レッツ連歌(下房桃菴)・10月13日付

(挿絵・カールおじさん)
◎枕元にも置く二三冊

イケメンに今夜はきっと会えるはず

               (美郷)芦矢 敦子

履歴書に趣味は読書と書きました(雲南)難波紀久子

初めての海外旅行もう間近   (松江)森  笑子

ブランデーグラスに注ぐ芋焼酎 (松江)木村 更生

やめられぬテスト前夜のゲンかつぎ

               (益田)石田 三章

母さんが横目でジロと見て通り (浜田)七転 八起

三年に及ぶ夫の闘病記     (江津)岡本美津子

読みながら歩く二宮金次郎   (益田)黒田ひかり

ニュートリノ宇宙の謎に迫れるか(出雲)矢田カズエ

あらためて寝相の悪さ悟る朝  (松江)渡部 靖子

知ってても読んでもらってねんねする

               (松江)森広 典子

看護師の気を惹くための一工夫 (益田)小倉  豊

押し花の栞の香り漂いて    (美郷)遠藤 耕次

なでしこの戦い終わり秋も更け (松江)持田 高行

サッカーのことも少しは知らないと

               (松江)木村 敏子

自叙伝を配りまくって嫌がられ (大田)杉原サミヨ

名作を読み直してる老夫婦   (松江)野津 重夫

勉強は嫌い大好きサザエさん  (出雲)遠藤  伸

週刊誌足して高さを微調整   (雲南)横山 一稔

一冊でちょうどいいのは広辞苑 (益田)吉川 洋子

一睡もしないで受ける追試験  (益田)竹内 良子

いつか読むつもりで買った哲学書(松江)川津  蛙

入試まであと半年となりました (松江)山崎まるむ

電子辞書老眼鏡とワンセット  (出雲)真幸 信子

見舞客帰ればそっと出すエロ本 (浜田)勝田  艶

孫もまた太宰治かなんだかなぁ(奥出雲)松田多美子

マンガ家の道を教えたやくみつる(大田)杉原ノ道真

図書館の返却期限近づいて   (浜田)松井 鏡子

女房はきょうは雲仙あす別府  (松江)松田とらを

読んでねと母さん待ってた子の寝顔

               (美郷)源  瞳子


           ◇

 「二三冊」といっても、なにも本とは限りませんよね。美津子さんの「闘病記」は、おおかたの意表を突いた出色の出来! 胸を打たれますね。

 といって、これはとても大事なことなのですが、美津子さんのご主人が闘病生活をなさっていた、というわけでは決してありません。この句の作者はたしかに美津子さんですが、夫の闘病記を読んでいるのは「物語」中の人物なのです。レッツ常連のかたがたはとっくにご存じのことですが、初心のかたはこの二つを、つい混同しがちです。

 これがたとえば、歴史に取材した「二宮金次郎」のような句だったら、よく分かりますよね。「物語」の主人公である金次郎と作者のひかりさんとは、何の関係もありません。当たり前のことですが…。

 ところが、今の世を詠んだ句の場合には、えてして混同が起こる。で、くどいようですが、繰り返しておきます。

 靖子さんは寝相が悪いわけではありません。豊さんも看護師に気があるわけではない。伸さんが勉強嫌いであったり、良子さんが追試験を受けられたりするわけでもない。艶さんは本を隠したりなさいませんし、とらをさんの奥さんが遊び回っておられるはずもありません。

 もっとも、たまたま実生活にヒントを得て句を作るということ、それはそれで、あってもいいことで、どなたとどなたが実はそうなさったのか、そこまで私は存じ上げません。

           ◇

 さて、次の前句は、

  秋の夜寒の人の恋しさ

 この句に五七五の句を付けてください。ほんとうのことであってもかまいません。

  (島根大名誉教授)

2011年10月14日 無断転載禁止

こども新聞