(42)宍道湖残照(SHINJIKOZANSYOU)松江市袖師町 心を癒やす湖岸の楽園

市民や観光客らのシルエットの向こうで、宍道湖の空と湖面を彩る夕日。嫁ケ島を包む光と陰が叙情を漂わせる=松江市袖師町
 宍道湖の夕日を撮影するため、松江市袖師町の湖岸にある夕日スポットへ足を運んだ。少し曇っていたが、風がなく波も穏やか。真っ赤な太陽が雲や湖面をあかね色に染め始めると、見物に訪れた市民、観光客らが岸辺に陣取った。

 あちこちに寄り添うシルエットが浮かび上がる。湖岸の楽園に憩う人々の話し声はひそやかで、時がゆったりと流れていく。やがて紅蓮(ぐれん)の球体が西方の日本海へふわりと隠れ、黄金の輝きにも似た光が後を追う。神々しさに言葉を忘れ、しばし見入った。

 宍道湖は周囲約45キロの汽水湖。豊富な魚介類が太古から人々の暮らしをはぐくみ、水が奏でる古代ロマンの一端は「古事記」「日本書紀」や「出雲国風土記」にも記されている。上流の斐伊川河口を中心に多数のコハクチョウ、マガン、キンクロハジロ、スズガモなどが飛来し、同じ水系の中海とともに2005年、ラムサール条約に登録された。

 まさに歴史と文化、自然を一体的に表現している宍道湖は、今なお癒やしの空間を提供してくれる”山陰の遺産”そのものだろう。

 これまで夕日が沈む瞬間を数え切れないほど切り取ってきたが、その表情はいつも違っていて飽きない。人々が残照に向き合う姿は、「落日」と言うより、何かの「再生」の儀式のようでもある。この日もシャッターを押す瞬間、変わらぬ至福を感じた。

 (写真と文・本社報道部、小滝達也)

  =おわり=

 メ モ

 「宍道湖水辺八景」に数えられる嫁ケ島を取り込んだ残照は、水都・松江の象徴であり、「日本の夕陽百選」にも選定されている。宍道湖夕日スポットは、松江市袖師町から嫁島町にかけた国道9号沿い。千変万化する四季折々の情景は素晴らしく、年間を通してアマチュア写真家や家族連れが数多く訪れる。

2010年9月20日 無断転載禁止