(3)宍道湖のシジミ漁 水の都の豊かさ象徴

まばゆいばかりの陽光の中で行われるシジミ漁。湖面での穏やかな光景に心が安らぐのを感じた=松江市打出町沖の宍道湖
 「宍道湖のシジミ漁」 宍道湖のシジミ漁が盛んになったのは昭和40年代。漁に携わっているのは宍道湖漁協の組合員。操業は月、火、木、金曜日の週4日。全国のヤマトシジミの漁獲高の40-45%を宍道湖産が占める。
 「ポンポンポン」。船外機の軽快なエンジン音を湖面に響かせ、朝の宍道湖をシジミ漁の漁船が行き交う。水の都・松江市を代表する風物詩として市民に親しまれている光景だ。

 冬の穏やかな午前、湖岸に足を運ぶと、この時季には珍しく湖面に陽光が照りつけ、まぶしいほどの光の反射の中に、操業する小舟のシルエットが浮かび上がった。

 2005年に中海とともにラムサール条約に登録された宍道湖は、淡水と海水が入り混じる汽水湖で、周囲が約45キロの日本で7番目に大きい湖だ。シジミは大型のヤマトシジミ。肉質もよく、宍道湖七珍の一つに数えられる。みそ汁の具などに用いられ、松江の代表的な味覚として全国的に知名度も高い。

 舟の上で鉢巻き姿の男性が鋤簾(じょれん)と呼ばれる特殊な漁具を操り、湖底からシジミをかき上げている。小さなシジミは採らないよう鋤簾の目を規制し乱獲を防いできた。シジミ漁は、豊かな動植物が生息する宍道湖の環境が守り育てられてきた象徴でもある。しかし、06年夏の水害以降、大型のシジミが激減し、回復の見通しがなかなか立たず関係者を悩ませている。

 シジミ漁に携わる漁業者は現在294人。50、60歳代が中心だが、10代から30代の若手も多く、後継者が確実に育っている。

 国家公務員から転職した青山実さん(52)=松江市朝酌町=もその一人。「父が体調を崩し、定年前に継いで漁師になった。父の姿を見て知っていた世界だったが、なかなか大変ですわ」。見た目以上に体力と経験が必要だが、表情にはシジミ漁師としての自負がのぞく。

 風が出てきた。舟上に黒い影が揺れる。まだまだ寒さが厳しい季節だが、陽光の中の情景はなぜか優しく目に映る。しばし見とれてしまった。

2008年2月25日 無断転載禁止