第4回中国地区NIEフォーラム 松江市立乃木小・乃木公民館

新聞記者をゲストティーチャーとして行われた4年5組の公開授業
 中国地方のNIE(教育に新聞を)関係者が一堂に集う「第4回中国地区NIEフォーラム(島根大会)」(中国5県NIE推進協議会、島根県NIE推進協議会、島根県NIE研究会主催)が7月2日、松江市の乃木小学校と乃木公民館を会場に開かれた。「子どもがつくる楽しいNIE授業」をテーマにした大会には、中国地区の教員をはじめ、教育、新聞関係者約120人が参加。公開授業を受けた授業協議、実践発表が行われ、活発な討議や意見交換も行われた。先生、児童の感想などを通し、大会の模様を紹介する。


テーマ「新聞記者になろう」 藤岡信一教諭(4年5組担任)
  3つのポイント大切に

 「新聞記者になろう」という課題設定に対して、児童が、自分がなろうとする新聞記者のイメージをしっかりと持つことが大切であると考え、新聞記者の松村健次さん(山陰中央新報社)から直接話を聞くことで、その思いや専門性に触れる時間を設けた。

 児童は、松村さんが記者として大切にしていると話された「正しく、早く、分かりやすく」というポイントをしっかりと受け取り、以後の活動の中でもこの言葉が頻繁に聞かれた。このポイントは、単なる言葉ではなく、松村さんと一緒に学習した経験とともに、これからも児童の心に残っていくものになったと思う。

 松村さんに来ていただいたおかげで、児童の新聞に対する興味、関心が確実に高まった。また、記事の「書き手」の存在も意識するようになったと思う。今回の実践を通して、児童の発達段階に応じて、新聞や新聞記者の方を活用していくことの有効性や可能性を感じた。


児童の集中力を評価
コーディネーター 佐藤友章氏
 (島根県NIEアドバイザー、元山陰中央新報社NIE担当)

 「新聞記者になろう」という課題のもと、児童が「見出し」の付け方について松村健次記者の体験談を交えて学んだ公開授業を受けての協議には約40人が参加、活発な意見交換が行われた。

 そろって評価が高かったのが、藤岡教諭と児童との信頼の深さを感じさせる雰囲気や児童の集中力。穏やかな口調の松村記者については「教員が向いているのでは…」との賛辞?もあったほど。

 鋭い指摘もいくつかあった。サッカーW杯紙面を例にした、導入部での松村記者の版の切り替え説明にも「指導テーマの見出しのことを意識してほしかった」との注文は、教壇は初めてという記者にはやや高過ぎる要求としても、「ポイントを押さえる板書をすればより効果的」「(公開授業ということで緊張もあっただろうが)発言の声が少し聞きにくかった」「グループ学習を取り入れてみたらどうか」といった意見は貴重だった。


「第4回中国地区NIEフォーラム」の公開授業で、新聞から「木偏」の漢字を一生懸命探す児童たち=松江市浜乃木5丁目、市立乃木小学校
◆児童の感想◆

新聞作りは大変
 木村朝陽くん 松村さんが話された中にあった「正しく」「早く」「分かりやすく」の三つのポイントを使って、実際に新聞を作ってみました。僕たちも新聞を作ってみて、新聞記者の方の仕事が大変なことが分かりました。

毎朝読むように
 沓内かのこさん みんなで新聞記事を書きましたが、松村さんが教えてくださったことを思い出して書きました。私は水泳教室のことを書きました。松村さんが来てくださった日から、毎朝新聞を読んでいます。



テーマ「新聞を使って楽しく漢字力アップ」 門脇健一教諭(3年1組担任)
  漢字探しの意欲高まる

 新聞を読んだ経験がなく、新聞は難しくてつまらないというイメージを持っている児童が多いというクラスの実態を踏まえ、普段から新聞に親しみ、新聞の楽しさ、良さに気付かせる活動を多く取り入れてきた。

 フォーラムの公開授業では、「木偏」の漢字を新聞から探す活動を行った。漢字探しに児童は生き生きと取り組み、見つかるたびに歓声が上がった。教科書では出てこないたくさんの種類の漢字に出合い、発表し合う中で、木偏の付く漢字は木や、木の道具に関係があることを発見することができた。違う漢字探しもしてみたいという、さらなる意欲も高まった。3年生にとって、新聞を学習に取り入れるのは難しいのではないかという思いは、杞憂(きゆう)に終わった。

 今回の授業を通して、児童の新聞に対する興味は高まり、読んでみたいという思いが強まってきている。授業協議でいただいた意見を参考にしながら、今後も新聞をうまく活用し、実りある学習を引き続いて実践していきたい。


家でも楽しみながら
コーディネーター 松浦和之氏
「新聞を使って楽しく漢字力アップ」をテーマに行われた3年1組の公開授業
(NIEアドバイザー、隠岐教育事務所指導主事)

 中学校、高校でのNIEへとスムーズに展開していくために、小学校段階で大切にしたいのが「楽しく活動する」と「家族の協力を得て」ということだと考えています。

 今回3年生で公開された「きへん」の漢字探しの学習は、身近なところにある新聞を使って楽しく活動でき、子どもたちは「また、新聞の中から見つけてみたい」という思いを持つことができました。新聞を見ながら、他の「へん」を喜々として探す子どもたちの姿が目に浮かびます。

 また、「家でも家の人と一緒にやってみたい」という感想もありました。家族で一つの新聞を囲み、親子で漢字探し競争をしている光景が目に浮かびます。

 学校で、そして家庭で楽しみながら学習することのよさを、今回の授業で感じることができたのではないでしょうか。これらの実践がさらに広がっていくことを願っています。


◆児童の感想◆

次は「にんべん」
 川津 葵さん 新聞には漢字がいっぱいあったから、「きへん」の漢字はすぐ見つかりました。きへんの漢字はたくさんありました。楽しかったので、また新聞を使ったじゅぎょうがやりたいです。次は「にんべん」を見つけたいです。家でもやってみます。

全ぜんあきない
 梅木 亨くん ぼくは、新聞を使ったじゅぎょうをして、新聞は楽しいと思いました。新聞の中の漢字をさがすのが楽しかったです。全ぜんあきませんでした。ぼくは小さい字をさがすのもすきです。家でもたまに漢字さがしをやっています。



テーマ「これからの日本の農業を考えよう」 伊藤雅美教諭(5年4組担任)
  広告使い伝える力養う

企業の新聞広告を教材に行われた5年4組の公開授業
 ユーモアにあふれ、表現がすてきなキャッチコピーや写真、よく考えられたレイアウトなどを観点に”お気に入り広告”を2年前から収集していた。いつかこの新聞広告を教材化できないだろうかと考えるようになった。

 今回、社会科「これからの食料生産」の学習のまとめを意見広告作りとした。自分の考えをインパクトのある短い言葉(コピー)と絵で表現する力を育てたかったからである。

 コピー・写真・レイアウトの三つの観点で、新聞広告の秘密を探らせた。もう少し具体的に調べ方の例を挙げて、全体で共通理解を図ってから個人作業に替えればよかったかという反省点はある。

 しかし、この授業をしてから、子どもたちの新聞広告に対する関心はとても高まった。新聞広告の多様な表現を理解し、意見広告作りでは本物の広告のレイアウトなど、しっかりと参考にしていた。コピーも含め、インパクトがあり、伝える力の強い作品も出来上がった。今回の実践を振り返り、あらためて新聞が持つ可能性の大きさを強く感じた。


学習材活用への示唆
コーディネーター 野津孝明氏
 (NIEアドバイザー、島根県教育センター指導主事)

 伊藤教諭は5年生社会科の「これからの日本の農業を考えよう」の単元まとめ・発表をリポートや新聞作成等ではなく、新聞広告をモデルとしたポスター形式で作成させる取り組みを行った。

 当日の授業はその準備として「新聞広告の秘密を探ろう」と題して実施された。自らの思いを端的に表現しやすいように、まず新聞広告を三つの観点(写真・文章・レイアウト)から見直し、その特徴を理解することから始めた。子どもたちは、その特徴を見つけ出そうと精いっぱい取り組んでいた。

 この授業は今後求められる「新しい社会科授業」を創造するうえで、学習材としての新聞をどのように活用するかについて、経験を積んだ教員にも示唆を与えるものであった。また、他教科で身に着けた能力を同時に活用していくことも可能な学習であろう。

 子どもたちが最終的に自らの思いを新聞広告の形式でどのようにメッセージ化するか、大変楽しみである。


◆児童の感想◆

実践発表する出雲市立平田中の多久和祥司教諭
広告もよく見る
 星長大輝くん 写真が全くない、反対に写真がとても大きい広告がありました。新聞広告の写真には、いろいろな種類があっておもしろいなと思いました。これからは新聞広告もよく見て、気に入った広告があったら集めていきたいです。

デザインに工夫
 青木はるかさん 新聞広告を使った勉強は初めてでした。どの広告も写真やイラストのデザインが工夫され、写真にぴったり合ったコピーが書いてありました。新聞広告は、見る人に何を伝えたいのか、はっきりさせているんだなと思いました。



実践発表
「新聞を使って『学び』を楽しむ」 多久和祥司教諭(出雲市立平田中)
「基礎学力の定着と知的レベルの向上を目指して」 曽田健治教諭(県立出雲商業高校)


 実践発表では、出雲市立平田中の多久和祥司教諭が「新聞を使って『学び』を楽しむ」、県立出雲商業高校の曽田健治教諭が「基礎学力の定着と知的レベルの向上を目指して」のテーマでそれぞれ発表した。

 多久和教諭は、前任地の松江市立島根中では「拉致問題」「イラク戦争」、出雲市立浜山中では「中越地震」「阪神淡路大震災」「いのち」などをテーマに取り上げた。特に「いのち」の取り組みではがん患者サロン、産婦人科医院などに直接出向き「聞く」ことを体験。

 また、修学旅行に合わせ、神戸で阪神淡路大震災の被災者取材にも取り組み、それぞれの取材をもとに新聞を製作した。その結果、被災地の現状を伝えようと、生徒たちの間で自主的に校外に向けた発信活動へと発展した-など、活動の成果を伝えた。

 一方、曽田教諭は、導入年の昨年度から、生徒の基礎学力の定着と知的レベルの向上を目標に、全校生徒、全教科を対象に実践に取り組んできた。曽田教諭は、各教科との横断的連携も円滑にいき、ほぼ全教科が何らかの形で実践に取り組んだ。

 その結果、新聞を利用した授業に積極的にかかわり、知的好奇心を広げる生徒も増えてきているとし、実践に当たっては、各教科、教師の間を取り持つ「コーディネーター」的存在の必要性を強調した。

実践発表する県立出雲商高の曽田健治教諭

2010年7月27日 無断転載禁止

こども新聞