世界遺産委参加の大国晴雄(大田市教委教育部長)に聞く

「石見銀山遺跡の価値を来訪者らに伝える努力が一層大切になる」と話す大国晴雄教育部長=大田市大田町、大田市役所
 カナダのケベックで十日まで開かれ、岩手県の「平泉の文化遺産」の登録延期を決めた国連教育科学文化機関(ユネスコ)世界遺産委員会。昨夏、石見銀山遺跡の世界遺産逆転登録に尽力した大田市教育委員会の大国晴雄教育部長が同委員会に参加し、審議に立ち会った。世界遺産をめぐる最新の動向と石見銀山遺跡の今後のあり方を聞いた。

 -審議の印象は。
 「新規登録で北朝鮮とインドネシアの物件が続けて登録延期となるなど、全体的に非常に厳しいと感じた。議事も、増え続ける世界文化遺産の抑制ありきの運営で、ユネスコの諮問機関・国際記念物遺跡会議(イコモス)が出した勧告を尊重する大きな流れがあった」

 -平泉の審議は。
 「イコモスが『浄土世界がよく分からない』とした指摘と価値証明の不足を覆せず、勧告通り登録延期となった。ただ、四十分も審議したのは平泉だけ。ユネスコ日本政府代表部の近藤誠一大使の努力だ。素晴らしい遺産という意見も多く出て再挑戦に理解が得られたことが成果。落選ではなく、保留だ」

 -石見銀山遺跡の今後については。
 「今委員会で、既に登録された遺産でも景観などが悪化すれば取り消すことが決まった。ペルーの空中都市・マチュピチュについて観光による圧力で遺跡が壊れる問題も議論された」

 「石見銀山でも、登録は永遠ではない。世界遺産の基礎は、人類共通の財産として保全し未来に継承することと一層強く感じた。観光が目的でも目標でもない」

 「パークアンドウオークなど全体的な流れはうまくいっているが、銀山を訪れる来訪者、市民、県民に世界遺産の基礎について合意形成する努力をしないといけない。その際に、東西の貴重な文化経済交流をもたらしたなど、世界遺産として石見銀山が持つ普遍的な価値を伝え、理解してもらうことが欠かせない」

2008年7月14日 無断転載禁止