<13>天守の井戸は全国唯一

松江城天守にある井戸。自然石積みの井戸の底には現在、水はなく、いつ、誰が始めたのか、投げ入れられた硬貨がたまっている=松江市殿町
天守の井戸は穴蔵の間とも呼ばれる地階中央部にある=松江市殿町、松江城
 松江城の天守の中に井戸が1基ある。戦になって籠城したときに備え、飲料水を確保するために造られた。城郭内に井戸がある城は多いが、天守内部にあるのは、現存する全国12天守で唯一。東西の勢力が対立する時代にできた松江城が、実戦を想定した城であることを物語っている。

 井戸は、天守の地階中央部にある。地階は穴蔵の間とも呼ばれ、籠城用の食糧の倉庫だった。

 自然石積みの円形井戸で、床上の木枠の直径は約2メートル、地下部分の直径は約1・4メートル。深さは約24メートルあったとされるが、現在は埋められて水はなく、約12メートルの深さになっている。

 実は、この井戸は「抜け穴井戸」であるとの伝説があったという。どこか別の場所に脱出できるかどうかは、1950年代の解体修理時に確かめられた。

 修理報告書(55年3月)によると、地階地盤から23尺(約7メートル)の所で真砂で埋まっていた井戸の底を掘り、地盤から77尺(約23メートル)の地点で湧き水を確認。さらにボーリングをして9尺8寸(約3メートル)で地山部に達した。「その結果は、完全に飲料用の掘り井戸で、籠城の場合に備えたものであることが明らかとなった」と記されている。

 松江郷土館の安部登館長の調べでは、松江城には天守の1基をはじめ、二ノ丸上ノ段に1基、二ノ丸下ノ段に6基、外曲輪に11基、後曲輪(椿谷)に2基の計21基の井戸(井戸跡を含む)がある。

 円形を中心に長方形の井戸もあり、小さなものは直径50センチ程度。深さは不明なものが多く、大半はふたで覆われているが、井戸屋形が復元された二ノ丸上ノ段の井戸は、底に水がたまっているのが確認できる。

 安部館長は「松江城山を散策しながら、点在する井戸の意味を考えてみるのも面白いのでは」と話す。

2010年12月20日 無断転載禁止