レッツ連歌スペシャル(村瀬森露)・9月29日付

◎雨やんで行燈ともる帰り道

金木犀の香り立ち込め     (美郷)源  瞳子

塩見縄手に響くカチンコ    (松江)渡部 靖子

やけにすてきに見える恋人   (松江)原  野苺

節電という政府方針      (大田)杉原ノ道真

さっきの強気どこへいったの  (浜田)滝本 洋子

遠く見えたり近く見えたり   (大田)杉原サミヨ

別れたくない影が重なり    (松江)多胡 誠夫

鼻緒が切れて恋が生まれる   (松江)村田 行彦

背なの寝息に心ぬくもる    (松江)森広 典子

闇に消え行く堀川の舟     (益田)石川アキオ

ギュッと握った指きりの指   (松江)高木 酔子

橋を渡れば小豆磨ぐ音     (松江)木村 更生

濡れた舗道に影が寄り添い   (飯南)塩田美代子

鯉口切って闇をうかがう    (益田)石田 三章

昨夜のけんか謝ろうかな    (浜田)勝田  艶

城の天守にかかる夕月     (松江)松田とらを

ゴーストツアー今日もやってる (松江)山崎まるむ

四百年の月日流れて      (松江)持田 高行

思いつかない彼への言い訳   (松江)川津  蛙

草いきれから虫の合唱     (松江)木村 敏子

こいつは一杯やらざあなるめえ (美郷)芦矢 修司

小さな石鹸カタカタと鳴り   (益田)竹内 良子

見上げてみれば満天の星    (大田)掛戸 松美

フッと出す手を握りかえして  (松江)花井 寛子

駕籠の前後は護衛お女中    (松江)余村  正

手ぼたん花火煙目にしむ    (松江)福田 町子

プロポーズするチャンス到来  (松江)岩田 正之

のれんくぐれば傘も置き去り  (江津)岡本美津子

足音だけで姿見えずに     (松江)田中 堂太


           ◇

 私たちの見えの世界は、網膜に映る像をそのまま反映しているわけではありません。大きさの見え方を例に挙げましょう。目の前20センチにペンを持って見てください。どれぐらいの長さに見えますか? 次に、そのペンを目の前40センチに持って見てください。網膜上に結ぶペンの像の長さは、先ほどの半分になります。しかし、ペンは先ほどより少し短くは見えますが、半分の長さにまで短くは見えません。これは大きさの恒常性と呼ばれる現象です。網膜に映る像が変化しても、私たちが知覚する世界はある程度一定に保たれるのです。

(挿絵・FUMI)
 大きさの恒常性は、昼間、いろいろな物が見え、奥行きが知覚できるときには強く働きます。しかし、暗闇の中に行燈(あんどん)だけがぽっと浮かび出るときのように、周りの物からの奥行きの手がかりが得にくいときは働きにくくなります。

 奥行きの見え方も、昼間と暗闇では異なります。対象の大小は奥行きを知覚する手がかりです。昼間は、それ以外にも、重なり(遠くの物は手前の物と重なると隠れる)、運動視差(私たちが移動すると、手前の物は素早く動くが、遠くの物はゆっくりと動く)などさまざまな手がかりをもとに奥行きを知覚しています。

 暗闇でこのような手がかりが得にくい場合はどうでしょう。暗闇でも灯りの大きさは知覚できるとすると、大きく見える灯りは近くに、小さく見える灯りは遠くに感じるという度合いが、昼間よりももっと強くなると思われます。

 長い秋の夜、一杯やるのもよし、想像を膨らませるのもよし、科学をするのもまたよしです。

(島根大法文学部教授)

2011年9月29日 無断転載禁止

こども新聞