横田高校「だんだんカンパニー」 架空会社通し社会への一歩

 島根県立横田高等学校の「だんだんカンパニー」(社長・佐藤勇人校長)は、同校の2年生の1類型クラスの生徒49人が社員となり活動を行う架空の会社である。昨年の結成以来、初年度は「地域貢献」、本年度は「東京でのブルーベリージャム販売」を目標に掲げ、ブルーベリーの収穫、ジャムの製造、販売と2年間にわたり活動を展開。その集大成として、今年10月18、19の両日、東京の「にほんばし島根館」でブルーベリージャム181本を売り上げるなど、大きな成果を残して本年度の事業を終了した。


生徒自ら企画し運営 ジャム製造、東京で販売

 「だんだんカンパニー」は昨年結成された。昨年度は「地域貢献」に的を絞り、地域を活性化するために自分たちは何ができるのかを考える、というテーマで活動してきた。2年目となる本年度はさらに視野を広げ、「東京でのブルーベリージャム販売」という目標を達成するべく活動してきた。

 本年度の「だんだんカンパニー」は、7月2日にブルーベリーを生徒自身で収穫したところから始まり、7月26日には各部の任命式が行われ、本格的に活動を開始した。

 部は大きく分けて経理部・製造部・購買部・マーケティング部・販売部の五つに分けられた。マーケティング部はさらに販売促進課・市場調査課に分かれ、各部とも自分たちの役割を果たし、ブルーベリージャムを販売するために努力を重ねてきた。

 その後も各部のリーダー4人による東京・池袋での事前販売研修などを経て、10月18、19日に東京の日本橋にある「にほんばし島根館」で販売を行った。

 当日は生徒全員が今まで調べてきたことや事前研修での経験を生かし、堂々とした態度でブルーベリージャムを販売した。難しいことや思うようにいかない部分もあったが、当日のその場になって生徒たちは臨機応変に対応し、徐々に販売がうまくなっていくのが目に見えて分かった。

 「だんだんカンパニー」は進路活動の一環として将来の視野を広げるよい経験となった。今年の成果を今後に生かし、後輩たちにも来年、再来年、そして、その先もずっと長く続けていってほしいと期待している。


【基礎研修】専門部にグループ分けアイデア出し合い連携

 本年度の「だんだんカンパニー」の一番の活動は、ブルーベリージャム販売に向けての準備だった。われわれ高校生社員に会社や販売についての知識はなく、あまりにも無知であったため、活動は当初から困難を極めた。

 この状況の克服に向け、まず会社の仕組み、販売の方法や仕組み、どのような商品が売れるかなどについて、専門の講師の方に教えてもらう機会を設定した。延べ12時間近くの講義や演習を通じ、多少なりとも基礎知識を蓄えてから、さまざまな活動に移ることとした。

 活動内容としては、約50人の生徒社員を実際の会社に近い形でグループ分けし、各部を設けて活動を進めた。購買部は地元企業から商品知識のレクチャーを受け、ブルーベリージャム製品化に向けて、リサーチ等を行った。

 また、販売促進部は東京での販売に向けてのラベルのデザインをはじめ、POP(ジャム販売時に使用する広告等)制作などアイデアを出し合い活動を行った。

 各部の部長が集まって開催される経営企画会議では、部・課ごとに情報交換を行い、連携を図った。この会議で最大の決定事項はジャムの販売価格決定だった。さまざまな意見が飛び交う会議となったが、「日本橋三越前」での販売であれば、「低価格であることが逆に商品の魅力を下げる」などの意見も出され、結果720円に決定した。

 このようにして、東京(にほんばし島根館)でジャムを完売したいという最終目標に向けて、皆で協力し、活動を進めた4カ月間だった。


【収穫・加工作業】甘さ控えめヘルシーに

 7月2日、「だんだんカンパニー」の社員になって最初の活動として、ブルーベリーの収穫を行った。当日はあいにくの雨だったが、ずぶぬれになりながらも、農場の方の協力のもと、ブルーベリーを50キログラム収穫することができた。

 収穫作業中に農場の方から「『水分補給しながら=多少はブルーベリーを食べながら』頑張ってね」のひと言があったが、このありがたい言葉がなければ、収穫量は若干増えていたと思われる。

 7月末には地元のジャム作りのベテランの方々(ジャムジャムクラブ)のサポートを受け、ブルーベリージャム加工作業を行った。作業では特に糖度の調節が難しく、甘味の統一に苦しんだ。また、滅菌処理を行った瓶にふたをする際の空気流入を防ぐことに悪戦苦闘した。

 苦労の結果、この日の作業で、後の販売で高い評価をいただいた280グラム入りの「おいしいジャム」250本が完成した。私たちが作ったジャムは、ブルーベリーとサトウキビしか使っていないので、甘さ控えめでヘルシーなものに仕上がった。


【事前研修】悪戦苦闘の連続 接客のこつ体験

 10月に予定された「にほんばし島根館」でのブルーベリージャム販売に先立ち、事前研修が実施された。この研修は東京におけるジャム価格等の事前調査と店頭販売体験が目的だった。

 事前研修は、9月9~11日の3日間、4人の社員が東京に出かけ、池袋の「こだわり市場」で、奥出雲町の地元企業「中村ファーム」の商品販売を手伝う形で行った。初めは道行くお客の多さに戸惑い、なかなかうまく接客できなかった。しかし、時間の経過とともに次第に慣れ、他の店に負けないくらいの「いらっしゃいませ~!」の元気な声が響くようになった。

 時には試食を断られたり、お客さまから売り方のアドバイスをいただいたりするなど、社員にとっては悪戦苦闘の連続であったが、商品を買ってもらった時は大変うれしく、充実感として心に残った。

 また、高校生が販売することで、より商品に興味をもってもらえる結果ともなった。事前研修を通して、人とのコミュニケーションの大切さや接客のこつ、島根と東京の環境や人の嗜好(しこう)の違いなどを学べた。


【経理部門】総売り上げ15万5480円

 10月18、19日、「だんだんカンパニー」の「東京でのジャム販売活動」で販売したブルーベリージャムの売上本数は181本、売上高は13万320円だった。これに委託販売分を加えての総売上本数は219本、一部を割引販売したため、総売り上げは15万5480円となり、総利益は3万2749円だった。この結果に社員たちは確かな手ごたえを感じている。

 目標としていた社員による直接販売での完売には惜しくも至らなかったが、「にほんばし島根館」に販売を委託したジャム20本は後日完売した。

 社員たちは疑似とはいえ、「商品」を提供し「代金」を得る「会社」という、普段の高校生活から離れて社会へと一歩踏み出してみる活動を通じて、職業への興味・関心を高め、これからの進路決定や就職活動に大いに役立つ経験となった。ジャム販売は本年度からの試みだったが、次年度を引き継ぐ後輩には今回の経験を伝え、より活動の幅を広げていってほしい。


編集後記

 このたび新聞を作成するに当たって、初めての作業に戸惑いもありましたが、「だんだんカンパニー」の活動を一人でも多くの方に知っていただけたらと思い、各自張り切って記事を書かせていただきました。

 その際に心に浮かんだことは、購入した方から後日「ジャムがおいしかった」「食べることができてうれしく思う」と多くの手紙をいただいたことです。自分たちの活動がこのような形で皆さんに支えられているということを自覚できました。この場をお借りしてお礼をお伝えいたします。

 「だんだんカンパニー」の活動を通じて、私たちは今後の進路を考える上で大変貴重な経験をさせていただきました。活動を支えてくださった方々への感謝の気持ちを忘れずに、今後引き継いでくれるであろう後輩たちにも、私たちが伝えられることはしっかりと伝えていこうと思います。これからも横田高校、そして「だんだんカンパニー」をよろしくお願いします。(編集担当者=編集長・荒金璃子、糸原育子、佐伯香名子、佐々木篤、真田晶穂)

東京の「にほんばし島根館」を訪れた客にブルーベリージャムの購入を呼び掛ける生徒
東京の「にほんばし島根館」を訪れた客にブルーベリージャムの試食を呼び掛ける生徒
横田高「だんだんカンパニー」が製造、販売を手掛けた「ブルーベリージャム」
専門家を招いて行われた基礎研修
ブルーベリージャムの製造作業に取り組む生徒たち
完成したブルーベリージャムの瓶一つ一つにラベルを張り付ける生徒たち
東京・池袋の「こだわり市場」での事前研修で商品の展示を学ぶ
編集担当者のみなさん

2011年12月19日 無断転載禁止

こども新聞