レッツ連歌(下房桃菴)・1月26日付

(挿絵・小池泉水)
 さりげなく手元に寄せる得意札

大振袖に襷鉢巻き       (松江)森広 典子

白内障も治り健闘       (松江)木村 敏子

そこまでするか子供相手に   (松江)田中 堂太

孫にゃかなわぬ神経衰弱    (松江)余村  正

見て見ぬフリをしてやろうかな  (益田)吉川 洋子

ビデオにちゃんと写っていました  (出雲)矢田カズエ

むすめふさほせむすめふさほせ  (松江)持田 高行

王座を決める今日の一戦   (出雲)行長 好友

ちょっと皆さん詰めてください   (松江)山崎まるむ

ゲームで分かるあなたの性格  (雲南)佐藤 風子

蠅叩き手にばあちゃん参戦   (松江)木村 更生

後片付けは嫁に任せて     (松江)森  笑子

遊んだあとは甘いお汁粉    (松江)岩田 正之

中華料理のテーブルが好き  (大田)掛戸 松美

横目でちらり賞品を見る    (松江)福田 町子

お客の視線そらすマジシャン  (松江)多胡 誠夫

早くすましてトイレに行きたい (安来)佐々木幹法

留学生もかまくらの中      (浜田)勝田  艶

勉強会を開く大御所      (益田)時 任三郎

とんびにあぶらげさっとさらわれ   (出雲)原  陽子

ついつい顔がゆるむB型     (出雲)遠藤  伸

馴れぬ袂が気になっている    (益田)石田 三章

虎視眈々と狙う政権       (大田)清水 すず

密漁船は大儲けする      (松江)須山 綾子

焼けた焼肉またも取られる   (美郷)芦矢 敦子

天満宮は賑やかな春      (雲南)板垣スエ子

           ◇

 「カルタ」は「歌留多」とも書きますが、それは宛て字で、もともとはポルトガル語。英語の「カード」にあたることばです。ドイツ語では「カルテ」。病院のカルテというのも、要するにカードなのですね。…「レッツ連歌」はタメになります。

 「むすめふさほせ」は、百人一首のいわゆる一字札。たとえば、上の句が「む」で始まる歌は「むらさめの…」一首しかありません。ですから、読み手の「む」という声を聞いただけで、「きりたちのぼるあきのゆふくれ」を取らなければならない。「す」と聞けば「ゆめのかよひぢひとめよくらむ」、「め」と聞けば「くもがくれにしよはのつきかげ」…などとクドクド説明していないところが、高行さんの句のいいところなのですね。もっとも、この七枚がこの順序で並んでいたらミエミエですけれど…。

 蠅叩(はえたた)きも最近見なくなりましたが、こんな活用法もあったのですね。なるほど、あの形といい、大きさといい、カルタを取るにはもってこい。おまけに、その分、遠くまで届く。それになにより、相手に恐怖感を与える。昔の「いじわるばあさん」を彷彿(ほうふつ)とさせる作品でした。

 ま、なんにしろ、得意札を手元に寄せるのは、カルタに勝ちたいからだと、ふつうはだれでも思うのですが、実はこんな事情もあったのですね、幹法さん。こういう句をお詠みになるかたには、ぜひ一度お会いしてみたいものだと思います。

 前句を比喩的な意味に取って付けた句も、いくつかありました。

 中でも、任三郎さんの「勉強会」―、うまいですね。「大御所」だけで、だれのことだかズバリと分かる、この快感がたまりません。任三郎さんにもお会いしてみたいものです。

           ◇

 さあ、今年の連句シリーズが始まりました。毎月第四木曜は、入選句のどれかを前句にして、それに付句するという形で、次々、年末まで続けてまいります。

 で、まずは、今日の入選句のうちどれでも、お好きなものを選んで、今度は五七五の句を付けてください。ただし、その内容がまたカルタのことに戻らないよう、ご注意ください。それじゃ、ちっともおもしろくありませんから。

(島根大名誉教授)

2012年1月26日 無断転載禁止

こども新聞