3:遺産の分割

井上晴夫弁護士
遺言なければ民法規定で



 先日亡くなった会社経営者のAさんには、自社の株式六百株、本社の敷地、その他不動産、預貯金などの財産がありました。一方、会社の債務の保証人として四千五百万円の債務を負っていました。Aさんの妻はすでに他界し、会社の後継者であるBさんを含め相続人として三人の息子がいますが、遺言を残していませんでした。遺産をどう分割すればよいでしょうか?

 人が亡くなれば相続が開始し、亡くなった被相続人の財産を、相続人の間で分配することになります。遺言が残されていれば、基本的にその遺言に従って分配することになりますが、遺言が残されてない今回の場合は事情が異なります。預貯金など分割できる可分債権は、民法の規定に従って相続人に相続されます。今回は、息子である三人の相続人が、Aさんの預貯金を三分の一ずつ分配することになります。

 株式や不動産など、分割できない不可分の債権は、いったん相続人の共有のものになり、相続人間の話し合いをへて、各相続人に分配されます。

 株式や不動産など単純に分割することができない財産を巡って、相続人間で争いになるケースが多く見られます。このような事態を招かないためにも、Aさんは遺言を作成しておくべきでした。

 特に、Aさんのように会社を経営している場合、事業用資産の分割には注意が必要です。例えば、Bさんの保有株式が過半数を割り込んでしまうと、会社経営が安定せず、会社の信用を落とすことにもなりかねません。

 また、Aさんは四千五百万円の負債を負っており、その処理も必要になります。金銭債務については、民法の規定に従って相続人に相続されます。今回の場合、息子である三人の相続人が負債総額の三分の一ずつを相続することになります。

 仮に、Bさんが「全債務を承継する。その代わりに事業用の資産を承継する」などといい、相続人間で債務について合意しても、その合意は銀行などの債権者を拘束しません。債権者の了解が得られて初めて、合意は債権者に対しても効力を生じます。

共同通信社 2009年2月2日 無断転載禁止