<11>現存天守で最大の鯱鉾

松江城天守の最上層に飾られた鯱鉾。全国の現存12天守の鯱鉾の中で最も大きい=松江市殿町
天守地階に展示されている旧鯱鉾。1950年代の解体修理で取り換えられるまで、天守最上層にあった=松江市殿町、松江城
 松江城天守の最上層の屋根には、尾を天に向け、体を反り返らせて向き合う一対の鯱鉾(しゃちほこ)がある。正面に向かって左側が雄で、右側が雌。雌雄は微妙に違っていて、雄のほうがうろこが粗い。高さは2・08メートル。現存する全国12の天守に取り付けられた鯱鉾の中で最も大きい。

 単に鯱(しゃち)とも呼ぶ鯱鉾は、トラに似た頭部、魚のような胴体を持つ想像上の動物。火災よけ、魔よけの霊験が信じられ、14世紀ごろから寺院の装飾に使われ始めたという。城に初めて用いられたのは、織田信長が1579年に築いた安土城(滋賀県近江八幡市)とされ、その後の天守でも大棟(おおむね)の両端に飾られた。

 松江城の鯱鉾は、木製の本体に銅板を張ったもので、1950年代の解体修理時に新調された。修理工事報告書(55年3月)には、厚さ4寸(約12センチ)のアスナロ材を使って、それまで飾られていたものと同じように彫刻し、銅板を張ったとある。松の厚板で造られていた旧鯱鉾は現在、天守地階に下ろされているが、これがいつから天守に飾られていたかは分かっていない。

 現存12天守の鯱鉾は多様で、材質は瓦製が姫路城(兵庫県姫路市)など7城で最も多く、青銅製が2城、木製銅板張りは松江城、丸岡城(福井県坂井市)、弘前城(青森県弘前市)の3城。いずれも過去の修理時などに取り換えられている。復元天守も含めれば、有名な名古屋城(名古屋市)の金の板を張った金の鯱鉾(約2・6メートル)などもあるが、現存天守では姫路城の鯱鉾(1・9メートル)を上回り、松江城の鯱鉾が最大となる。

 その霊験もあってか、火災などに遭うことなく、現代に受け継がれた松江城天守。鯱鉾は愛すべき、城のシンボルである。

2010年11月8日 無断転載禁止