レッツ連歌(下房桃菴)・11月10日付

(挿絵・FUMI)
 秋の夜寒の人の恋しさ

セーターを編む手に息を吹きかけて
               (出雲)飯塚猫の子

このごろは演歌もちょっと好きになり
               (益田)黒田ひかり

オイちょっと寄って行くかと肩たたき
               (松江)木村 更生

ミケちゃんや布団に入っていいですよ
               (松江)山崎まるむ

あのときはバカな喧嘩をしちまって
               (益田)吉川 洋子

頑にわれ留守番を引き受けて  (邑南)渡辺 正義

達磨さん壁に向かってまだ八年 (松江)村田 行彦

アテのないメール再々チェックして
               (益田)可部 章二

ケータイの請求額が倍になり  (松江)田中 堂太

しそびれた夫婦喧嘩の仲直り  (出雲)原  陽子

ハーモニカ出して昔を吹いてみる(松江)松田とらを

メールでは本音の分かるはずもない
               (益田)石田 三章

家出した妻に詫びてる頑固者  (松江)渡部 靖子

久々に田舎に帰る気になって  (大田)掛戸 松美

合コンに行ってみようという誘い(松江)川津  蛙

条件はもうつけません四十過ぎ (松江)相見 哲雄

許し合うことのできずに猫と住み(大田)丸山 葛童

鈴虫の声もだんだん弱くなり  (松江)余村  正

だからサァ結婚しろって言っただろ
               (美郷)芦矢 敦子

電柱の陰の猫にも声をかけ   (松江)高木 酔子

隣から兄弟げんか叱る声    (松江)森広 典子

金だけはたんまり貯めているけれど
               (出雲)矢田カズエ

口喧嘩さえもできない赴任先  (松江)多胡 誠夫

被災地をさまよっているポチとタマ
               (松江)村田 欣子

アルバムと古い日記を出してくる(浜田)勝田  艶

取り出して君のマフラー巻いてみる
               (松江)福田 町子


           ◇

 喧嘩(けんか)の話題が、今回は目立ちました。

 つまらぬ喧嘩をしてしまって、仲直りのきっかけがつかめない、という洋子さん、あるいは、陽子さんの句。

 靖子さんの句は、「喧嘩」とはっきりは断定できませんが、家出の原因はいずれ似たようなことでしょう。

 葛童さんも「喧嘩」ということばは伏せておられます。が、感情のもつれが相当あったことは間違いない。そこへもってこの句は、「猫」を配したところがおもしろい。これ、やっぱり「犬」じゃダメでしょうね。

 典子さんの「兄弟げんか」は、うるさいなと思いつつ聞いているのでしょうか。それを叱る声がもっとうるさかったりして…。

 もっとも、こちらが独り身だったりすると、その騒がしい家庭が、かえってうらましく感じられるかもしれませんね。たかが兄弟げんかなのだから、そんなに深刻なわけもなし…。うん、そう読むほうがいい。いや、そう読まなきゃいけない。前句も前句だし…。

 誠夫さんの「赴任先」を読んで、こう思い返しました。

           ◇

 次の前句―。

  二度も三度も同じこと聞く

…なんてことはよくあること。といっても、いろんな状況が考えられますね。だから、この前句はすばらしい前句なのです。すばらしい五七五を付けてください。

(島根大名誉教授)

2011年11月10日 無断転載禁止

こども新聞