<5>修復重ねた多様な石垣

西ノ門跡近くの石垣。「野面積み」の手法だが、岡崎雄二郎顧問によると、自然石ではなく割石を積み上げた「割石積み」という=松江市殿町
石垣の角の部分に見られるのが「算木積み」。昭和30年代に改修されている=松江市殿町
 城郭の石垣は、一般に「野面(のづら)積み」「打ち込み接(は)ぎ」「切り込み接ぎ」の3種に大別される。石の加工度合いが違い、戦国末期から近世初頭にかけて変化してきた。

 松江城(松江市殿町)の特徴について、石垣研究を続ける市歴史資料館準備室の岡崎雄二郎顧問は「原初的な野面積みから切り込み接ぎまで、多様な形態が見られる」と話す。「堀尾吉晴-松江城への道」(山根正明著、松江市教委刊)で確かめると、本丸や二ノ丸など各所の石垣はそれぞれ姿が異なる。

 本丸の西側や北側などに見られる「野面積み」は、自然石をそのまま積み上げた形態。堅固だが傾斜が緩やかで、敵にとっては手足をかけて登りやすい。他方、本丸の南側や二之丸下之段などにある「打ち込み接ぎ」は、自然石を割って一部を加工した割石を積み、すき間に石を詰めている。

 もっと進化した「切り込み接ぎ」は、本丸祈祷櫓(きとうやぐら)下や馬溜(うまだまり)東側などで確認できる。割石を全面的に加工し、すき間なく積んでおり、急こう配の整然とした外観だ。このほか角の積み方として、石の長辺と短辺を角の両面に交互に配置し、強度を高めた「算木(さんぎ)積み」もある。

 なぜ松江城の石垣は、こんなに多様なのか? 「築城後の崩壊などに伴い、修復を繰り返してきたのでは」と岡崎顧問。実際、千鳥橋東側や中櫓下など、同じ並びの石垣なのに石の種類や積み方が異なる個所が複数あり、推測を裏付ける。武骨で物言わぬ石垣だが、よく見れば使われた石の一つ一つにも表情がある。

2010年7月19日 無断転載禁止