などの生活環境が一体となった歴史的景観を形成している数少ない山村集落。2004年に鳥取県伝統的建造物群保存地区に選定された。現在、70代を中心に15世帯、約20人が生活を営む。年間1万人の観光客が都会の喧騒(けんそう)を離れ、この地を訪れる。
 冬ざれた風景が目に映った。寒さが本格化した1月中旬。どんよりとした鉛色の空と、雪化粧した山並みを背に点在する古民家のモノクロームの世界が広がる。辺りが静寂に包まれるとともに、昭和の時代にタイムスリップした錯覚に陥った。

 路線バスの通わない交通過疎の山間地に位置する板井原集落(鳥取県八頭郡智頭町)。集落の主な家屋は板井原川の左岸にたたずむ。降り積もった雪に足を取られながら集落を歩くと、手押し車が通れる程度の幅の狭い、細い道が家々を結んでいることに気付く。

 民家、土蔵など130棟の建物の大半が築50年を経過し、270年にもなるかやぶきの住居も。生活や風土に根差した山村の原風景を見ているかのようだ。

 川沿いで板井原集落保存協議会会長の原田巌さん(76)が出迎えてくれた。約100年前の民家を修築した喫茶店「野土香(のどか)」に案内され、いろりを囲んだ。使い込まれた建物には近代建築にはない独特の味わいがある。窓の外を眺めると、木々の枝に雪が積もり、ふっくらとした白い花を咲かせていた。

 いろりのある空間が温かく、会話が弾む。人間臭さが漂う土地柄がうれしい。「悪路や豪雪などから集団移転で消滅した他の集落をみてきたが、ここ(板井原集落)での生活に苦労は感じない」と原田さん。畑に出て土をいじり、自然の恵みに感謝し、自然と調和した自給生活は得難いものということか。

 農作業のない冬場は集落から離れる人が多く、この時季はわずか4世帯の家に明かりがともる程度だ。新緑の季節になると、灯ともしごろには家々の煙突から風呂炊きの煙が立ち上り、本来の生活の息遣いが実感できるはず。近づく春に思いを巡らせた。

2008年2月4日 無断転載禁止