(5)長浜人形(NAGAHAMANINGYOU) 温かみと気品ある表

切れ長の目に、細く伸びた眉の「清姫」は女物を代表する長浜人形。この「清姫」は戦後間もなく制作されたもので、今年1月初旬に浜田市民から寄贈された=浜田市郷土資料館蔵
内裏びなも長浜人形を代表する一つ。清姫と同様な手法で描かれる顔の表情は気品が漂う=浜田市長浜町、日下義明さん方
 長浜人形 浜田市西部の長浜地区で江戸時代中期から作られている。北前船の寄港地であった関係から、浜田藩が地場産業として奨励したこともあり、盛時には100人以上が制作に従事し
 切れ長の優しい目、細く伸びた眉(まゆ)、気品のある鼻筋と小さな口元、すらりとした姿形。安珍・清姫伝説で知られる「清姫」に代表される女物こそが、長浜人形の典型とされる。

 その美しい「清姫」に、浜田市郷土資料館(浜田市黒川町)で出合った。「面描きの確かさ、フォルムの持つリズム感、きらびやかな描彩の調和が結集している」との、関西郷土玩具研究会の評価は大げさではなかった。

 長浜人形は、地元産の粘土を使った土人形。素焼きにした後、真っ白な胡粉(ごふん)をかけ、彩色を施す。江戸中期の明和年間(一七六四-七一年)に作り始めたとされ、石見の根付けで名高い清水巌(富春)に学んだ永見房造が、「巌」の字をもらって「永見巌」と号し、制作を広めた。

 同資料館は、全国の土人形愛好家の間で人気の高い長浜人形の散逸を防ぐため、一九九〇年から収集を開始。小松原豊館長は「市民を中心に約三百点が集まった。清姫もその一つ」と話す。

 生産地の長浜町(浜田市)では現在、二軒が伝統を守っている。このうちの一つ、日下義明さん(56)方では年に一回、十一月に二日間かけ約三十種を焼き上げる。「大きさにもよるが、彩色には一体で二、三日かかる。主に水干絵の具を使う」と日下さん。現在は、月遅れの桃の節句と端午の節句を控えて、内裏びな、天神、坂田公時などの彩色作業に当たる。

 長浜人形は清姫や白拍子、花持ち官女などの女物、男児用の獅子かつぎ、加藤清正、海上守護神の住吉など実に種類が多い。石見安達美術館(浜田市久代町)では約五百点を収蔵。佐々木利枝子館員は「各地の土人形と比べ、長浜人形は軽くて、薄いのが特長。まるで紙で作ったようでしょう」と誇らしそうだ。

 長浜人形の持つ温かみと、気品ある表情は、石見という風土が醸し出す優しさのたまものではなかろうか。そんな気がした。

2008年3月17日 無断転載禁止