<7>往時の姿醸し出す櫓群

ライトアップされ、夜の闇に浮かび上がる南櫓(左)と中櫓=松江市殿町、松江城
城下町の南東方向の監視を担った南櫓。復元された3棟のうち、唯一の2階建てだ=松江市殿町、松江城
 松江城の二ノ丸にある3棟の櫓(やぐら)は、古写真や遺構を手掛かりに、江戸時代の姿を忠実に再現している。松江市が2001年、櫓をつなぐ塀とともに史跡整備の一環として復元した。後方にそびえる天守を守るように、石垣の上に建つ様は、いかにも城郭らしい雰囲気を醸し出している。

 維新と廃藩置県を経て廃城となった後、1875(明治8)年には櫓が解体撤去されたとの記録があり、およそ125年ぶりによみがえったことになる。

 南側から順に「南櫓」「中櫓」「太鼓櫓」と呼ぶ。南櫓は2階建てで、城下町の南東方向を監視する役目があった。中櫓と太鼓櫓は平屋で、それぞれ武具庫、時刻を告げる太鼓を鳴らす櫓だったという。

 幸運にも史料に恵まれていたことが、復元を助けた。大きな手掛かりの一つは、解体撤去以前の櫓を三ノ丸から写した2枚の写真。建築を指揮した大工で、文化財建造物木工主任技術者の後藤史樹さん(51)=安来市伯太町=は「とにかく写真と同じものを造ろうと取り組んだ。名誉な仕事に携われて、本当にありがたかった」と振り返る。

 復元スタッフは、古写真から建物の寸法を割り出し、遺構の発掘データ、城内建造物の規模や形態を記した古文書、城の縄張(なわばり)図などと照らし合わせて設計図を書いた。工法にもこだわり、後藤さんは天守の梁(はり)などに何度も上がって研究。「現代の技術は頭から消し、江戸時代の大工になったつもり」で建築を進め、天守と同じ松やクリの材を使って完成させた。

 後藤さんが「写真通りの出来栄え」と胸を張る櫓群は、天守の国宝化の動きの高まりとともに輝きを増す。

2010年8月30日 無断転載禁止