(9)胃の切除と貧血/ビタミンB12の欠乏に原因

松江赤十字病院血液内科 遠藤章部長
相 談

 7年前に胃がんの手術を受け、胃をすべて切除しました。最近、体がだるく、手足のむくみが目立ってきました。階段を上がる時は、息が切れて苦労します。がんが再発したのか、と心配しています。  (60歳、男性)


アドバイス

松江赤十字病院血液内科 遠藤章部長

 倦怠(けんたい)感やむくみ、息切れは、貧血の主な症状です。一般にはあまり知られていませんが、手術で胃を大きく切除した場合は、数年たって貧血になることがあります。このことを知らず、体調の変化はがんの再発ではないか、と心配する人もみられます。

 貧血は、血液中の赤血球に含まれるヘモグロビン(血色素)が減った状態で、さまざまな原因によって起こります。

 このうち、胃の切除後に起こる貧血は巨赤芽球性貧血と呼ばれます。血液細胞をつくるにはビタミンB12が必要で、胃の粘膜から分泌される内因子がビタミンB12の吸収を助ける働きをします。胃を切除すると内因子が出なくなるため、ビタミンB12が徐々に欠乏していき、赤血球になる細胞の分裂が進まずに通常より大きくなってしまいます。その結果、正常な赤血球やヘモグロビンが減少して貧血になります。

 血液検査で赤血球の大きさやビタミンB12の量を調べることで診断がつきます。1~2カ月に1回、ビタミンB12を注射すると貧血は改善されますが、生涯にわたって注射が必要な場合もあります。

 巨赤芽球性貧血の状態を長期間、放置すると神経障害が起こることもあるため、適切な治療が必要です。胃を切除した人は、数年たって貧血になる可能性があることを知っておき、年に1回程度は血液検査を受けて数値の変化を把握することが大切です。

 貧血は、一般的に若い女性などの鉄欠乏性貧血が多くみられます。普段の食事で偏食をせず、栄養バランスよく食べることが重要です。貧血には重い病気が隠れていることもあるため、気になる症状があれば早めに受診しましょう。

2009年9月16日 無断転載禁止