レッツ連歌(下房桃菴)・3月8日付

(挿絵・小池泉水)
 雨のしわざか風のしわざか

いつの間にフキノトウなど顔を出し
               (雲南)佐藤 風子

息をのむ奇岩奇石の造形美   (大田)沢江 洋子

軒下でふっと芽生えた恋ひとつ (飯南)塩田美代子

この間やったばかりのガラス拭き(浜田)藪  柑子

枝見上げ恨みつらみの竹箒   (益田)竹内 良子

セシウムがこんなとこまで検知され
               (松江)村田 行彦

義元が首を取られる桶狭間   (松江)高野 利徳

お見合いの仕立て下ろしの一張羅(出雲)原  幸子

こめかみに梅干貼ったおばあちゃん
               (益田)小倉  豊

舵取りもままにはならぬ野田船長
              (津和野)津野守三生

居心地がだんだん悪くなるドジョウ
               (松江)森広 典子

ザーザーザーヒューヒューヒューと小盗人
               (松江)安東 和実

家政婦はちゃんと見ていた午前二時
               (安来)根来 正幸

玄関に隣のゴミが鎮座して   (江津)江藤  清

満開の牡丹ぐんなり首を垂れ  (大田)大谷  勇

金田一耕助はこう推理する   (美郷)源  瞳子

ゲレンデのブッシュが目立つ春スキー
               (松江)森  笑子

寝つかれぬままに時計は一時二時(松江)木村 更生

見え透いた言い訳ばかり並べたて
           (滋賀・東近江)小島 慶子

先生はやさしい問題ばかり出し (松江)水野貴美子

見積書見て電話する工務店   (松江)山崎まるむ

肝心なとこで映らぬ古テレビ
            (長野・大東)金原 怜子

カラオケの声が伸びない八つ当たり
               (出雲)柳楽 撫子

このキノコ食べてみようかやめようか
               (大田)掛戸 松美

銅葺きの数寄屋の軒が朽ちはじめ(益田)渋谷秋茄子

犯人はノラ猫だった今朝の雪  (雲南)安部 小春

肩は凝る耳鳴りはする歯は疼く (出雲)遠藤  伸

一晩で消えてしまった砂の像  (益田)石川アキオ

雪像の首が転がる大通り    (松江)余村  正

大掃除とつぜん女房やり出して (益田)吉川 洋子

ほんとうは手抜き工事という噂 (大田)清水 すず

竿になり鉤になりして帰る雁  (松江)岩田 正之


           ◇

 和実さんの「小盗人」は、落語の「杭盗人」、あるいは、狂言「柿山伏」―、とだけ申しておきましょう。こういう不親切なヒントも、たまにはよいものです。

 小春さんの「今朝の雪」―。ただ雪が降ったというだけのことなら、前句の「雨」「風」に近すぎて、別におもしろくもありません。が、「ノラ猫」を登場させたところがお手柄! 登場、といっても、ほんとうは足跡だけなのですが…。いや、その足跡も、ことばの上には直接表現されておりませんね。なんとも心憎い句作りです。

 小春さんは初入選。他にも今回は柑子さん、利徳さん、幸子さん、三生さん、撫子さんと、五人もそろって初入選。このところ、新人や、しばらくお休みいただいていた「旧人」の健闘が目立ちます。雨のしわざか風のしわざか、うれしいことではありますが、どうしたわけかと不思議でなりません。常連のみなさんも負けないよう、ひき続きがんばってください。

           ◇

 次の前句です。

  引っ越しの荷物に混じる三輪車

 付句は七七でお願いします。(島根大名誉教授)

2012年3月8日 無断転載禁止

こども新聞