(18)田部家の土蔵群 鉄文化隆盛の証し今に

降り積もった雪と溶け合う白壁の土蔵群。山林王として全国に知られた田部家の歴史を今に伝えている=雲南市吉田町
吉田公園から望む吉田の町並み。降りしきる雪にすっぽり包まれていた
 雪の降りしきる元日の朝、たたら製鉄で栄えた中国山地にある雲南市吉田町の田部家の土蔵群を訪れた。二十棟もの土蔵が雪にけむり、その壮観な眺めに圧倒された。日本屈指の山林王として名をはせた田部家の歴史を物語る貴重な地域遺産である。

 田部家は室町時代に製鉄業を始め、江戸時代には松江藩九鉄師の筆頭鉄師を務めた。江戸から明治末期の最盛期には、全国需要の七割にも及ぶ鉄を生産していたという。

 繁栄の一端を今に伝えている蔵は、「文政蔵」「宝永蔵」というように、その時代ごとの名前が付けられているものもある。なまこ壁のどっしりとした土蔵が連なる光景は、鉄山師として名をはせた当時をほうふつとさせる。

 鉄で栄えた町を一望しようと降り積もった雪をかき分け、近くの吉田公園に登ってみた。見下ろすと土蔵群は銀世界に溶け込み、静かなたたずまいを見せていた。

 また、田部家では現在雲南市が事業主体になり、文化庁や島根県の指導を受けて、島根大学などの研究チームが蔵などに残る膨大な古文書の整理、解読を行っている。何が見つかるか楽しみだが、山林王が築いた歴史、奥出雲のたたら製鉄文化をひもとく貴重な史料が、全国的な遺産として脚光を浴びるはずだ。そして、この地域の発展の足掛かりになることを期待している。


 雲南市吉田町では、近年、「地元の歴史を広く紹介しよう」との機運が高まっている。元庄屋屋敷を改装した宿泊施設「若槻屋」を拠点に、住民らが「ふるさと案内人」として熱心に活動している。田舎ツーリズムの体験客や観光客などに、彫刻家の内藤伸、菅谷高殿、鉄の歴史博物館、鉄の未来科学館など吉田の魅力を紹介している。土蔵群も観光ルートの目玉として人気が高い。

2009年1月19日 無断転載禁止