学びのステージ地域に求めて 出雲商業高校

 神門通り活性化へ一役

 昨年度からのNIE実践指定校の県立出雲商業高校(出雲市大津町)は、NIE活動はもとより、市民にも親しまれている「出商デパート」や「出商カフェ」に、ふるさと体感デザイン学習や全校ボランティアなど、さまざまな分野でユニークな教育の実践に取り組んでいることで知られる。これらの事業を中心に、同校の教育実践の取り組みを紹介する。


 一畑電車大社駅構内で「出商カフェ」

 出雲市大社町神門通りにある一畑電車大社駅構内で10月24日(日)、「出商カフェ」を開催した。「高校生のおもてなし」をキーワードに、全国各地から訪れた観光客を高校生らしいおもてなしでお迎えするイベントだ。当日はあいにくの雨に見舞われたが、多くのお客さまに来ていただくことができた。経済調査部を中心とした文化部や、3年の課題研究の一つである「起業家グループ」のメンバーによって活気のあるユニークなイベントとなった。

 ▽甘くないぜんざい?

 経済調査部は”古代ぜんざい”を復刻してふるまった。砂糖がなかった古代では神々が食べたぜんざいは塩で味付けをしたのではないか。そのように想定した同部は、黒米を混ぜたおもちに島根県産の塩と大豆を使った「甘くないぜんざい」を考案。地元産の素材の味が十分に引き出され、味わいのある一品に仕上がった。

 ▽思い出写真

 ワープロコンピュータ部は、今年引退したデハニ50系をバックに写真を撮影。それを生徒が加工し、お客さまに記念写真として贈呈した。大人の方から小さなお子さんまで楽しんでいただくことができたと思う。

 ▽和敬清寂の心

 茶道部は出雲工業高校の生徒さんが設計・製作に協力してくださった「組み立て式のお茶室」でお点前を披露。生徒が提案したデザインの和菓子「神在月」が花を添えた。

 起業家グループの手作りパウンドケーキは大人気で、120個すぐに完売となった。

 ▽活気あふれる歓迎演奏

 吹奏楽部は電車到着にあわせて演奏を開始。美しく迫力のある音色が駅いっぱいに広がり、観光客の方々を魅了した。美術部や写真部の作品や華道部の生け花がカフェの雰囲気をもり立てた。美術部は古代をテーマに絵画や陶芸を展示した。また、オリジナルヒノキ素木(しらき)箸がプレゼントされた。


 市民、観光客からも好感

 イベントに立ち寄ってくださったお客さまは、地域の方々から観光に来ておられる県外の方々などさまざま。「地域の方と共に高校生が生き生きと活動をしていて感心した」「島根のPRを学生が自主的にやっているのは心強い。これからも発展させていってほしい」などのコメントをいただいた。後日、このイベントに心を打たれたという東京の会社員の方からお手紙と記録映像が届けられた。

 また、古代出雲歴史博物館の田中和彦さんは「単に博物館を見学するだけでなく、いろいろな視点から学ぼうとする姿勢に可能性を感じる。今後のさまざまなチャレンジに期待している」と話し、一畑電車の岡和之さんは「出商カフェでは若いエネルギーが大社駅ににぎわいをもたらし、活気に満ちていた。皆が豊かな気持ちになり、思いが一つになって、とても良いイベントだった。これからも、積極的に地域での学びを広げ、さまざまな形で力を発揮してほしい」と話された。(常松)


 出商デパート ご縁に感謝

 地域の皆さまに支えられて今年で5回目を迎えた「出商デパート」。今年のテーマは「あなたとのご縁に感謝 529人の笑顔でおもてなし」。生徒一人一人がおもてなしの心を持ち、お客さまに最高のおもてなしを提供しようと、さまざまなアイデアを出し合っている。渡部お糸さんと吹奏楽部の公演、ダイトレンジャーショー、出雲の神芝居一座、各クラスのタイムサービスなどは盛りだくさん。

 仕入れは一般企業や県内外の高校へ依頼。商品や数量の決定、テナントの配置や、POP広告の製作など、準備は順調に進んでいる。

 出商デパートでは、商品を販売するだけでなくお客さまに笑顔と元気をお届けしようという考えを大切にしている。年々、生徒の意識も向上し、今年も生徒・教員が力を合わせ、各店舗とも工夫を凝らす。

 魅力あるデパート開催のため運営の中心となるのはデパート委員や店長。話し合いを繰り返してきた先生方との連携はもちろんのこと、仕入れ先の地元企業の方々、地域の方々、保護者の間での連携と信頼は欠かすことができない。(常松)

   ◇   ◇

 ”感謝の気持ち”を忘れることなく、全力を尽くしたいと思います。ご来店を心よりお待ちしています。(デパート委員長・錦織加奈、副委員長・中島明日香、大管未希、福間菜名子)


 笑顔、あいさつ、感謝… ”おもてなしの心”大切に

 出商カフェでも今回のデパートでも”おもてなしの心”がキーワード。

 「もてなし」には「モノを持って成し遂げる」という意味がある。商品についての知識を学び理解を深める。お客さまに満足をしていただけるよう準備に全力を尽くす。おもてなしの心を提供するための努力は必須だ。

 目の前のモノにつける付加価値。それは私たち一人一人がお客さまの心を感じ、お客さまへの思いを行動に移すことで生まれる。笑顔、あいさつはもちろん、お客さまに対する感謝の気持ちを忘れずにいたい。学びを提供していただき、自分を高めさせてくれる大切な存在があることに感謝をし、心で接すること。それが出商生の「おもてなしの心」。


 地元産ヒノキで箸作り ふるさと体感デザイン学習

 美術の授業では、出雲古代博物館や大社の神門通りに出かけて、古代や神話などをテーマとした体感学習を続けている。昨年は版画制作、今年は箸作りなどを通してふるさとの良さを再発見しながら美術を学んでいる。

 今年の箸作りは出雲木工さんの協力を得た。木育の講義を受け、出雲神話にも登場する箸の文化史についても学習。素材には地元産のヒノキ材を使用。作り手の個性あふれる箸が出来上がった。

 全員で考えた出商ブランドのMY箸は、亀や勾玉(まがたま)、古代文字の”縁”や”愛”を焼き印したヒノキの素木(しらき)箸に決定。商品開発に向けて研究中で、イベントなどでプレゼントをしている。

 出雲木工の福代智志さんは「箸作りを教えて感じたことは、理解力があって上達も早く、熱心だったこと。完成した作品も高校生らしくて魅力的。出商ブランド、ものづくりをこれからも続けて、地域活性化に貢献してほしい」とコメントされた。

 箸作りを通じていろんな方と出会い、触れ合うことができ、また出雲をより深く知り、出雲の良さを感じる貴重な学びとなった。

 今後は、藍染めや陶芸など地元に伝わる他の美術工芸の分野についても学ぶ予定。(多々納)


 ぜんざいで「出雲」PR 経済調査部の活動定着

 経済調査部ではこれまで出雲地域の活性化を目指し、出雲発祥のぜんざいを題材として出雲をPRしてきた。東京の島根県人会や島根をPRするための遣島使の会などでのオファーもいただき、ぜんざいを通じての島根のPR活動は定着したと言える。

 8月には、毎月第3土曜日に行われる一畑電鉄開催の「楽市楽電」に参加した。車窓からの風景を眺めながら島根県の特産物を販売するものだ。 ぜんざいを電車の中で販売し神話の紹介も含め、観光ガイドも。各種イベントにも引っ張りだこだった。11月17日、18日には横浜市での全国大会に中国地方代表として発表し、優良賞を受賞した。

 現在は地元のお菓子屋さんと連携して、お土産品としての商品開発を進めている。出雲や島根を愛する気持ちを大切に、今後も積極的に取り組んでいきたい。(竹下)


 図書館と連携し学力向上 学校紹介

 出雲商業高校は出雲市大津町、出雲弥生の森博物館に隣接し、出雲市が一望できる丘の上にあり、全校生徒468人が明るく伸び伸びと活気に満ちた学校生活を送っている。ほとんどの生徒が部活動に励み、全国大会に出場する部も少なくない。実学を重んじ、自主的に知識を身につけるためにさまざまな特色ある教育活動を展開している。社会の変化に対応し、主体的に行動できる人間の育成を目指す専門高校だ。

■新聞活用、メディアリテラシー育成を目指す

 昨年度からNIEの実践指定校となり、今年で2年目。本年度は文部科学省の図書館活用教育の研究校でもあり、全校を挙げて新聞や図書、情報メディアの活用に力を入れ、学びに取り入れている。朝読書、講演会などで生徒は本に積極的に関わりを持ち、廊下や図書館にある10紙近い新聞もたくさん利用されている。

■特徴あるキャリア教育

 月1回のビジネスマナー、インターンシップや企業見学、職業人講話など、3年間で多彩なプログラムを用意し、将来の職業を自らの意志と責任で決定できるようになっている。小論文や面接は徹底した個人指導を実施し、就職のみならず進学への進路実現をサポートしている。


 感謝の気持ち地域に 全校でボランティア活動

 11月2日に恒例の「全校ボランティア」が実施された。1、2年生は校外活動として清掃作業、園児へ向けてのおもちゃ・道具作りや、郷土の歴史学習を行った。3年生は点字体験、食育・調理、紙芝居作り、レクリエーション、読み聞かせ指導、日本語指導、リサイクル学習などに参加した。

 今回の全校を挙げてのボランティア活動には二つの目的がある。一つ目は将来において各種ボランティア活動へ自主的に参加をする動機付けの機会とすること。二つ目は地域社会の一員としての自覚を図ること。このボランティア活動で生徒一人一人が今後につながる何かを見いだしたにちがいない。

 出商生は日ごろから奉仕と感謝の精神を大切にしている。夏は地域の祭りや保育園のイベントの手伝い、冬は独居高齢者宅の大掃除やカーブミラー磨き。地域社会の中で自分のできることから始めようと意識を高め合っている。(飯塚)


 編集後記 難しかった情報発信

 今回NIE活動の一つとして新聞づくりを担当し、出雲商業高校がどんな夢を描いてどこに向かおうとしているのか、私たち自身で考えながらまとめてみた。表現すること、情報をまとめて発信することは難しかったが、3年間のさまざまな学びを振り返ることもでき、とても楽しかった。今後も、私たち高校生が地域のため、社会のためにできることは何か、問題意識を持って学びを深めていきたいと思う。最後に、今回の紙面作りをはじめ出雲商業高校を応援してくださっている全ての方々に心から感謝申し上げます。(編集委員・常松)

高校生が心を込めてのおもてなしをする「出商カフェ」
茶道部員がデザインした和菓子「神在月」。大社・縁・愛がモチーフ
出商デパート委員長の錦織加奈さん(前列左)、副委員長の中島明日香さん(同右)、大菅未希さん(後列左)、福間菜名子さん(同右)
出雲工業高校の生徒さんの協力でできた組み立て式の茶室
出商オリジナルヒノキ素木(しらき)箸「古代からの贈り物」
NIEの授業。全教科の教員が新聞を使って1回以上授業をする
全校で多く読まれている「武士道シックスティーンズ」「サッカーボーイズ」を手にする周藤勇作生徒会長(右)と浅津辰吉前会長
ボランティアの清掃活動を行う生徒たち

2010年11月30日 無断転載禁止

こども新聞