(11)緩和ケア/心身両面の苦痛和らげる

緩和ケアの役割について話す安部睦美緩和ケア・ペインクリニック科科長
松江市立病院緩和ケア・ペインクリニック科 安部睦美科長

 がんによる痛みやつらさを和らげる緩和ケアの取り組みが広がっています。適切ながん医療を受けるためには、治療だけでなく緩和ケアへの理解も深めることが大切です。松江市立病院緩和ケア・ペインクリニック科の安部睦美科長に緩和ケアの役割や内容について聞きました。


 -緩和ケアの考え方は。

 「がんになったときの身体の痛みや精神的な心の痛みを和らげ、自分らしく生きるために支援していくのが緩和ケアの目的です。がんそのものへの治療と緩和ケアを並行して行うのが、がん医療です。現在、がんは日本人の死因の一位となっており、緩和ケアは終末期医療というイメージが残っていますが、がんを治すにしても、付き合っていくにしても、初期からの緩和ケアが必要です」

 -がんには、どのような苦痛が伴いますか。

 「がんに伴う苦痛は四つあります。精神的な苦痛は、がんになったことや再発への不安や恐れなどです。社会的な苦痛は、がんになったことで会社や家庭での役割、社会的地位が失われるのではないかという気持ちから生じます。体が感じる身体的な苦痛に加え、スピリチュアルな苦痛は自分の存在や価値観に対する心の痛みで、精神的な苦痛より深いと言えます」

 -緩和ケアの態勢は。

 「当院では、一般病棟で緩和ケアを提供する緩和ケアチーム、緩和ケアを専門に行う緩和ケア病棟、緩和ケア外来を整えています。緩和ケア病棟では、医師や看護師、薬剤師、栄養士、理学療法士、音楽療法士、ボランティアなどのメンバーがチームをつくり、個別の症状に合ったケアを行います」

 -緩和ケアの内容は。

 「がんの病期で治療と緩和ケアのバランスを変えていきます。身体的な苦痛は医療用麻薬を中心とした薬物療法が主体になります。精神的な苦痛に対しては、寄り添って話を聴くことが大切で、気分転換に音楽療法士が力を発揮することもあります。リンパマッサージや口腔(こうくう)ケアなど、緩和ケアの内容は多岐にわたります。不安から痛みや呼吸困難が生じる場合があるなど四つの苦痛は関係しているため、心と体の両面から総合的なケアを行います」

 -患者家族への対応は。

 「わたしたちは、がんになった人の人生の一部にしかかかわりませんが、家族には長い歴史があります。家族関係も踏まえた上で、患者と家族のケアに当たります。家族ともコミュニケーションを図り、病気や緩和ケアへの理解を深めてもらうことが大切です」

 -緩和ケアをさらに広げるために求められることは。

 「緩和ケアは患者中心の医療を進めるために欠かせない分野で、専門家を育てることが急務です。患者側では、治療と一緒に緩和ケアを受ける権利があることや内容について正しい知識を持ってほしいと思います。将来、がんになったときにどうしたいかを、元気なときに考えるのもよいことです」

2008年8月27日 無断転載禁止