(36)大動脈弁狭窄症/人工弁手術技術的に確立

■相 談■

 重症の大動脈弁狭窄(きょうさく)症との診断を受けました。高齢なので、手術すべきかどうか迷っています。(85歳、男性)


■アドバイス■

松江赤十字病院心臓血管外科 添田健部長
 松江赤十字病院心臓血管外科 添田健部長

 大動脈弁狭窄症は、心臓の弁が正しく機能しなくなる弁膜症の一種。大動脈弁は、左心室と大動脈の間にあり、血液が大動脈に送り出されるときに逆流を防ぐ役割がありますが、この弁が狭くなることによって起こります。血液が流れにくくなって心臓に負担がかかり、息切れや胸の痛み、意識が遠くなるといった症状が現れます。症状が出た後は急速に悪化する可能性があります。

 狭くなる原因の一つは動脈硬化。弁にコレステロールがたまって硬くなり、弁の動きが悪くなるからです。高齢化の進展で、動脈硬化による狭窄症がお年寄りに増えています。

 重症の場合、人工弁に取り換える手術を行います。人工心肺装置を使い、心臓を一時的に止めて行う手術で、技術的に確立しています。精密検査をして大動脈弁のほかに異常がない元気なお年寄りなら、80歳代の方でも、それほど難しい手術にはならないでしょう。当院の過去10年間の手術を見ても、うまくいかなかったケースはまれ。90歳以上でも可能なケースはあると思われます。

 人工弁は、機械弁と生体弁の2種類があります。機械弁はカーボン製で耐久性に優れています。ただ、弁の周囲に血栓ができやすいため、術後は抗凝固療法が必要。ワーファリンという薬を飲むのですが、この薬を飲むと消化管出血や脳出血など出血性の合併症が増える可能性があり、お年寄りの場合はコントロールが難しくなります。

 一方、生体弁は、動物の組織を加工して作った弁で、耐久性に限界はありますが、ワーファリンを飲み続ける必要はありません。生体弁は使用者が高齢であるほど長持ちし、70歳以上だと、10年以上の耐久性が期待できます。65歳以上なら、生体弁を使うのが最近では普通になっています。

2010年10月14日 無断転載禁止