(17)旧大社駅 門前町彩る圧倒的存在感

旧大社駅の駅舎内の天井は高く設計され、灯籠形の和風シャンデリアが大正ロマンの情緒を漂わす=出雲市大社町北荒木
出雲大社を模した和風建築の旧大社駅。堂々とした風格が訪れた人を魅了する=出雲市大社町北荒木
 「風格」という言葉は、このたたずまいのためにあるのではないだろうか。社殿と見まがう左右対称の和風建築は、実に堂々としている。かつて出雲大社の門前町の表玄関として、多くの出会いや別れの舞台となった駅舎は、八十年の歳月を経た今でも圧倒的な存在感で訪れる人の心を揺さぶる。

 駅舎正面に立つ。出雲大社を模した木造の建物は、中央屋根部分の両端に鴟尾(しび)、屋根の合掌部分には懸魚(げぎょ)が取り付けられ、荘厳な和風建築の趣が漂う。十八年前のJR大社線廃止後、駅舎を整理する中で、偶然に発見された一九二三(大正十二)年の大社駅新築工事上棟式の棟札から、設計者は丹羽三雄(旧神戸鉄道管理局)と分かったが、建築界の先駆者で、日本建築史を創始した伊東忠太が関与したとされるデザインが各所に施されている。

 八二(昭和五十七)年に、「日本の建築200選」に選ばれた駅舎の玄関には、「大社駅」の表示板が当時のまま掲げられ、駅舎内に入ると高く設計された天井の灯籠(とうろう)形の和風シャンデリアが目に入る。まさに、大正ロマンの薫りが全身を包み込むようだ。

 昭和初期まで、待合室は正面に向かって右手に二等待合室、中央の広いスペースを一般待合室に分けて使われた。一般待合室の正面には旧出札口で、観光案内所として使われた厨子(ずし)風の建物があり、左手の切符売り場は駅員らが着用した制服が展示されている。出雲大社の大祭礼が営まれる際に参向した皇室からの勅使が休憩できる貴賓室も設けられ、格調の高さを感じさせる。

 今は駅としての機能は失ったものの、社殿風の建築様式、大正ロマンの造形美に触れようと足を運ぶ観光客は多い。山口県下関市から訪れた二人の女性は「以前、この駅を利用したことがあり、懐かしくて来てみた。いい雰囲気ですね」と話した。

 戦後のピーク時には、年間の団体臨時列車が二百八十本を数え、一日平均の乗降客数は四千人、発着貨物は百八十トンにも上った。大阪や京都、東京へ向けての急行列車も運行され、多くの人々とともに時代の流れを見つめてきた。これからも、出雲大社の門前町を彩るシンボルであり続ける。


 旧大社駅 大社線の開通に伴い、1912(明治45)年6月1日に開業。出雲大社の参拝客が飛躍的に増加した。駅舎は24(大正13)年に改築された2代目で、90(平成2)年にJR大社線の廃止とともに廃駅となった。2004(平成16)年に国の重要文化財に指定され、現在は駅舎内でレトロ鉄道展などのコーナーが設けられ、一般開放している。

2008年12月8日 無断転載禁止